ファミリア・プレスト 【1967,1968,1969,1970,1971,1972,1973,1974,1975,1976,1977,1978,1979】

“急速”のサブネームを持つ本格派

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1966年に登場したカローラやサニーの効果で、
にわかに盛り上がる日本のマイカー・ブーム。
東洋工業が販売するファミリアも
その一翼を担っていったが、
戦闘力のさらなるアップを目指して、
1970年にビッグマイナーチェンジを実施した。
大衆車市場での拡大戦略

 1964年9月にデビューし、アルミ合金を多用する“白いエンジン”を積んで好評を博したマツダ・ファミリア。1966年にトヨタ自工のカローラや日産自動車のサニーがデビューした後も、エンジンの排気量アップや装備の上級化などを実施し、着実な販売成績を残す。1968年3月には、ファミリア・シリーズの累計生産台数が早くも50万台に達した。

 しかし東洋工業の首脳陣は、この状況に決して満足していなかった。マイカー市場のシェアをもっと伸ばしたい。さらに中堅ライバルメーカーが69年に相次いでリリースしたスバルff-1やホンダ1300、三菱コルト・ギャランなどに対抗するモデルを造る必要もある−−。結果的に首脳陣は、ファミリアをベースにした新たなマイカーを開発する決断を下す。

サブネームを付けてイメージ一新

 新マイカーを造るに当たって開発陣が目指したのは、さらなる性能アップと内外装の上級化だった。

 性能アップに関してはエンジンの変更に主眼を置く。ヘッド機構は従来のOHVに比べて高回転化が可能なOHCに変更。排気量も1272ccまで拡大する。ブロックは耐久性やコストを踏まえてアルミ合金から鋳鉄製に一新した。こうして完成した新エンジンは、TCの型式が付けられる。

 外装はグリルデザインの変更やメッキパーツの多用化などを実施して、見た目の高級感を強調する。内装もインパネやシートのデザイン変更などでグレードアップを果たした。

 1970年3月、東洋工業の新しい大衆車がファミリア・シリーズに追加される。車名は「ファミリア・プレスト1300」。急速を意味するサブネームを付けた渾身の上級ファミリーカーだった。ちなみにこの当時は、新しい上級ファミリーカーにサブネームを付けるのが流行していた。東洋工業のファミリアがプレスト、三菱のコルトがギャラン、日産自動車のサニーがエクセレントを加えている。富士重工に関しては車名までも変更し、スバル1000からff-1に一新した。

ロータリー版の追加

 ファミリア・プレストはデビューからわずか1カ月後の1970年4月に、2台の新規モデルを追加する。

 1台はプレスト1000。廉価仕様のエントリーカーという位置づけだが、そのバランス感覚に優れた走りのよさと上級な装備群で好評を博した。

 もう1台はプレスト・ロータリー。従来のファミリア・ロータリークーペも、ついにプレストの名を冠したのだ。ボディタイプはクーペのほかに、4ドアセダンのSSも用意した。外装はレシプロエンジンのプレストとは異なり、専用グリルや丸型4灯リアコンビネーションランプなどを装着してスポーティに仕上げる。

 プレスト・ロータリーのラインアップ強化はさらに続く。1970年5月には専用のスポーツキットを発売。これはモータースポーツのジムカーナに対応したパーツキットで、初・中・上級用の3種類が用意された。同年12月になると、上級仕様のプレスト・ロータリークーペGSが追加される。同時にレシプロ版でもプレスト・クーペ1300GFが設定された。

 ファミリア・プレストの人気に支えられ、1970年12月には東洋工業のロータリー・シリーズが生産累計10万台を突破する。もちろん、レシプロ版のプレストも好評で、市場で高い人気を獲得した。

 このままの好調ぶりが続くかに見えたファミリア・プレスト。しかし、外的要因がそれを拒んだ。1973年に日本を襲ったオイルショックだ。レシプロ車に比べて燃費の悪いロータリーエンジン車の販売台数は大きく下降し、それに合わせるようにファミリア・プレストの人気も落ち込んでいく。東洋工業のファミリーカー人気が復活するのは、ファミリア・プレストの後継モデルとなるファミリアAPが1977年1月にデビューするまで待たなければならなかった。

COLUMN
ロータリーエンジン搭載車が 最も充実した1970年
 ファミリア・プレストがデビューした1970年前後は、マツダのロータリーエンジン搭載車が最も充実し、隆盛を極めた時代だった。ロータリーエンジンは1967年5月に初めてコスモスポーツに搭載され、その後に量産化と普及が急ピッチで進む。1968年7月にはファミリア・ロータリークーペがデビュー。1969年6月にはファミリア4ドア・ロータリーがラインアップに加わる。 1969年10月にはフラッグシップのルーチェ・ロータリークーペがリリースされた。またこの年、ロータリーエンジン搭載車の本格的な輸出も始まる。1970年5月にはカペラ・ロータリーが登場。1971年9月にはスポーツモデルのサバンナがデビューした。ちなみにこの時期、1ローターの軽自動車も企画されたが、業界の圧力もあって発売を断念している。