インスパイア 【1995,1996,1997,1998】

上質さを増したパーソナル4ドアハードトップ

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すべてが熟成された2代目の登場

 1989年にアコードの上級車種として誕生したインスパイアは、1995年に第2世代に進化した。本物を求める時代のニーズを巧みに具現化した初代モデルは、ホンダの新しい個性として多くの共感を得た。2代目はすべてが熟成されていた。

 2代目の特徴は伸びやかなボディサイズである。スリーサイズは全長4840mm×全幅1810mm×全高1405mmの3ナンバーサイズ。レジェンド(4940×1810×1405mm)とアコード(4675×1760×1410mm)のちょうど中間に位置する堂々とした体躯だった。アコードより上級で、レジェンドより下というセグメントを明確にしたわけである。正式名称も2代目はアコードが取れインスパイアのみになった(初代の正式名称はアコード・インスパイア)。ちなみにボディサイズはトヨタのマークIIやウィンダムを凌いでいた。大柄なサイズはライバルを意識したものでもあった。

最高水準の安全性と静粛性を追求

 スタイリングのテーストは初代と基本的に替わっていない。サイズの拡大に伴って豊かな印象を増してはいるものの、ロングノーズのピラードハードトップ形状を継承しており、パーソナルな印象を醸し出す。ホンダ車としては多めのメッキパーツにより押し出し感が強いのも同様だった。

 見た目の印象以上に変化していたのは基本骨格だった。2代目は前後だけでなく側面衝突時の安全性も徹底的に高めた全方位衝突安全ボディを採用。各ドアには強靱なビームを配置するなど入念な安全対策を施していた。安全性を日本の基準だけでなく一段と厳しいアメリカ連邦基準にも適合するほどのレベルに高めたのだ。さらに全車に運転席&助手席エアバッグを標準装備し、ABSやトラクションコントロールをオプションで設定する。2代目は従来まであった華奢なホンダ車のイメージを払拭した安全車だった。

 静粛性&快適性のリファインも2代目の重点課題だった。航空機と同様のハニカム構造のフロア、床パネルに貼り付けたメルシート、入念なインシュレーター処理など、様々な制振・遮音処置を施したのだ。5点支持のエンジンマウントも、そのうち2点を電子制御液封タイプとすることでエンジン振動を車体に伝えない工夫を盛り込んでいた。リアサスペンションのトレーリングブッシュは不快なノイズを車体に伝えない液封タイプである。2代目の高い静粛性は、開発陣の真摯な取り組みによって得られたものだった。

主力の2.5リッターには2種のチューンを設定

 直列5気筒ユニットをフロントミッドに配置し前輪を駆動するメカニズムは初代を踏襲する。エンジンは主力が排気量2451ccのG25A型。OHCながら1気筒当たり4バルブの贅沢な設計で、レギュラーガソリン仕様で180ps/23.0kg・m、スポーティ指向のプレミアムガソリン仕様で190ps/24.2kg・mのハイパワーをマークした。経済性を重視するユーザー向けには排気量1996ccのG20A型も選べた。G20A型も160ps/19.0kg・mとパワーは充分なレベルに達していた。トランスミッションは全車が電子制御の4速オートマチック。操作性に優れたジグザグシフトゲートを持ち、走行状況をセンサーが自動判断し変速パターンを自動調節するプロスマテック制御を組み込んでいた。

 サスペンションは前後ともダブルウィッシュボーン式の4輪独立。形式そのものは初代と共通だが、アーム類の取り付け角度などをゼロから見直した専用タイプである。前輪にはネガティブオフセット・ジオメトリーが導入され、不整路面での急ブレーキ時のスタビリティを高めていた。

装備充実。オーディオは先進のDSP機構付き

 2代目インスパイアの装備は、上級パーソナルサルーンらしく細部まで磨き込まれていた。高熱線吸収グリーンガラスの採用もそのひとつである。従来までのブロンズガラスに較べて太陽エネルギー透過率を35%、紫外線透過率を45%も低減するグリーンガラスにより、エアコンの冷房効率を飛躍的に高めたのだ。冷房時のクールダウン効率は約40%も向上し、室内の快適性は大きくアップした。オーディオにもこだわっていた。上級モデルに音楽ソースに合わせて最適な音場が選べるCD一体の8スピーカーDSPサウンドシステムを標準装備。徹底した静粛設計を生かしたグッドサウンド・オーディオは2代目の大きな魅力と言えた。心躍るクルージングのために傾注した開発陣のこだわりは見事なものだった。

 2代目の完成度は非常に高いレベルに到達していた。しかし、残念なことに思ったほどの販売成績は挙げられなかった。クルマに問題があったわけではない。ユーザーニーズが変化していたのだ。ユーザーは伸びやかな3ナンバーサイズなら、上質なサルーンではなく、マルチユースフルなミニバン、すなわちオデッセイを選んだ。生活に彩りを添えるインスパイアではなく、生活の幅を広げ変革するオデッセイがホンダの上級車として相応しいと判断したのである。