ボンゴ 【1983〜1999】

RVワンボックスとしての性能をいっそう高めた第3世代

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キャブオーバー型ワゴンの機種充実を計画

 アウトドアレジャーが盛んになり始めた1970年代の日本では、遊びに出掛けるための足、すなわちクルマに対するユーザーの要求性能にも変化があらわれた。家族や友人など多人数が乗車できて、しかも大量の荷物が積めてその積み下ろしも楽−−。こうした条件を満たすモデルとして脚光を浴びたのが、キャブオーバー車だった。

 従来はビジネスユースが主流だったキャブオーバー車は、時代の流れに則して乗用車としての特性も求められるようになる。市場の要請に対応して自動車メーカーは、蓄積してきたバン造りの技術に乗用車のノウハウを加えながら、新しいキャブオーバー型のワゴンを企画していく。なかでも積極策を打ち出したのが、ボンゴという人気の小型キャブオーバー車を販売して市場を牽引していた東洋工業(現マツダ)だった。同社の開発陣は鋭意、レクリエーショナルビークル(RV)としての理想的なキャブオーバー車=次期型ボンゴ・シリーズの姿を検討。同時に、多様なユーザーに対応する目的で車種ラインアップの拡充も模索した。

“機能したたか、楽しさフルハウス”を謳った3代目

 1983年6月に、従来のボンゴのロングボディを引き継ぎ、トヨタ・ハイエースや日産キャラバンなどをライバルに据えた「ボンゴ・ブローニイ」を発売する。そして同年9月になって、トヨタ・タウンエースや日産バネットなどと競合する第3世代の新型ボンゴを発表した。
 RV性能の進化を強調する意味で、キャッチフレーズに“機能したたか、楽しさフルハウス”と謳った3代目ボンゴのワゴンモデルは、ボディタイプに標準ルーフとハイルーフを採用、ハイルーフには従来モデルで好評だったフラット低床を可能とするダブルタイヤ仕様を設定する。グレード構成は標準ルーフのGSX/GLスーパー/DX、ハイルーフ・シングルタイヤ仕様のLIMITED/GSX/GLスーパー、ハイルーフ・ダブルタイヤ仕様のGSX/GLスーパーを用意した。

 搭載エンジンはF8型1789cc直列4気筒OHC(97ps)とRF型1998cc直列4気筒OHCディーゼル(69ps)の2機種を採用する。トランスミッションはF8型に5速MTと4速ATを、RF型に5速MTを組み合わせた。駆動機構はデビュー当初がRWDのみの設定で、1984年11月にはサイレントチェーン駆動のトランスファーを採用したパートタイム4WD(車高アップに合わせてミドルルーフ化)を追加する。シャシーに関しては、フロントサスにダブルウィッシュボーン/トーションバーを、リアサスに縦置半楕円リーフを採用。操舵機構はラック&ピニオン式で、上級グレードにはパワーアシスト機構を組み込んだ。

 モノコック構造のボディに関しては新意匠のキュービック(立法の)スタイルで構成し、そのうえで端正なデザインのフロントセクションや広いグラスエリア、幅広のサイドモールなどで個性を主張する。ボディサイズは全長3995〜4100×全幅1630〜1640×全高1835〜1990mmで、ホイールベースが2220mm。カタログなどではロングホイールベース、ワイドトレッドによる走行安定性の高さを謳っていた。インテリアについては、3/3/3名乗車(後に2/3/3名乗車も設定)の3列式シートがすべてフルフラットになる点が特徴。また、2列目には回転対座シートも設定する。ほかにもパワーウィンドウやサイドマルチボード、デザインカーテンレール、リアヒーター、フルコンポーネントオーディオといった上級装備を豊富に盛り込んでいた。

16年あまりにも渡る長寿モデルに発展

 RV志向をより強めた3代目ボンゴのワゴンモデルは、デビュー後も着実な進化と車種ラインアップの増強を図っていく。1984年11月には前述のパートタイム4WDモデルを追加。同時に、2列シート6名乗りのBWをラインアップする。1986年11月なるとマイナーチェンジを実施し、フロントノーズを突き出したフェイスリフト(全長は230mm延長)やスタイリッシュルーフの採用(ハイルーフは廃止)、ガソリンエンジンの2ℓ化(FE型1998cc直列4気筒OHC/82ps)、4WD車の2.2ℓディーゼルエンジン(R2型2184cc直列4気筒ディーゼル/61ps)への換装とLSDの追加、装備の刷新などを行った。1989年1月にはターボ付きのRF型ディーゼルエンジン(76ps)を設定する。

 3代目ボンゴの改良は、1990年代に入ってからも精力的に続けられる。1990年2月には内外装の意匠変更のほか、リアアンダーミラーやルーフスポイラーの装着などを実施。さらに、新設のユーノス店に向けた兄弟車の「ユーノス・カーゴワゴン」を設定する。同年9月にはディーゼルターボ車に4速ATを追加。また、1993年8月にはディーゼルターボの排出ガス浄化性能を高めるなどの改良を行い、翌1994年9月にはディーゼルターボにインタークーラーを組み込むなどの変更を実施した。

 1995年6月にはボンゴ・ワゴンの実質的な後継車となるセミボンネット型ワゴンのボンゴ・フレンディが市場デビューを果たす。この時点で従来のボンゴはお役御免になると思われたが、市場でのワンボックスワゴンの根強い支持を重視したセールス部門は同車の併売を決断する。結果的に3代目ボンゴは、1999年まで継続販売されるロングセラーモデルに成長したのである。

ボンゴ・バンをベースとするEVを開発

 3代目ボンゴのモデル末期となる1998年5月、マツダはボンゴ・バンのGLスーパーをベースとする電気自動車の「ボンゴEV」を発表し、近畿以西の西日本を中心に発売するとアナウンスした。電動機には交流同期モーター(47kW/22.0kg・m)を、駆動用バッテリーにはシール形鉛電池(積載個数26個、総電圧312V)を組み込み、制御装置にインバーター制御を採用したボンゴEVは、5名乗車のほかに2名乗車(最大積載量400kg)も可能として小口配達などに対応。また、減速機型ミッションの搭載により、AT感覚での運転を実現する。

 専用装備品としては、電動油圧パワーステアリングや回生ブレーキ、インバーター制御式ヒートポンプエアコン、EV専用タイヤ、残存容量計付きEV専用メーター、タイマー付き充電器、駆動用電池残存容量警告灯などを用意した。一充電走行距離は10・15モード走行で100km、標準充電時間は8時間、最高速度は100km/hと公表される。車両価格は1040万円に設定していた。