マツダECO3 【2010,2011,2012】

環境性能に加えて走る歓びを創出した「SKYACTIV」技術

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ベース技術の改善策として「SKYACTIV」を創出

 地球温暖化におけるCO2の削減が緊急課題となっている自動車業界。この状況に対してマツダは、2010年10月に次世代技術群の「SKYACTIV」(スカイアクティブ)を発表した。

 “優れた環境・安全性能”と“走る歓び”を高次元で両立したというSKYACTIV技術は、クルマのベース技術の全般に及ぶ。具体的には、次世代高効率直噴ガソリンエンジンの「SKYACTIV-G」と次世代ディーゼルエンジンの「SKYACTIV-D」、次世代高効率オートマチックトランスミッションの「SKYACTIV-DRIVE」、次世代マニュアルトランスミッションの「SKYACTIV-MT」、次世代軽量高剛性ボディの「SKYACTIV-BODY」、次世代高性能軽量シャシーの「SKYACTIV-CHASSIS」という内容で構成。また、マツダの首脳陣は「パワートレインやプラットフォームを一新するだけでなく、研究開発から生産工程にいたるクルマ造りのすべてのプロセスを刷新する」と表明した。

高効率を成し遂げた次世代エンジン「SKYACTIV-G&D」

 各技術の特長を見ていこう。次世代高効率直噴ガソリンエンジンの「SKYACTIV-G」は、高圧縮比の実現とノッキング対策、そして低中速トルクおよび燃費の向上が訴求点だ。
 圧縮比は量産ガソリンエンジンとしては高めの13.0〜14.0にセット。そのうえで高圧縮比エンジンの課題であるノッキングを、4-2-1排気システムやキャビティー付きピストン、マルチホールインジェクター、緻密な燃焼制御などでクリアした。結果として高圧縮による燃焼効率の大幅な引き上げを実現し、燃費とトルクともに従来エンジン比で約15%も向上する。また、開発陣はエンジン本体の軽量化と機械抵抗の低減も徹底追求。ピストン&ピストンピンの軽量化やコンロッドの軽量化、ピストンリングの張力低減、クランクシャフトメインジャーナルの小型化、ローラーフィンガーフォロアおよび電子制御式可変油圧小型オイルポンプの採用などを実施した。

 次世代ディーゼルの「SKYACTIV-D」は、世界最高の低圧縮比14.0による燃費改善や2ステージターボチャージャーの設定によるスムーズでリニアなレスポンスと大幅なトルク向上、高価なNOx後処理装置なしでグローバルの規制をクリアする高い排出ガス性能を特長とする。
 主な採用技術としては、優れた可燃混合気を生成するマルチホールピエゾインジェクターや暖機中の空気温度上昇に貢献する排気VVL(可変バルブリフト機構)、大小2個のターボチャージャーを運転領域によって使い分ける2ステージターボチャージャーなどで構成。また、シリンダーブロックのアルミ化やシリンダーヘッドの肉厚低減、エグゾーストマニホールドの一体構造化、ピストン重量の低減、クランクシャフトのメインジャーナル径のダウンサイズといった改良を行い、エンジンの軽量化と機械抵抗の低減を図った。

トランスミッションやシャシーもSKYACTIV化

 次世代エンジンと組み合わせるトランスミッションには、ともに新開発となるATの「SKYACTIV-DRIVE」とMTの「SKYACTIV-MT」を設定する。SKYACTIV-DRIVEはステップATをベースに、全域ロックアップ機構やフルレンジロックアップクラッチ、機電一体制御モジュール、ダイレクトリニアソレノイドなどを採用し、伝達効率の向上や燃費の引き上げを達成。一方のSKYACTIV-MTは、ショートストローク化およびダウンタイプシステム、ロックボールタイプシンクロ装置、シフトロードキャンセラー、スライドボールベアリング、2/3速ギア共用ギアトレインなどを組み込み、本体の軽量・コンパクト化と同時に節度感のあるシフトフィールを実現した。

 開発陣はパワートレイン系を支えるボディやシャシーの進化にも注力する。ボディでは基本骨格のストレート化および連続化やマルチロードパス構造などを採用して高剛性と軽量化を両立した「SKYACTIV-BODY」を開発。シャシーでは新設計の前ストラット/後マルチリンクのサスペンションに電動パワーステアリングなどを組み込んで操縦性と乗り心地を引き上げた「SKYACTIV-CHASSIS」を創出した。

 マツダは2011年6月になると、次世代高効率直噴ガソリンエンジンの「SKYACTIV-G 1.3」を採用するマイナーチェンジ版の3代目デミオを市場に送り出し、2011年9月にはマイナーチェンジ版の2代目アクセラに「SKYACTIV-G 2.0」を設定する。さらに2012年2月には、新型SUVのCX-5に次世代ディーゼルの「SKYACTIV-D 2.2」を搭載。2012年11月になると、全面改良した新型アテンザに次世代ディーゼルの「SKYACTIV-D 2.2」、高効率直噴ガソリンの「SKYACTIV-G 2.0」、そして新開発の直噴ガソリンとなる「SKYACTIV-G 2.5」という3機種のSKYACTIVエンジンを設定した。
 着々とSKYACTIV技術を拡大展開していったマツダ。一方で開発現場では、「SKYACTIV-HYBRID」や「SKYACTIV-CNG」など、さらなるブレイクスルーを画策していったのである。