三菱エクリプスクロスPHEV 【2020】
スポーツクーペの流れを汲むSUVのハイブリッド版
1970年代のギャランGTOに始まる、三菱のスポーツクーペ、コルディアやスタリオンの後継として、1989年に登場した初代エクリプスは、2012年の4代目まで継承された。その流れを汲む、SUVとして2018年に登場した「エクリプスクロス」は、スタイリッシュなクーペスタイルのコンパクトSUVであり、三菱自動車独自の電子制御4輪駆動技術『S-AWC』により、高い走破性、操縦安定性を確保。新開発1.5L直噴ターボエンジンと8速スポーツモード付CVTの組み合わせによって、中低速トルクを向上させ、スポーティな走行性能を実現した。その結果、2019年に「RJCカーオブザイヤー」を受賞して高い評価を受けた。
言うまでもなく、三菱自動車は四輪駆動車やSUV、電気自動車を得意としてきたが、その技術の集大成として、SUVでは世界初となるプラグインハイブリッドEV、「アウトランダーPHEV」を2012年に送り出している。エクリプスクロスは、デビューから3年、2020年の12月にさらに進化し、デザインを一新して大きなモデルチェンジしたが、「アウトランダーPHEV」のメカニズムを継承して、前後1基ずつの高出力モーター、大容量駆動用バッテリー、2.4L MIVECエンジンなどで構成するツインモーター4WD方式のPHEVシステムを装備。「エクリプス クロス」に合わせて制御を最適化させ、EVならではの滑らかで力強い加速、軽快感と安心感のあるハンドリングを実現し経済性、経済性も受け継いだのである。
駆動用バッテリーは13.8kWhでEV航続距離は57.3km(WLTCモード)、遠出をしない日常的なデイリーユースなら基本的にEV走行が可能で、走行モードは、駆動用バッテリーの電力でモーター駆動する「EV走行モード」、エンジンで発電した電力でモーター駆動する「シリーズ走行モード」、エンジンで発生した動力で走行し、モーターがアシストする「パラレル走行モード」の3つの設定で、走行状況に応じて自動で切り替わり、適切なEVドライブが可能となる。
実際、走ってみると、通常の市街地走行だと、バッテリー残量が十分で、極端なスロットル操作をしない限り電気自動車的なEV感覚で走ることができる。これなら先に触れたように57.3㎞のEV航続距離の範囲であれば、電気自動車としてガソリンを使用することは無い。今回は、19日間ほど長期で借り出し、1日の走行距離を40~45㎞程度に設定し、充電はガレージでAC200V/15Aの普通充電を基本としたが、深夜電力を使用して、約5時間程度で満充電。翌日にはすぐに走ることができる。しかも料金は19日間で何と3000円程度と驚く程安い。この経済性の高さも大きな魅力である。
ドライビングも楽しく、モーター性能はフロントが82PS/137N・m、リアが95PS/195N・m、前輪の駆動にはときにエンジンも介入するが、前後の最終減速比(前:9.663、後ろ:7.065)に差をつけて駆動力をほぼ均衡させる前後トルク配分と、フロントブレーキ制御による左右前輪トルクベクタリング(ブレーキAYC)によって、ステアリングを切り込むと、ターンインから、理想的なヨーが発生し、アクセル操作だけでコーナリングをコントロールできる。狙ったラインに向かってアクセルを踏み込むと、コーナーの出口に向かって理想的なトラクションが掛かり、スポーティに走ることができる。サスペンションの動きもしなやかで、スポーツライクでフラット感が高く気持ち良く走ることができることも大きな魅力である。
さらにPHEVとしては、EV走行時の最高速が135km/hに設定されていることも大きな特徴である。ドライブモードやバッテリー残量次第では高速巡航でもエンジンがオフになるが、加速すれば、エンジンの駆動力が加わり、速さを感じられる。その際の始動時のショックやエンジン音のうなりが抑え込まれ、十分な余裕が感じられる高級感のある動力性能も大きな魅力だ。スポーティさと快適性が見事にバランスした魅力的なSUVと言えるだろう。