シルビア・ヴァリエッタ 【2000,2001】

電動メタルオープンルーフを採用した特別な7代目

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スペシャルティカーの新たな魅力を追求

 「軽快コンパクトなスポーティクーペ」を開発テーマに据え、1999年に市場デビューを果たしたS15型系の7代目シルビア。RV(レクリエーショナル・ビークル)が隆盛を極めるなか、それでもS15型系の走りの良さと精悍なスタイリングは走り好きのユーザー層から熱い支持を集めた。

 S15型系シルビアの魅力は、走りだけにとどまらない。ファッション性をもっと強調するための車種展開も必要だ。そう考えた日産のスタッフは、5代目のS13型系でラインアップしていた「コンバーチブル」を、7代目のS15型系でも採用する決定を下す。開発コンセプトは「遊び心あふれるオープンカーに快適さを備えた、自在に変化を楽しめる“スポーツクーペ”」。従来のようなソフトトップではなく、電動メタルルーフを持つクーペ・コンバーチブルを造ろうとしたのである。

オープンボディの製作はオーテックジャパンと高田工業が協力

 新しいスペシャルティオープンカーの企画は、日産自動車本体のほかに関連会社のオーテックジャパンと高田工業がプロジェクトに加わる。つまり、厚木(日産テクニカルセンター)/茅ヶ崎(オーテックジャパン)/横浜(高田工業)の神奈川トリオが結成されたわけだ。実際の工程では、オープンボディの設計および試作をオーテックジャパン、生産を高田工業が担当。もちろん、開発の要所要所は3社共同で行った。

 ベースモデルとして選ばれたのは自然なドライビングフィールで好評を博すSR20DE型エンジン搭載車で、肝心のオープントップにはメルセデスのSLKに採用されて流行の兆しを見せつつあった電動開閉式のメタルルーフを採り入れる。開発陣は操作方法のシンプルさにもこだわり、室内のルーフ前部のロックを手動で解除→インパネに配したルーフ開閉スイッチを押し続ける→フロントドアガラスおよびリアサイドガラスが下降→トランクリッドが全開→ルーフが自動的に2つに折りたたまれ、後方に移動→ルーフがトランク内に格納され、トランクリッドが全閉、というオープンシステムを生み出した。オープン→クローズ(クーペ)の所要時間は約20秒でこなす。また、安全対策としてトランク内にトランクスクリーンを設置。ルーフ格納時にトランク内で干渉物がある際は、ルーフが作動しないようにアレンジした。
 オープンボディの設計に当たり、開発陣は各部の補強も入念に実施する。さらに、車重増加(ベース車比+約130kg)に合わせて足回りも専用セッティング。ブレーキも強化しブースターに関しては、7+9インチを採用した。

 インテリアについては、新開発のモルフォトーンクロス地シートや専用リアシート&サイドトリム(スピーカー付き)といったオリジナルアイテムを装備する。居住空間自体は2+2のレイアウトに設定。また、メーカーオプションとしてヒーター付きフロント本革シートとキセノンヘッドランプ、寒冷地仕様、リアビスカスLSDなどを用意した。

キャッチフレーズは「Open Your World」

 国産車初のフルオープンタイプ電動メタルルーフを備えたS15型系シルビアは、まず1999年開催の第33回東京モーターショーに参考出品され、翌2000年5月になって「シルビア・コンバーチブル・ヴァリエッタ」の名で市場デビューを果たす。キャッチフレーズは「Open Your World」で、車両価格は5MT279万8000円/4AT289万5000円に設定。販売は同年7月から日産レッドステージの販売網で実施された。

 実際にヴァリエッタに乗ると、車重が増えた影響からか、足回りのゆったりとした収まり感が印象深かった。格納されたルーフ周辺のゴトゴトした音は若干耳に入るものの、オープン走行時のAピラーやコクピット回りの剛性は十分に高く、旋回性もスムーズ。そして何より、道行く人の注目度が高かったことが思い出として残っている。また、試乗会場にいた開発スタッフは、「当初は月産70台の予定だったが、受注が予想以上に多く、高田工業の製造ラインはもう大変(笑)。でも、最終的には月産100台以上にまでもっていくつもりです」と語っていた。

 その予定通り、ヴァリエッタは一時月産150台ほどの増産体制を構築し、ユーザーへの納車時期を短縮させる。そして、2001年12月まで計1120台あまりの電動メタルルーフ版シルビアを市場に送り出したのである。