AL-X(コンセプトカー) 【1997】

アルミスペースフレームを採用したハイブリッド車

会員登録(無料)でより詳しい情報を
ご覧いただけます →コチラ


地球に優しいハイブリッドを採用

 1997年の東京モーターショーに出品されたAL-Xは、日産自動車が考えるコンパクトカーの理想形だった。クルマによる地球環境への負荷を可能なかぎり小さくすることを開発目標に定め、メカニズムからボディ構造まで、すべてをゼロから作り上げた意欲作である。

 メカニズム面では、CO2の排出を抑えるためにハイブリッド機構を組み込んだことが話題だった。1997年といえばトヨタから世界初の量産ハイブリッドカーである初代プリウスがデビューしたタイミングである。クルマの基本性能を測る尺度が“速さ”から“環境性能”へと劇的に変化し、プリウスの28km/L(10・15モード)という燃費がひとつの基準となった。AL-Xは直列4気筒直噴ガソリンエンジンと電気モーターと組み合わせたパラレル方式のハイブリッド機構によりプリウスを上回る環境性能と優れた走りを目指していた。残念ながら詳しい性能数値は発表されなかったが、従来エンジン車と比較して2倍の燃費性能と、一段とクリーンな排気を実現したとアナウンスされた。ちなみに組み合わされるトランスミッションはCVTである。

 日産は2000年4月に限定100台でティーノ・ハイブリッド(10・15モード燃費:23.0km/L)をリリースする。AL-Xのハイブリッド機構はその先行開発という役目を担っていたようだ。ティーノ・ハイブリッドはエンジンこそ直噴ではなくコンベンショナルな1.8Lのガソリンだったが、パラレル方式のハイブリッド機構や、CVTミッションなどAL-Xとオーバーラップする部分が多い。

アルミスペースフレームが実現した軽量&強靱ボディ

 AL-Xの先進性を示すもうひとつの要素がボディ骨格だった。軽量でしかも堅牢なアルミスペースフレームを採用していたのだ。アルミ押し出し材を、プレス形成した板材ではさみ込んで結合する新開発プレスジョイント工法の導入で軽さだけでなくしっかりとした剛性も実現したのが特徴で、万が一のアクシデント時にも十分な衝撃吸収能力を備えていた。その衝撃吸収能力は同重量の鋼板と比較して約4倍に達したという。

 オールアルミ製ボディというと日本では1990年に登場したホンダNSXが有名だが、AL-Xはスペースフレーム方式を採用した点で、アウディA8やA2などに近かった。残念ながらボディ重量についても具体的な数値は発表されなかったが、アウディA8やA2は、アルミボディの採用により同クラス車より200kgほど軽い車重を実現していた。AL-Xも同様の大幅な軽量化を実現していたことは間違いない。

控えめだった従来比2倍の燃費性能

 AL-Xの軽量ぶりを考えるとハイブリッド機構も採用したAL-Xの燃費性能が従来エンジン車の2倍の燃費性能というのはやや控えめな表現だった可能性が高い。というのもアウディA2の1.2Lディーゼルターボ車(1999年型市販車)はハイブリッドではないのに33.0km/Lの実用燃費をマークしていたからだ。空力性能を磨いたエアロフォルムを持つアウディA2に対し、AL-Xのボクシーなデザインが高速燃費の点で不利なことを考慮しても同等以上の燃費をマークしたのは間違いない。そうするとAL-Xの燃費は従来エンジン車の約2.5〜3倍の燃費性能ということになる。

 ハイブリッド機構と、アルミスペースフレーム、そしてアップライトな合理的なパッケージングを持った先進的なAL-Xは、残念ながら市販されることはなかった。しかしAL-Xで培った数々の技術は後の市販車に投入されたことは間違いない。コンセプトカーを作る意義は、将来を見据えてコストの制約なしに理想のメカニズムを追求できることにある。その理想を現実に翻訳したのが市販車なのだから。