セリカGT-FOUR 【1994,1995,1996,1997,1998,1999】

WRC制覇を目指したスーパーウェポン

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GT-FOURはトヨタの熱意の結晶!

 トヨタ・セリカのシリーズに、フルタイム4WDシステムを組み込んだGT-FOURと呼ばれるグレードが初めて登場したのは、1986年10月のST165型のことだった。GT-FOURは、当時トヨタが本格参戦を開始したWRC (世界ラリー選手権)に向けたホモロゲーション取得のためのモデルだった。このトヨタの熱意は、1993年にドライバーズ・チャンピオンとメイクス・チャンピオンの両タイトルを独占するという最高の結果をもたらすこととなったのだが、その立役者となったのが、今回の主役であるST205型の先代にあたる、ST185型のGT-FOURである。

 話しをST185型の時代へと少し遡ろう。1989年9月にセリカ系のフルモデルチェンジに伴って、GT-FOURもチェンジされて第二世代に発展する。インタークーラー付きターボチャージャーを装備した、排気量1998㏄の3S-GTE型直列4気筒DOHC16Vエンジンは225ps/6000rpmの最高出力を発揮、ついにリッター当たりの出力で100馬力を超える高性能エンジンとなった。これも、WRC参戦のホモロゲーション(認定)を取得し、勝利を収めるためのハイチューンであった。
 GT-FOURの最大の特徴である4WD(4輪駆動)システムには、センターデファレンシャルにVCU(ビスカス・カップリング・ユニット)を差動制限装置として組み合わせ、リアデファレンシャルにはメカニカルなギアを採用したトルセン方式を採用したフルタイム4WDシステムが搭載されている。必須となったのである。

 4輪駆動システムとターボチャージャー付きエンジンの組み合わせは大成功で、1990年シーズンにカルロス・サインツ選手が日本車のドライバーとして初めてワールド・チャンピオンとなり、安定した高性能の一端を見せ始める。1993年シーズンには日本車としては初めてWRCのドライバーズ&メイクスの両部門でチャンピオンシップを獲得する。

WRCからの突然の撤退!

 1994年シーズンからWRCラウンドに投入されたST205系のセリカGT-FOURは、ベースとなった量産モデルのサイズが拡大されたことなどによって車重が増加、性能的にはライバルに遅れを取ることになった。しかし1994年に年間5勝を上げ2年連続のダブルタイトルを獲得。1995年のサファリラリーでは日本人ドライバー藤本吉郎選手が総合優勝を飾るなどポテンシャルの高さを見せ付ける。しかし、「好事魔多し」の諺の通り、1995年のシーズン中盤にはターボチャージャーの吸気系に禁止された改造が発覚、トヨタのワークスチームは全ての得点をはく奪されるというトラブルに見舞われる。トヨタは2シーズンにわたってWRCへの参加を中止することを発表する。これによって、WRCに於ける活動は事実上終了することになった。

ファインチューンを施したST205型の実力

 WRCの実戦で期待どおりの結果が残せなかったとはいえ、ST205型GT-FOURは、生粋のアスリートだった。エンジンやボディ細部に渡って大幅な改良とチューンアップが施されていた。フロントに搭載され4輪を駆動するエンジンは、熟成版の3S-GTE型の直列4気筒DOHC16バルブである。ツインエントリーセラミックターボで過給することで255ps/6000rpmの最高出力と、31kg・m/4000rpmの最大トルクを獲得した。これは単にターボをツイン装着したことによるアップではなかった。インタークーラーを冷却性能に優れ圧力損出の少ない水冷式とし、さらにカムシャフトのリフト量をアップ、インテークマニホールドのサージタンク容量も増やし、スティフナー一体型アルミオイルパンを採用するなど多岐にわたるファインチューンを施した結果だった。性能の目安となる排気量1リッター当たりの比出力で軽々と100psを超える高性能エンジンである。

 トランスミッションはマニュアルの5速、サスペンションは前後ともストラット式の独立型で、フロントにはアームを追加しロードホールディング能力を高めたスーパーストラットが奢られていた。ブレーキも徹底的に強化され、フロントが対向4ポット、リアは対向2ポットの4輪ベンチレーテッドディスク式。とくにフロントはスパイラルフィン付きでシリンダーも従来よりも上下方向に大型化した専用品である。高速コーナリング時の制動安定性と操舵性を高めるスポーツABSも設定し、アルミホイールも専用設計の16インチの軽量タイプを採用した。車両重量は4輪駆動システムの搭載により、1380㎏とFF仕様のSS-Iの1150㎏よりは重くなっているのは仕方ない。

人気沸騰の限定WRC仕様の存在

 ST205型GT-FOURには忘れられない限定モデルが存在した。デビュー時に限定販売したGT-FOUR・WRCである。WRCのレギュレーションで変更を加えることのできないエクステリアを、あらかじめ戦闘力を増した造形にモデファイしたモデルだった。限定車とカタログモデルの大きな違いは2点。フードエアスクープと専用大型リアスポイラーである。
 エンジンや足回りなどはカタログモデルそのままだが、一段と精悍さをましたエクステリアは大きな魅力だった。生産台数はホモロゲーション取得に必要な2500台で、80%以上の2100台が日本国内で販売された。GT-FOUR・WRCは短時間のうちに完売してしまったと言う。