ランサー 【1995,1996,1997,1998,1999,2000】

“Total Evolution”をテーマに全面進化を果たした5代目

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1990年代後半に向けたコンパクトセダンの開発

 1990年代前半の日本の自動車マーケットは、ステーションワゴンやSUVといった、いわゆるレクリエーショナル・ビークル(RV)が高い人気を博していた。一方で、従来は若者やファミリー層のエントリーモデルとして支持を集めていたコンパクトセダンの存在感は、相対的に希薄なものとなりつつあった。

 トータルパフォーマンスに優れるコンパクトセダンの実質的な価値を、新たにユーザーに提示しなければならない--。次期型のランサーを企画していた三菱自工の開発部隊は、新コンパクトセダンの設計に勤しむ。掲げた開発コンセプトは、“Total Evolution”。同時に、コスト削減を意図してミラージュ4ドアとの主要コンポーネントの共用化する戦略を打ち出した。

機能を全面的に進化・改良

 外装については、高密度エクステリアデザインをテーマに力強く硬質な面構成や精悍なフロントエンド、シャープなラインを描くサイドビュー、安定感のあるリアセクションなどで骨格のしっかりしたスタイリングを構築する。同時に、Cd値(空気抵抗係数)0.30という空力フォルムと剛性を高めたボディ構造(従来比で曲げ剛性30%、ねじり剛性45%アップ)を採用した。

 キャビン空間は、ヘッドルームの拡大やガラス面積のアップ、シックなカラーリングによって数値以上にくつろぎを感じるインテリアに仕立てる。また、インパネ中央部をドライバー側にわずかに傾けてスイッチ類の操作性を向上させ、さらに腰椎部から骨盤部まで連続して支持するヒップサポートシートを前席に装着した。

 搭載エンジンは幅広いユーザー層に対応できるよう豊富にそろえる。新開発ユニットは4G15型1468cc直4DOHC16Vで、110ps/14.0kg・mのパワー&トルクを発生。同時に、10・15モード走行で19.0(AT16.0)km/Lという低燃費も実現する。ほかにも、リーンバーン方式の4G15型1468cc直4OHC12V(94ps)、4G93型1834cc直4DOHC16Vターボ(205ps)、6A11型1829cc・V6OHC24V(135ps)、4G92型1597cc直4DOHC16V・MIVEC(175ps)、4G92型1597cc直4DOHC16V・MIVEC-MD(175ps)、4G13型1298cc直4OHC12V(88ps)、4D68型1998cc直4OHC8Vディーゼルターボ(88ps)という計8機種をラインアップした。ミッションはガソリンエンジン全車のATに最適制御と学習制御をプラスしたINVECS-Ⅱ4速ATを採用し、一部上級グレードにはスポーツモードも組み込む。駆動機構にはFFとフルタイム4WDを設定。懸架機構には操縦安定性と直進性を高めた前マクファーソンストラット/後マルチリンクをセットした。

 単独ネームとしては5代目(フィオーレを含めると6代目)となる新型ランサーは、1995年10月に市場デビューを果たす。キャッチフレーズは“グッドラン ランサー”。胸のすく走りと高いクオリティを実現した新世代の小型セダンであることを、この言葉に込めていた。

純スポーツ仕様、エボⅣの設定と内外装のリフレッシュ

 1996年8月には、5代目ランサーをベースにした第4世代の“ランエボ”となる「ランサー・エボリューションⅣ」が登場する。搭載エンジンには“ツインスクロール”と呼ぶデュアル構造のターボチャージャーを組み込んだ改良版のターボ付き4G63型ユニットを採用。伝達機構には独創の新技術である「AYC(アクティブ・ヨー・コントロールシステム)」を導入する。ブレーキ冷却口を持ったエアダムやフォグランプ内蔵のグリル一体型バンパーをセットしたフロント部、アルミ製の大型エアアウトレットを設置したボンネット、デルタ型ウィッカー&大型リアスポイラーやアンダースポイラーを装備したリア部などによる迫力満点のルックスも特長だった。ちなみに5代目ランサー・ベースの“ランエボ”は、1998年1月にⅤ、1999年1月にⅥへと進化。1999年12月にはⅥをベースとした特別仕様車の「トミー・マキネン・エディション」をリリースした。

 5代目ランサー自体は1996年10月になると、全車に運転席SRSエアバッグとABSを標準装備化する。さらに1997年8月にはマイナーチェンジを敢行。外装では新デザインのマルチパラボラ式ヘッドランプ&リアランプ/フロントグリル/フロントフード/フロントバンパー等の採用を、内装ではシート表地の変更や抗菌処理ステアリング/シフトノブ/ドアハンドルの装備、助手席SRSエアバッグ装着車の拡大展開などを行った。そして2000年5月、ミラージュ4ドアを統合する形での全面改良が実施され、6代目となる「ランサーセディア」に切り替わったのである。