カペラ5ドアハッチバック 【1985,1986,1987】

欧州車テーストを導入したマルチユースモデル

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4代目カペラのリファイン計画

 GCの型式名を付けて1982年9月に市場デビューを果たした4代目カペラ。車両レイアウトをパッケージ効率に優れるFF(フロントエンジン・フロントドライブ)に一新した新型は、日本で「1982-83カー・オブ・ザ・イヤー」を、アメリカでは「1983インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞したほか、内外の自動車専門誌でも各賞に輝くなど、非常に高い評価を獲得する。また、市場では俳優のアラン・ドロンをイメージキャラクターに据えた広告効果もあり、好調な販売成績を記録。スポーツ性を前面に押し出したパフォーマンスも注目を集めた。とくにFE型1998cc直列4気筒OHCエンジンを満載するGT-Xグレードは「欧州車の走りが楽しめるスポーティセダン&クーペ」として好評だった。

 この勢いに乗るように、東洋工業(現マツダ)の開発陣はGC型系カペラの改良を精力的に実施していく。まず1983年9月に、“マグナム・ディーゼル”と称するRF型1998cc直4OHCディーゼルエンジンを搭載した仕様を設定。1カ月後の10月には、FE型ユニットにターボチャージャーを組み込んだ新エンジンを採用するスポーツグレードを追加した。次は1980年代中盤に向けた大がかりなマイナーチェンジを企画しよう--。ここでマーケティング部門などからひとつの提案がなされる。一大ブームを巻き起こした5代目ファミリア(BD型系。1980年6月デビュー)のユーザーが、スムーズに上級移行できるモデルをラインアップしてほしいという要望が出されたのだ。

 当時のファミリアはカジュアルかつスポーティなルックスに加え、FFハッチバックならではの機能性の高さが好評を博していた。ボディタイプに4ドアセダンと2ドアクーペの2タイプしかない現状のカペラでは、FFハッチバックの利便性を享受したファミリア・ユーザーの上級移行に対処しきれない可能性がある--。最終的に開発陣は、マイナーチェンジの際に5ドアハッチバック車を追加することを決断。基本コンポーネントはカペラの兄弟車で、フォード・ブランドで販売する既存のテルスターの5ドアハッチバック車「TX5」を流用することとした。

ハッチバック車のキャッチは「鍛えて、5ドア」

 1985年5月、「鍛えて、ニューテイスト」のキャッチコピーを掲げたマイナーチェンジ版の4代目カペラが市場に放たれる。主な特長は4つ。「鍛えて、インタークーラー」と冠したターボ付きFE型エンジンへのインタークーラーの追加、「鍛えて、EC-AT」を名乗った電子制御式AT(3モード・OD付4速+ロックアップ機構)の採用、「鍛えて、A.A.S.」と称した電子制御サスペンションの導入、そして「鍛えて、5ドア」と謳った5ドアハッチバック車の新設定だった。

 期待を込めてリリースした5ドアハッチバック車だけに、グレード展開は非常に豊富だった。イメージリーダーは2.0iターボLimited。搭載エンジンはFE型1998cc直4OHCインタークーラーターボで、電子制御サスペンションのA.A.S.や185/70HR14スチールラジアルタイヤ+ターボ専用フルホイールキャップ、4輪ディスクブレーキ、9ウェイ調整スポーツシートなどのスペシャルアイテムを標準装備する。さらに、F8型1789cc直4OHCエンジンにEGI(電子制御燃料噴射装置)を装着した1.8iのSG-R/Limited、同エンジンにキャブレターを組み合わせた1.8のSG-U/SG-X/SG-R、F6型1587cc直4OHCエンジンを積む1.6SG-U、RF型1998cc直4OHCディーゼルエンジンを採用する2.0ディーゼルのSG-U/SG-Xをラインアップした。

5ドアハッチバック車は隠れた“実力車”に成長

 6ライトウィンドウを配した欧州調のエレガントなスタイリングに、分割可倒式のリアシートと広いゲート開口部を有した5ドアハッチバックのカペラは、ミディアムクラス車に機能性と合理性を求める顧客層から熱い視線を集める。とくに、大容量の荷物の積載やその積み下ろし性を重視するアウトドアレジャー志向のユーザー層が高く評価した。

 カペラならではの走りの良さが損なわれていなかった点も特長で、とりわけ操縦安定性と乗り心地の高バランスがマニアから好評を博す。もう1点、オプション装備のエアロパーツ(フロントスポイラー/リアスポイラー/サイドシルプロテクター)や専用デザインのアルミホイール、60偏平のラジアルタイヤを装着したドレスアップ仕様の外観が欧州、とくにドイツのチューニングカーを彷彿させたことも、スポーツモデル好きの興味をそそった。

 ワゴン的な使い方ができ、しかも走りそのものも楽しめる5ドアハッチバック車は、やがて4代目カペラの大きな魅力ポイントとして市場から認知されるようになる。その傾向を重視した東洋工業の開発陣は、次世代のカペラ(GD型系。1987年5月デビュー)で5ドアハッチバック車をメインモデルに据えることを決定。シリーズ名も専用ネーミングの「CG(City Gear)」と冠したのである。