シーマ 【2001,2002,2003,2004,2005,2006,2007,2008,2009,2010】

21世紀に向けた日産の最上級サルーン

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新たな価値観を持った高級乗用車の模索

 バブル景気時には“シーマ現象”という流行まで生み出し、日本の高級車市場に確固たる地位を築いていたニッサン・シーマ。同車は1990年代後半になると、レクリエーショーナル・ビークルの隆盛などによって、市場での注目度は低迷していた。

 21世紀に向けたシーマは、グローバルに通用する新しい高級車でなければならない−−。そう決断した日産の開発陣は、高級車の概念を一から構築し直し、最終的に「DYNAMIC&MODERN〜時代を切り拓く新しいカタチ〜」という開発コンセプトを考案する。これには、ルノーとの提携によって新時代に入った日産自動車の意気込みも含まれていた。

すべてに最新テクノロジーを積極採用

 21世紀に向けた高級車に仕立てるために、開発陣は最先端の技術を積極的に導入する。搭載エンジンは、“NEO Di”と呼ぶ直噴システムを組み込んだ新開発のVK45DD型4494cc・V8DOHCと改良版のVQ30DET型2987cc・V6DOHCターボの2機種を設定。VK45DD型は可変吸気システムのNICS(Nissan Induction Control System)や連続可変バルブタイミングコントロールのCVTC(Continuous Valve Timing Control)、電子制御スロットル、電子制御デュアルモードマフラーなどを装備し、クラス最大級の280ps/46.0kg・m(2WD。4WDは280ps/41.0kg・m)のパワー&トルクを発生する。

 また、高い静粛性と耐振性を実現するために、チタン合金の吸排気バルブやアルミニウム材バルブリフター&バルブリテーナー、新開発の軽量ピストン、高剛性のシリンダーブロック、スーパーサイレントチェーンなどを採り入れた。
 開発陣はさらに、排出ガスのクリーン化と燃料消費の低減も重視。排出ガスでは触媒の昇温効果を高める2重管ステンレスタイプエグゾーストマニホールドや改良版の三元触媒などを装着して平成12年排出ガス規制を25%下回る“良-低排出ガス”車とし、一方の燃料消費の面では直噴システムの導入や熱効率のアップ、新開発の5速AT“5M-ATx”の採用などで従来比約20%の向上(10・15モード走行燃費9.2〜10.0km/L)を達成した。

ボディは大幅剛性アップ! 先進ITS技術を積極導入

 ボディおよびシャシーについては、“なめらかでしっかりとした走り”の実現をメインテーマに掲げる。ボディではアンダーフロアやサイドなどを徹底強化して、クラストップレベルの高剛性ボディを構築。また、エンジンコンパートメントねじりモードやリアエンド曲げモードなどにも着目し、従来比で約40%のねじり剛性アップを達成した。
 シャシーに関しては、フロントサスペンションにジオメトリーを一新したマクファーソンストラット式を、リアに新開発のマルチリンク式を採用。しっかりとした乗り味とスムーズで安心感のある操縦安定性を両立し、新世代の高級車らしい卓越した足回りに仕上げる。また、上級仕様にはスカイフック制御に基づいたアクティブダンパーサスペンションも設定した。

 開発陣は安全性や快適性を高める先端のITSテクノロジーもふんだんに盛り込む。室内のセンター部には集中コントロールスイッチおよび8インチワイド液晶モニターを配置。ここにコンパスリンクや自動料金収受システム、バックビューモニターなどの機能を表示する。さらに、レーンキープサポートシステムや車間自動制御システム、ブレーキアシストといった先進機構も装備した。

グローバルに通用する新しい内外装の創出

 スタイリングに関しては“ダイナミックで個性的なエクステリア”の実現をテーマに開発が進められる。フロントビューは世界初のマルチプロジェクターキセノンヘッドランプや張りのある彫刻的なフード、低い位置に配したグリルの組み合わせで独自のマスクを演出。サイドは伸びやかなルーフシルエットに厚みのあるドアウエスト形状、立体的なスポークタイプのアルミホイールなどで艶やかな佇まいを創出した。
 リア回りは、ボリューム感のある後端ラインと専用デザインのリアコンビネーションランプによって高級車らしい存在感を表現する。また、開発陣はボディカラーのアレンジにも凝り、見る角度によって微妙に色味が変わるシャンパンシルバーや光輝度の高いホワイトパール、艶やかで深みのあるローズレッドなど、全6タイプの5コート塗装色を設定した。

 インテリアは、“モダン”や“明るさ”をデザインテーマに据える。インスツルメントパネルはソフトにラウンドさせたうえで、カラーリングに明るい色調を採用。さらに、立体的な造形のセンタークラスターや質感の高いバーズアイメープルの本木目パネル、高輝度のファインビジョンメーターを装備し、独自のラグジュアリー感を創出した。機能面では、助手席のパワーオットマンおよびリラックスシートバイブレーター、後席パワーシート、オゾンセーフフルオートエアコン、自動防眩ルームミラー&ドアミラー、雨滴感知式オートワイパー、DVD対応後席用モニターなどを設定する。

キャッチフレーズは「力(フォース)は、我に」

 新世代の日産製ラグジュアリカーである4代目シーマは、21世紀に突入したばかりの2001年1月に市場デビューを果たす。キャッチフレーズは「力(フォース)は、我に」。先端技術というフォースをふんだんに盛り込んだ高級車であることを、目いっぱいに主張していた。
 市場に放たれた4代目シーマは、全長5mに達しようとする立派な体躯や独特の7つ目プロジェクターキセノンヘッドランプ、V8レイアウトの直噴エンジン、レーンキープサポートおよび車間自動制御といった先進システムの採用などで注目を集める。また、新しいシーマは当初の目的通りにワールドワイドでも活躍。とくに進境著しい中国市場では、日産のフラッグシップサルーンに据えられた。

 21世紀に向けた高級車のシーマは、デビュー後も着実に車種ラインアップの強化と中身の進化を図っていく。
 まず2001年12月には、電子キーや本木目パネルといった豪華装備を全グレードに標準化。同時に助手席パワーオットマン機構なども拡大採用される。翌2002年1月には、シーマのデビュー15周年を記念した特別仕様車の「15th Anniversary」を期間限定(同年3月まで)で発売した。2002年9月になると、V8モデルの専用アイテムだったマルチプロジェクターキセノンヘッドランプやヘッドランプレベライザーなどがV6モデルの300Gにも装着される。さらに、専用チューニングの足回りを組み込んだスポーティ仕様の300Gグランドツーリングも追加設定された。
 初の大がかりなマイナーチェンジが敢行されたのは2003年8月。V8エンジンはVK45DD型からVK45DE型4494cc・V8DOHCに切り替わり、同時に2WDモデルの内外装の一部デザインも変更される。さらに、インテリジェントブレーキアシストや前席緊急ブレーキ感応型プリクラッシュシートベルト、アクティブAFSなどの安全アイテムを新たに装備した。3カ月ほどが経過した2003年11月には、4WDモデルにも同様のマイナーチェンジが施される。

 4代目シーマの進化は、さらに続く。2007年2月には20周年記念限定車の「20th Anniversary」を発売。同年7月には、平成17年排出ガス規制に適合できないVQ30DET型エンジンがカタログから外れる。そして2008年2月になると内外装の変更をメインとした再度の大がかりなリファインが実施され、ボディ長はついに5m超の5120mmに達した。