ランサーEVO IX 【2005,2006,2007】

MIVECとマグネシウムコンプレッサーを新採用した第9世代

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車種設定を充実させた第9世代の“ランエボ”

 三菱自動車工業は2005年3月に第9世代の「ランサーエボリューションⅨ」を発売する。キャッチコピーは「エボリューションⅨ、それはドライバーのための進化」。車種展開はロードバージョンのGSRとモータースポーツ競技ベース車両のRSに加え、GSRと同様の快適なボディ仕様にRSと同機構のターボチャージャーおよび駆動システムを採用した新グレードのGTを設定した。

 エクステリアについては、よりコンペティティブに仕立てことが訴求点となる。フロントグリル一体型バンパーはスリーダイヤの台座を廃したシンプルな造形に刷新し、開口部を大きく設けて十分な冷却性能を確保。同時に、不要な箇所を塞ぐことで空力特性に配慮する。リアセクションには下部をディフューザー形状とした新バンパーを装着。また、リアスポイラーは垂直翼をボディ同色の樹脂製で、水平翼を中空化したカーボン製で仕立てた。

インテリアは、ブラックモノトーンのカラーリングにカーボン調インパネオーナメントパネル、アルミ製ペダル、MOMO製本革巻き3本スポークステアリング、270km/hフルスケールスピードメーターなどを組み込んでレーシーな雰囲気を演出する。また、上級グレードの前席には前面サイド表地に本革、メイン表地にアルカンタラを張って高い機能性と上質感を両立させたレカロ製フルバケットシートをセット。車内の騒音レベルの低減を狙って、高密度ダッシュサイレンサーや2重ウェザーストリップなども導入した。

4G63MIVECターボエンジンを新規に採用

 搭載エンジンについては、“全域高性能、全域ハイレスポンス”を謳う進化版の4G63型1997cc直列4気筒DOHC16Vインタークーラーターボを採用する。最大の改良ポイントは、吸気側に連続可変バルブタイミング機構のMIVECを組み込んだこと。これにより、高回転域における高出力の確保と低回転での燃焼の安定を実現しながら、燃費および排出ガス性能の改善を成し遂げる。さらに、ターボチャージャーのコンプレッサーハウジングの改良を実施。ディフューザー部の形状を延長するなどして低中速回転域でのトルクアップと全域でのレスポンス向上を達成した。また、GTとRSグレードにはコンプレッサーホイールの材質をアルミニウム合金からマグネシウム合金に一新したターボチャージャーをセット(GSRにはオプション設定)。さらなる軽量化を図ることで、過給レスポンスの引き上げを実現した。

ほかにも、エンジン冷却水温の制御性を高めるボトムバイパス方式の採用やインテークマニホールドへの吸気圧力センサーおよび吸気温度センサーの追加などを実施する。パワー&トルクは、GSRが280ps/40.8kg・m、GTとRSが280ps/41.5kg・mを発生した。組み合わせるトランスミッションはGSRに6速MT、GTとRSに5速MTを採用する。5速MTは従来のスーパークロスギアをベースに、5速のギア比を0.761へと変更。これにより、高速クルージング性能が一段と向上した。

 駆動系については、三菱独自のオールホイールコントロールシステムであるACD(Active Center Differential)+スーパーAYC(Active Yaw Control)+スポーツABSを熟成させて搭載する。同時に、前マクファーソンストラット式/後マルチリンク式の懸架機構のセッティング変更も実施。とくにリアのスプリングを変えて車高をわずかに下げることで、スーパーAYCの効果をより有効に引き出すと同時に、スタビリティ性能や操舵応答性の向上を成し遂げた。また、ダンパーについてはビルシュタインと共同開発した専用品を装備(GSRとGTに標準、RSにオプション)。制動機構にはブレンボと共同開発したフロント対向4ポットキャリパー/リア対向2ポットキャリパーのベンチレーテッドディスクブレーキを組み込む(GSRとGTに標準、RSにオプション)。装着タイヤはGSRとGTが235/45R17サイズで、RSが205/65R15サイズ。GSRとGTには5本ツインスポークデザインのエンケイ製軽量アルミホイールを標準で装備し、オプションとしてBBS製鍛造軽量アルミホイールを設定していた。

WRCのワークス活動は2005年シーズンをもって休止

 エボリューションⅨがデビューした2005年、三菱自動車工業およびMMSP(Mitsubishi Motors Motor Sports)は「ランサーWRC05」を駆って世界ラリー選手権(WRC)にフル参戦する。ドライバーは、ハリ・ロバンペラ選手、ジル・パニッツィ選手、ジャンルイジ ・ガリ選手の3名体制で挑んだ。第1戦のモンテカルロでは、パニッツィ選手が総合3位、ロバンペラ選手が総合7位と好スタートを切る。続くスウェディッシュではロバンペラ選手が総合4位。そして、最終戦のオーストラリアではロバンペラ選手が総合2位に入った。年間順位はマニュファクチャラーズでは第5位、ドライバーズではロバンペラ選手が第7位につけるなど、健闘した2005年シーズンだった。しかし三菱自動車工業自体の再生計画の最中ということもあり、WRCへのワークス参戦はこの年をもって休止となったのである。

ランエボ初となるワゴンモデルを設定

 ランサーエボリューションⅨの発売から6カ月ほどが経過した2005年9月、三菱自工はランエボ初のステーションワゴンとなる「ランサーエボリューションワゴン」を発売する。基本骨格はエボリューションⅨのプラットフォームをベースにランサーワゴンのボディサイドパネルやルーフサイドパネルなどを結合し、そのうえで各ピラーとルーフの結合部を補強。さらに、大型リアフロアクロスメンバーの追加やリアフロア/リアエンドパネル/Dピラー下部への補強材の設定、リアダンパー上部のボディ取付部周辺への補強材の設定、リアゲート開口部へのスポット溶接の増し打ちなどを実施した。

また、エボリューションⅨで採用するアルミ製のフロントフードやフロントブリスターフェンダーなどを踏襲して装備。リアクォーター下部はエッジの効いたブリスターフェンダー形状で仕立てた。パワートレインには4G63型2l・MIVECターボエンジン(280ps/40.0kg・m)+6速MT(GT)と4G63型2lターボエンジン(272ps/35.0kg・m)+5速AT(GT-A)を搭載。駆動機構にはACDを組み込んだ電子制御フルタイム4WDを採用していた。