カリーナ 【1970,1971,1972,1973,1974,1975,1976,1977】

スポーティな薫りを発散する“足のいいやつ”

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セリカのセダン版という性格

 カリーナが発売されたのは1970年12月1日であった。10月23日に車名と取り扱いディーラーを発表し、10月末の東京モーターショーに出品。ブランニューカーだけに十分なプロモーション期間を設けての発売だった。カリーナは、主要なシャシーコンポーネンツやほとんどのエンジン・ラインアップを同じ時期に発表、発売されたセリカと共用していた。カリーナとセリカは兄弟車で、トヨタ流の生産合理化の賜物ということなのだが、同じ素材を使いながらも、テイストの異なるモデルに作り分けているところは流石だ。

 セリカのセダン版として登場したカリーナは、派手さは好まないが性能的にはレベル以上のものを求めるオーナーから高い人気を集める。カリーナはトヨタの乗用車ラインアップのポジショ二ングでは、カローラとコロナの中間に位置しており、販売戦略上では1.6リッター・エンジンを中心としたセリカに比べ、1.4リッター・エンジンをメインとしていた。また1.6リッター車には当時としては異例の5速ミッションを標準装備した。車重などの関係で絶対的な性能ではセリカに一歩を譲るものの、実用的な性能では十分以上にスポーティだった。基本的な車種構成は、ベーシック版から順に1400スタンダード、1400デラックス、1600スタンダード、1600デラックス、1600スーパーデラックス、そして最も走りに振った1600STの5車種が揃っており、それぞれに2ドアと4ドアを設定していた。都合10車種でトランスミッション(合計5種)の違いにより26車型に別れていた。セリカの基本15車種&フルチョイスシステムには到底及ばないが、十分なワイド・セレクションである。価格は2ドア1400スタンダードの50万9千円から、4ドア1600STの72万円までとなっていた。

すっきりとした流麗スタイリング

 スタイリングは、大衆車クラスのカローラの拡大版であり、当時世界的な流行となっていたロングノーズ、ショートデッキにセミファストバックというトレンドがソツなく採用されていた。4灯式ランプながら、ロービームを角型のフェンダーエクステンションで囲んだデザイン処理や、クォーターピラー下のえぐりなど個性の演出にも熱心だった。
 テールライトの形状は当時の国産車が円形や矩形のものが多かったのだが、短冊型のものをリアフェンダーの上部にまで回り込ませた独特のスタイルとしていた。オリジナリティを持たせる苦肉の策である。さらに、スポーティーモデルの1600STには、砲弾型フェンダーミラーやサイドのピンストライプなどが装備され、他のモデルと区別されていた。

 駆動方式はオーソドックスなフロントエンジン・リアドライブ(FR)。搭載されるエンジンは3種だ。カローラにも使われていた水冷直列4気筒OHVの1407ccと、シリンダーボアを5mm拡げた2種の1588ccを用意していた。1407cc仕様は86ps/6000rpmの最高出力と11.7kg・m/3800rpmの最大トルクを、1588cc仕様ではシングルキャブレター仕様が100ps/6000rpm、13.7kg・m/3800rpm。ST用の圧縮比を9.4に高め、キャブレターを2基装備するなどでチューンアップしたユニットでは105ps/6000rpm、14.0kg・m/4200rpmをマークした。
 トランスミッションは3速コラムシフト、4速フロアシフト、5速フロアシフトに加え、2速および3速型トヨグライド(オートマチック)が揃っていた。サスペンションは“足のいいやつ”というCMコピーどおり、セリカと同じものであり、フロントがマクファーソンストラット/コイル・スプリング、リアは4リンク/コイル・スプリングによる固定軸である。

ラインアップ拡充で販売を強化

 カリーナは発売されるや大きな人気を獲得した。トヨタは1971年4月にSTのグレードアップ版である2ドアGTをシリーズに追加する。セリカGTやレビン/トレノにも搭載されていた排気量1588ccの2TG型直列4気筒DOHCエンジンを搭載したモデルで、出力は115ps/6400rpmに向上。5速マニュアル・トランスミッションを介して最高速度は180km/hをマークした。1972年12月にはスタイリッシュな2ドアHTモデルと4ドア版のGTもラインアップに加え、バリーエーションを一段と充実させる。積極的な車種展開はカリーナ・シリーズの人気の高さの証明といえた。
 この時期、ライバルである日産は、510系ブルーバードの旧態化やスカイラインとブルーバードUで不必要とも言える上級車指向を強めた結果、このクラスの車種の魅力が薄れてしまっていた。
 カリーナは、潜在的なスポーツ車ファンにとっては絶好のモデルであり、走る楽しさを世のオトーサンたちに広めたという点でも画期的なモデルだったのである。