トヨタデザイン10 【1985,1986】

スペシャルティカー群の刷新を図った1980年代中盤

会員登録(無料)でより詳しい情報を
ご覧いただけます →コチラ


スペシャルティカー多角化に動く!

 バブル景気の助走期となる1980年代中盤、日本ではハイテク装備を満載したスポーティで高性能な新しいクルマが脚光を浴びていた。その最中、トヨタ自動車の開発陣は元祖スペシャルティカーのセリカをどのように全面改良するかで議論を重ねる。ユーザーニーズが多様化した状況下では、ひとつのモデルで多くのニーズを満足させるのは困難。同一シャシーを使ってイメージの異なる車両デザインのクルマを開発することが必要不可欠だ−−。こう考えた開発陣は、次期スペシャルティカーを3つのスタイルで販売する方針を打ち出す。さらに上級版のセリカXXは同シリーズから独立させ、次期型ソアラのコンポーネントを多用してより高性能なスペシャルティカーに仕立てる決断をした。

“流面形”スタイルを採用した4代目セリカ

 1985年8月、4代目となるセリカが市場デビューを果たす。同時に兄弟車の「カリーナED」と「コロナ・クーペ」もリリースした。ボディタイプは各車で明確に区分され、セリカは3ドアハッチバック、カリーナEDは4ドアハードトップ、コロナ・クーペは2ドアノッチバックを採用していた。

 4代目セリカで注目されたのは、そのスタイリングとメカニズムだった。スタイリングは「未来へ駆ける、エアロフォルム」と謳った“流面”ボディを採用。3つの面で構成されたスラントノーズとフルリトラクタブルのヘッドライト、滑らかな曲線を描くサイド回り、面一化されたウィンドウラインなどで実現したボディは、空気抵抗係数(Cd値)0.31の優秀な数値を実現した。メカニズム面ではセリカ初のフロントエンジン&フロントドライブ(FF)の採用を始め、レーザーαシリーズと名づけたツインカム16Vユニット、4輪ストラットの“ペガサス”サスペンションといった新機構をセットする。デジタル式インパネや8ウェイスポーツシートといった新デザインの内装も注目を集めた。

 一方、“4ドア新気流”のキャッチコピーを冠したカリーナEDは、4代目セリカと共通のシャシーを採用しながら、ピラーレスの4枚ドア、4ドアモデルとしては異例に低い1310mmのボディ高、端正なフロントマスクとリアビューなど、従来の4ドア車にはないエレガントかつスタイリッシュな車両デザインで仕立てられる。“知的ドライビングゾーン”と称するコクピットのアレンジも個性あふれるもの。3本スポークのステアリングや6連式のメーター、専用表地のバケット形状シート(Gリミテッド)などを装着し、独特なスポーティ感を創出していた。
 ちなみに、カリーナEDの象徴的なアイテムとなるリアガーニッシュ中央の“ED”の文字が光る仕組みは、1987年8月のマイナーチェンジから導入された。

美しさと力強さを進化させた第2世代のソアラ

 1986年1月になると、スペシャルティカーの旗艦であるソアラが2代目に移行する。キャッチフレーズに“最高級プレステージスペシャルティ”と冠した2代目は、従来型と同様のノッチ付き2ドアクーペフォルムをベースとしながら各部を大幅にリファイン。ボディとガラスの面一化を図った球体イメージのフラッシュサーフェスキャビンを筆頭に、透明二重レンズの超ワイド薄型ヘッドランプやクリスタル感のある透明ポリカーボネイト製のラジエターグリル、クリア塗装を施した透明軟質プロテクションモールなどを採用し、輝きのある高級感の表現と空力特性の向上を実現した。

 一方、室内デザインには先進のヒューマンエレクトロニクスを積極的に導入する。計器盤には視線移動の際に焦点が合わせやすい新開発のスペースビジョンメーターをセット。同時に、操作性を追求した電子コンビスイッチ&ステアリングサテライトスイッチや6インチカラーディスプレイを配したトヨタ・エレクトロマルチビジョン、空調とオーディオ機構のモード切替が可能なコントロールパネル、マルチアジャスタブルパワーシート&マイコンプリセットステアリングを装備する。また、インパネからドアトリムまでを質感の高いスウェード調表地材で覆うグランベールインテリアを採用した。

“ドラスティック・パフォーマンス”をデザインしたスープラ

 1986年2月には、セリカXXの後継車で海外向けの車名と同一になった「スープラ」が登場する。“ハイパフォーマンス・スペシャルティカー”と称したスープラは、トヨタ2000GT以来となる4輪ダブルウィッシュボーンサスペンションのシャシーに、レーザーα7Mツインカム24ターボやレーザーα1Gツインカム24ツインターボといった強力エンジンを搭載し、国際水準を超える“走りのGT”に仕立てられていた。

 スタイリングのテーマは“ドラスティック・パフォーマンス・デザイン”。大きな平面絞りのフォルムを基本に、リトラクタブル式のヘッドライトや大きく傾斜したフロントピラー、太いセンターピラー、ラウンドしたリアおよびクォーターウィンドウなどを採用し、力感あふれ、かつ空力特性に優れるエクステリアを実現した。インテリアは“GTとしての充実感”をテーマにデザインする。具体的には、大きなカーブを描く超ラップラウンド・インスツルメントパネルやパノラミックデジタルメーター、調整範囲を広げた新パワースポーツシートなどを導入し、高級感とスポーティ感あふれるキャビン空間を創出した。