ソアラ 【1991,1992,1993,1994,1995,1996,1997,1998,1999,2000,2001】

世界に飛翔した高級スペシャルティ

会員登録(無料)でより詳しい情報を
ご覧いただけます →コチラ


ポルシェ流のデザイン処理採用!?

 初代ソアラから数えて3代目となるソアラは、1991年5月にデビューした。このモデルから、レクサス・ブランドでのアメリカ市場への販売も開始され、名実ともに国際的なクルマとなった。この年代には、トヨタのパーソナルクーペとしてセリカⅩⅩが発展したスープラがあったが、スープラがスポーティーさをウリにしていたのに対して、ソアラは高性能GTとしての性格を持っていた。

 ボディラインは、がらりとイメージチェンジしたボディスタイルは、空力的な効果を最大限に得るために徹底した曲面化が施されていた。
 フロントエンドにはラジエターグリルは存在せず、バンパー下部に開けられた巨大なエアインテークから冷却気を採り入れる。一見するとポルシェ一族のようなデザインである。この曲面を多用したスタイリングのおかげで、見た目には小さく感じられるボディだが、ホイールベースが2690㎜、全長4860㎜、全幅1790㎜、全高1340㎜と決して小さくはない。この時代のトヨタ車全般に言えることであるが、一時代前のまるで折り紙細工のような直線基調のスタイルから、ボディの何処にも直線部分の無い、曲面を多用したスタイリングとなっているのは、それだけボディパネルのプレス技術が向上していることの証でもある。生産技術は、世界のトップクラスに達していたと言っても過言ではないはずだ。

トヨタ最新技術のショーピース

 第三世代のソアラには、新しい技術や装備が満載されていた。なにしろ、トヨタの技術的なショーウィンドウだったのだから。たとえば、前後輪に装備されたアクティブ・コントロール油圧サスペンションだ。アクティブ・サスペンションそのものは、同じトヨタのセリカの一部車種に採用されていたが、ソアラの最上級車種である、4.0GTリミテッドに採用されたものは、サスペンション制御の範囲をさらに拡大し、アクティブ4WS(4輪操舵)とABS(アンチ・ブロッキング・ブレーキ・システム)などと電子的に関連付け、ボディの動きを総合的にコントロールしようとするものなのだ。

 従来のサスペンションに付き物の金属スプリングは一切用いられておらず、全ての重力変化は油圧によって制御される。こう書くと分り難いが、一言で言えば、路面からのショックやコーナリング時の姿勢変化は、ショックアブソーバー内部の油圧と窒素ガスの圧力をきめ細かく高めたり低めたりすることで最適な状態にするわけだ。電子的なセンサー技術の進歩が無ければ到底実現出来ないメカニズムである。しかも、こんな複雑でコストの掛るものを、普通に買えるクルマに採用した点も注目して良い。シリーズには、通常の金属スプリングを用いた仕様も存在する。こうした電子制御システムについても、世界の隅々にまで張り巡らされたトヨタのサービス・ネットワークにより、十分なアフターサービスが可能となったことを示すものでもあった。

トップモデルはV8ユニット搭載

 駆動方式はフロント・エンジン、リア・ドライブの2輪駆動方式となっている。フロントに縦置きで搭載されるエンジンには2種あり、セルシオにも使われている排気量3968㏄のⅤ型8気筒DOHC32Vの自然吸気型(最高出力260ps/5400rpm)と排気量2491㏄の直列6気筒DOHC24Vに2基のターボチャージャーを装備したツインターボ型(280ps/6200rpm)である。Ⅴ型8気筒エンジンはソアラ4.0GT系に、直列6気筒はソアラ2.5GTツインターボ系に各々搭載される。

 インテリアの装備も高級パーソナルクーペにふさわしいもので、クラウン以上に上質な印象で、セルシオのそれに近いものとなっている。トップグレードのGTリミテッドでは、運転席側エアバッグ、後部座席3点式シートベルト、フルオートAC、ステアリングホイールの電動チルト機構、クルーズコントロール、本革パワーシート、ウッドパネルなどが標準装備となり、オプションでGPSマルチビジョン(ナビゲーションとバックモニターを兼ねる)も装備出来た。これだけの装備で当時の販売価格が481万円だったのだから、同クラスの輸入車と比べてお買い得な価格設定だった。ちなみに、メルセデス・ベンツのパーソナルクーペであった3.0リッター・エンジンの300CE-24は915万円もしていたのだ。

国際化がもたらしたもの

 アメリカ市場ではレクサスLS400として売られていたセルシオの登場に加え、アメリカをはじめとする世界市場へ向けた高級パーソナルクーペのソアラ(アメリカ名SC400)が登場したことによって、小型車の分野だけではなく、“オーバー5ナンバー”サイズのジャンルでも、トヨタは本格的に世界戦略を開始した。そのことが、日本国内市場に与えた影響はすこぶる大きく、日産はアメリカでの人気車種であるフェアレディZのバリエーションを拡充し、三菱はGTOと言う高性能車を登場させ、アメリカではダッジ・ステルスという兄弟車も売り出した。これらはほんの一例だが、日本の自動車メーカーは否応なく世界市場を意識したクルマの開発をしなければならなくなったのだ。ソアラ(とセルシオ)は、日本車が海外市場へ向けて新しい世代に入るきっかけとなったのである。