コンパーノ・ベルリーナ1000 【1965,1966,1967,1968,1969】

4ドアボディで仕立てたイタリアンスタイルのセダン

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人気コンパーノ・シリーズの車種拡大

 ダイハツ工業は、1964年2月に2ドアセダンの「コンパーノ・ベルリーナ」を発売し、小型乗用車市場への本格参入を果たす。軽自動車と1.2リッタークラス車のあいだに位置する新しい大衆車は、上品でスポーティなイタリアンスタイルと経済性に優れるFC型797cc直4OHVエンジンなどが好評を博し、販売台数を順調に伸ばしていった。

 高い人気を受け開発現場ではさらなるシェア拡大を目指して、コンパーノ・シリーズの車種ラインアップ増強を計画する。バンとワゴン、2ドアセダンに続くモデルとして企画されたのは、オープンボディのスパイダーと商用車のトラック、そして5名乗りの “4ドアセダン”の3仕様だった。開発陣は、高速道路網の伸長や主要道の整備という、いわゆる“高速時代”に即した走行性能の引き上げも検討。エンジンに関しては、排気量の拡大による出力アップを実施する。

ホイールベースを延長して4ドア化

 4ドアセダンに関しては、既存の2ドアセダンのホイールベースを60mm延長し(2280mm)、そのうえで新設計の4ドアボディを架装する。スタイリングは均整のとれたイタリアンスタイルを踏襲。緩やかな弧を描くボディラインや広いグラスエリア、精悍なフロントマスク、機能美を追求したリアビューなどで構成した。

 インテリアについては、クラス最大級のレッグスペースとヘッドルームを確保すると同時に、厳選した材質を用い、ゆとりある5名乗りのキャビンルームを創出する。装備面も充実しており、運転席スライディングシート(前後120mm/7段)や木目模様ダッシュパネル、ヒーター、キー付きグローブボックス、ドアポケット、オートラジオ、チャイルドセーフティ装置(リアドア)などのアイテムを装備した。

 エンジンはアルミ合金ヘッドやウエッジ型燃焼室を採用したオーバースクエアタイプ(ボア68.0×ストローク66.0mm)のFE型958cc直4OHVで、燃料供給装置にはツーバレル式のシングルキャブレターを組み込む。圧縮比を9.0に設定し、最高出力は55ps/5500rpm、最大トルクは7.8kg・m/4000rpmを発生した。組み合わせるミッションはフルシンクロの4速MTで、クラッチには踏力を軽くした油圧乾燥単版式を装備する。

 下回りの骨格は箱型断面の鋼管サイドフレームと4本のクロスメンバーを組み合わせた梯子型を導入。懸架機構にはフロントにウイッシュボーン/トーションバー、リアに半楕円リーフスプリングを採用し、それぞれに専用セッティングを施した。ブレーキは高速走行に対応したデュオサーボブレーキを装着する。性能は、最高速度が130km/h、0→400m加速が21.4秒とワンクラス上のクルマに匹敵。また、走行テストでは10万kmを超す高速連続運転にもビクともしない耐久性を実証した。

4ドアは“新しいハイウェイセダン”を標榜

 ダイハツ初の本格4ドアセダンは、「ベルリーナ1000」の車名を冠して1965年4月に発表、翌5月に発売される。グレード展開は上級仕様のデラックスとベーシックなスタンダートを用意。キャッチフレーズには“新しいハイウェイセダン誕生!!”を謳い、ハイウェイ時代の高速性能を徹底追求して生まれた5名乗りサルーンである事実を主張した。

 ベルリーナ1000はデビュー後も着実にハイウェイセダンとしての実力を高めていく。1967年4月にはATモデルを追加。同年6月にはマイナーチェンジを実施し、内外装の刷新やエンジンの出力アップ(58ps/5500rpm、最大トルクは8.0kg・m/4000rpm)、最上級仕様のスーパーデラックスの追加などを行う。1968年4月には再びマイナーチェンジを敢行。グリルデザイン等を一新するとともに、スーパーデラックスには専用のリアガーニッシュを設定した。

 地道な改良を続けたベルリーナ1000だったが、販売台数はデビュー当初を除いてそれほど伸びなかった。そして1969年4月になると、提携を結ぶトヨタ自工と共同開発した実質的な後継車の「コンソルテ・ベルリーナ」がデビュー。当初のコンソルテは2ドアセダンのみの設定だったため、ベルリーナ1000は4ドア・スーパーデラックスだけが継続販売され、そのスーパーデラックスも間もなくカタログから外されることとなったのである。

コンパーノがRAA2000kmラリーに参戦

 コンパーノ・ベルリーナ1000が発売された1965年5月、ダイハツは自車の高性能ぶりを市場に示す目的でJAF公認イベントの第1回RAAコンジャンクションラリーに参戦する。2カ所のスペシャルステージと鈴鹿〜磐梯山〜東京を結ぶ約2000kmの行程を、休憩以外では夜間もノンストップで走破するという過酷なラリーに、ダイハツはコンパーノ・スパイダーとコンパーノ・ベルリーナでエントリー。結果は見事にワンツーフィニッシュを成し遂げた。

 コンパーノ・ベルリーナは同年秋に開催された全日本社会人エコノミランにも参加する。東京や大阪など約2300kmを走破する同イベントで、同志社大学OBチームが駆るコンパーノ・ベルリーナは40.58km/Kの好燃費を記録し、見事に優勝を飾った。速くて、燃費がよくて、しかも丈夫−−コンパーノ・シリーズの評判は、各種イベントを通じて着実に高まっていったのである。