ヴィッツ 【2005,2006,2007,2008,2009,2010】
基本性能を一段と高めた充実の2代目コンパクト
スターレットの後継モデルとして1999年に登場した初代ヴィッツは、優れた経済性と、卓越のパッケージング、そしてなによりクラスレスの魅力で、日本だけでなく欧州でも高い人気を博し、世界のコンパクトカーを革新する存在となった。
2005年2月に登場した2代目は、初代の高い基本性能を一段と磨き上げ、魅力を鮮明にした実力派だった。2代目のキャッチコピーは“水と、空気と、ヴィッツ”。「日々のひとつひとつに、しっかりとこだわることで、私たちの時間は、心地よく満たされていく。ヴィッツが大切にしたのは、基本になるもののクオリティ。ルックスもパフォーマンスも。これからのスタンダードに相応しい仕上がりです。いいと思えるものに囲まれたくらしは、すべての物事に、さりげない潤いが感じられる。」というカタログのメッセージからも理解できるように、注力したのは基本性能のレベルアップだった。
スタイリングは、初代のコンセプトを継承しながら、豊かな印象を与える造形へと進化した。特徴的な縦長形状の大型ヘッドランプや、センターグリル形状、塊感の強いフォルムがヴィッツらしい先進イメージを強調。同時に各ラインを丁寧に成形しボディサイズを旧型よりひと回り拡大することで、伸びやかさとプレーンな印象を獲得する。日本仕様のボディタイプは実用性の高い5ドアハッチバック。欧州市場などではパーソナルな色彩の強い3ドアハッチバックも設定された。
ボディサイズは全長×全幅×全高3750×1695×1520mm。全長はエアロ形状のバンパーを持つスポーティ仕様のRSでは3800mm、4WD車の全高は1540mmとなっていた。ホイールベースは2460mmである。
室内はセンターメーター仕様のモダンな仕上がり。インパネ中央部にはオーディオ&ナビモニター、コンソール部に空調コントロールを配置していた。各部に小物入れを配置していたのは旧型と同様だが、デザイン&仕上げともに洗練され上質な雰囲気を与えた。室内長はクラストップレベルの1865mm。クッション性に優れた大型サイズのシートと相まって、2代目ヴィッツの居住性にはコンパクトカーとは思えない広さと快適さがあった。
新型の特徴は一段と向上した安全性能にあった。衝突安全設計ボディは、車重の異なるクルマ同士の衝突時の共存を追求したコンパチビリティの概念を導入。ヴィッツより数段ヘビー級のセルシオを用いた、前面・側面・後面からの衝突実験を実施し、世界トップレベルの安全性を実現していた。さらに万一の低速衝突時に備えてフロントモジュール、ヘッドランプ、ラジエターサポートなどにボルト締結構造を採用。車両へのダメージを軽減するとともに修理時間・費用の低減も図ったのもポイントだった。
ボディ構造だけでなくSRSサイド&カーテンエアバッグや、頸部への衝撃を緩和するWILコンセプトシート、頭部衝撃緩和構造インテリアなど事故から乗員を守る工夫も入念だった。事故は誰にとっても不幸nあもの。2代目ヴィッツは、この基本に立ち返り、万が一のときの備えを万全にしたコンパクトカーの代表だった。
パワーユニットはFF車用が996ccの直3DOHC(71ps)を基本に、1296ccの直4DOHC(87ps)、1496ccの直4DOHC(110ps)の3種、4WD車には1298ccの直4DOHC(87ps)が組み合わされた。トランスミッションはFF車はCVTを主体に、一部グレードに5速マニュアルを設定。4WD車は全車が4速ATである。気になる燃費は量販グレードの1.3FのFF仕様で21.5km/L(10・15モード)。スムーズでパワフルな走りと、優れた燃費の両立がセールスポイントだった。
2代目のデビューから2ヶ月後、ヴィッツには“インテリジェントパッケージ仕様”が設定された。当時はまだ珍しかったアイドリングストップ機構を導入したモデルだ。Dレンジの状態でブレーキを踏み、車両が停止するとエンジンが自動的にストップ。ブレーキを話すとエンジンが再始動した。これにより燃費は24.5km/L(10・15モード)の優れたデータをマークする。インテリジェントパッケージ仕様は、通常の鉛電池と先進のリチウムイオン電池を使い分ける構造により、アイドリングストップ中もエアコンやオーディオがそのまま使えたのが特徴。さらに坂道からの発進をサポートする車両後退抑制機能や、エアスパッツを装備。Cd値は約3%リファインしていた。
クルマは生活に密着した存在になるほど、各部への気配りが求められる。2代目ヴィッツは、その事実を再認識させる名車だった。トヨタの高い技術力と良心を結実させたクルマの代表。上級車からの乗り換えるユーザーも珍しくなかったが、それもうなずける高い商品性の持ち主だった。