マーチ 【2002,2003,2004,2005,2006,2007,2008,2009,2010】

“優しい姿勢”を徹底した傑作コンパクト

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3代目は“ユーザーフレンドリー”をキーワードに開発

 コンパクトカーには、年齢や性別を問わず様々なユーザーに愛されることが求められる。2002年2月に登場した3代目マーチは、まさにコンパクトカーの鑑のような傑作モデルだった。

 3代目の開発コンセプトは「ユーザーフレンドリーを追求した、おしゃれな新世代コンパクト」。ボディタイプは従来モデルと同様に5ドアと3ドアが選べ、パワーユニットは3種。新開発の1386cc直4DOHC16V(98ps)を筆頭に、1240ccの直4DOHC16V(90ps)、997ccの直4DOHC16V(68ps)を設定した。燃料供給装置はすべて電子制御インジェクション(ECCS)となり、トランスミッションは4速ATを主体に、一部モデルで5速MTを用意していた。駆動方式はデビュー当初はFFのみ。その後、後輪を専用小型モーターで駆動する4WD仕様が追加される。

誰もが笑顔になるキュートで愛らしいデザイン

 新型のユーザーフレンドリーな姿勢は、そのキュートなボディに表現されていた。全長3695mm、全幅1660mm、全高1525mmの使い勝手に優れたボディサイズとともに開発者がこだわったのは視界のよさ。運転席に座るとボディの全周360度がほぼ見渡せるように工夫されていた。ヘッドランプの上方にはマーカーが設けられ車幅の把握は容易。最小回転半径は4.4mと小回りが効き、狭い道でもスイスイと自信を持って走り回れた。毎日の日常生活の道具であるコンパクトカーにとって、新型の視界のよさは大きな武器だった。しかも40mmと広範囲で調節できる運転席ハイト調節や、ステアリング角度が変えられるチルト機構、低速では軽くスピードを増すと適度な手応えに変わる車速感応型電動パワーステアリングにより、どんなドライバーにも扱いやすいように配慮していた点も特徴だった。

 カラフルな12色ものボディカラーを設定した3代目マーチは室内も凝っていた。絶対的なスペースを追求するだけでなく各部の造形やカラーを吟味することで、ユーザーの気持ちがリラックスできるマイルーム感覚を重視したのだ。インパネを低く配置し広々感を強調したのをはじめ、後席では前席下に足先を伸ばせるようにすることで足元空間のゆとりを実現する。さらに運転中でも操作位置がひと目で分かるようにひんぱんに使うオーディオと空調コントロール、ATの操作ボタンをアイボリーカラーで統一。周囲の明るさに合わせてヘッドランプを自動的に点消灯するオートライトを設定するなど、気軽にドライブが楽しめるよう操作をシンプル化していた。

一歩先を見据えた安全設計と地球環境に対する配慮

 安全性の高さもユーザーフレンドリーな設計の賜物。基本ボディは万が一のクラッシュ時に衝突時のエネルギーを床上メンバー、フロントピラー、ドアウエスト、サイドシルの4方向に分散させてキャビンの変形を抑える進化した先進設計。さらに前面衝突の際に乗員への衝撃を効果的に緩和するSRSエアバッグを全車に、側面衝突に対応したSRSサイド&カーテンエアバッグを一部グレードに設定した。コンパクトカーは、アクシデント時に心配という一般常識を3代目マーチは優れた安全性で見事に覆していた。33

 地球環境への配慮もフレンドリーなキャラクターを証明する。全車が平成12年排出ガス規制に対してNOx(窒素酸化物)、HC(炭化水素)の排出量を75%低減した「超-低排出ガス車」に認定され、さらにエンジンの可変バルブタイミング機構や、ロックアップ付きトルクコンバーターなどにより2010年燃費基準をクリアー。10・15モードで18.4km/L(14e)の経済的な燃費をマークした。もちろん環境性能に優れているだけでなく、低・中回転域でのトルクとパワーを重視したエンジンチューンにより軽快な走りを実現。車線変更や高速道路への合流もスムーズにストレスなくこなすパフォーマンスを披露した。カタログでは「大きな交差点での右折時や、ストップ&ゴーの多い市街地でもシャープなレスポンスで心地いい加速が味わえる」とアピールする。3代目マーチはドライバーのイメージどおりに走る気持ちのいい性能の持ち主だった。しかも燃費がいいためお財布に優しいクルマでもあった。

先進テレマティクス情報サービスにも対応

 便利さも際立っていた。身につけているだけでドアのロック・アンロックや、エンジンのオン・オフがインテリジェントキーを上級グレードに採用。携帯電話との連携で交通情報やニュース、天気予報などをリアルタイムで入手でき、ハンズフリー電話が利用できるカーウイングス端末も用意した。カーウイングスは日産のテレマティクス情報提供サービスで、1DINサイズの4.2in液晶ディスプレーを持つ端末ユニットを装着するとサービスが受けられる仕組みだった。

 3代目マーチは、豊富な小物収納スペースを用意した室内や、ソフトな座り心地のシートなどでも好評を得る。クラスレスなイメージを感じさせたモダンなスタイリングと、デザインを吟味したインテリアは魅力的だった。歴代マーチは経済性と使い勝手で世界的に高評価を得ていたが、3代目はそれに優しさ、気配りという新価値を加えていた。3代目は上級車からの乗り換えるユーザーも目立ったコンパクトカーだった。ユーザーフレンドリーという普遍的な価値の追求が、マーチを骨太で魅力的な存在にしていた。