パッソ 【2004.2005,2006,2007,2008,2009,2010】

ダイハツと共同開発した元気な “プチトヨタ”

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トヨタとダイハツによる共同開発車の企画

 グローバル規模での自動車業界の合従連衡が進むなか、トヨタ自動車は1998年9月にダイハツ工業株の公開買付を行い、最終的にダイハツに対する出資比率を従来の34.5%から51.2%にまで引き上げて子会社化を果たす。同時に、両社のディーラー網で販売するバッジエンジニアリング車、具体的にはコンパクトカーの開発体制を大幅に見直した。

 トヨタにおける最小コンパクトカー、軽自動車が主体のダイハツにとっては上級コンパクトカーに位置づけられた新型車の開発は、両社の強みを存分に活かした体制が整えられた。市場分析と販売戦略に長けたトヨタ側は、車両企画およびマーケティング活動をメインに担当。一方でコンパクトカー造りのノウハウが豊富なダイハツ側は、基本コンポーネントの開発と製造を担った。また、開発のキーポイントとなる段階では両社のエンジニアが集まり、意見を交わすなどして車両コンセプトの統一化を図る。量産に関しては、トヨタがダイハツに新型コンパクトカーの生産を委託するという形を導入。そのため、一般的なOEM(Original Equipment Manufacturer=相手先ブランド製造)とは異なり製造事業者および車両型式は両車それぞれのものが付与された。

“プチトヨタ”を謳って市場デビュー

 国内市場では初となるトヨタとダイハツの共同開発車は、トヨタ版が「パッソ」、ダイハツ版が「ブーン」という車名を冠して2004年6月に市場デビューを果たす。パッソはイタリア語で「ステップ、足音」を意味し、気軽に乗れる軽やかなクルマのイメージで命名。また、キャッチフレーズはトヨタの最小モデルであることを表す目的で“プチトヨタ”と謳っていた。

 パッソの基本骨格は、衝突安全ボディのGOAの評価基準を満たした新設計の2BOXボディで構成する。スタイリングは“イカツかわいい”をキーワードにデザイン。丸みのある面構成にエッジの利いたキャラクターライン、踏ん張り感のあるフォルム、ホイールアーチと一体化した円筒形状のバンパーなどによって力強さと可愛らしさを融合したエクステリアを創出した。インテリアは、“シンプル&クリーン”をテーマにまとめる。インパネはシンプルかつ洗練された造形とし、同時にユニバーサルデザインの視点からスイッチ類やメーター類をアレンジして機能性に富むコクピット空間を演出した。パッケーシングは優秀。全長3595×全幅1665×全高1535mmとコンパクトなスリーサイズとしながら、ロングホイールベース(2440mm)やワイドトレッド化などによってクラス最大級の室内空間を確保した。また、最小回転半径は軽自動車と同レベルの4.3mを実現する。

エンジンは高効率設計。駆動方式はFFと4WD

 搭載エンジンは新開発の1KR-FE型996cc直3DOHC12Vと改良版のK3-VE型1297cc直4DOHC16Vという2機種のユニットを設定する。連続可変バルブタイミング機構の採用やヘッド内インテークポートの最適化などを施した1KR-FE型は、低中速域でのパワーの充実と優れた瞬発力、そしてクラストップレベルの環境性能を実現。パワー&トルクは、71ps/9.6kg・mを絞り出した。一方のK3-VE型は、連続可変バルブタイミング機構の採用に加えて点火系および燃料制御系の最新化を実施。パワー&トルクは、90ps/12.6kg・mを発揮する。また、2機種ともに国土交通省の低排出ガス車認定制度における「平成17年排出ガス基準75%低減レベル」を達成した。

 トランスミッションは専用セッティングを施したSuper ECT(電子制御4速AT)で、駆動機構には2WD(FF)と4WD(Vフレックスフルタイム4WD)をラインアップする。
 懸架機構にはフロントサスペンションにマクファーソンストラット式を、リアサスペンションにはトーションビーム式(2WD)/3リンク式(4WD)をセット。安全装備としてEBD付ABSやブレーキアシスト、SRSサイドエアバッグ&カーテンシールドエアバッグなどを設定していた。

発売から1カ月で月販目標の3.5倍超を受注

 ベーシックグレードのX、上級グレードのGというシンプルな構成で市場に放たれたパッソは、発売から1カ月で月販目標7000台の3.5倍超となる約2万5000台を受注、好調な立ち上がりを見せる。当初は女性ユーザーがメインだったが、2004年12月に専用デザインのエアロパーツやタコメーター&スピードメーター、14インチタイヤ&アルミホイール、強化サスペンションなどを装備したスポーティ仕様のRacyグレードが追加され、さらにRacyグレードをベースにトヨタモデリスタがチューンアップパーツを組み込んでコンプリートカーに仕立てたTRDスポーツM(シリーズで唯一5速MTを設定)がリリースされると、若い男性ユーザーも増加した。

 デビュー後もパッソは進化を続ける。2005年12月に装備類の変更をはじめとする一部改良を実施。2006年12月にも内外装のリファインやRacyグレードの拡大展開(K3-VE搭載車に加えて1KR-FE搭載車を新設定)などを内容とするマイナーチェンジを実施した。さらに毎年のように特別仕様車を発売して、プチトヨタの存在感を維持していく。2010年2月に全面改良して2代目に移行するまで、トヨタのエントリーモデルとしての役割を果たし続けたのである。