NⅢ360タウン 【1970,1971,1972】

市街地走行に重きを置いた第3世代Nのマイルド仕様

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市場の要求に応えてNシリーズを改良

 1967年3月の発売以来、軽自動車カテゴリーのリーダーカーに位置づけられてきたホンダN360。1969年1月には内外装の上級化や安全性の向上、シャシーの改良などを図った第2世代の「N360」(通称NⅡ360)へと進化し、シリーズの生産累計は50万台を突破する人気モデルに成長していた。

 一方で開発現場では、1970年代に向けたNシリーズの姿を懸命に模索する。めまぐるしく変わるモータリゼーションのなかで、ユーザーの要求をフルに満たす軽自動車の姿とは−−。最終的に開発陣は、軽自動車を代表する洗練されたボディデザイン、静かで快適な室内空間、安心して乗れる安全設計、高性能と経済性を両立させた新次元のエンジン特性といった項目の実現を目指し、Nシリーズに多様な改良を加えていった。

“ナイセストカー”を標榜したNⅢのデビュー

 エクステリアに関しては、フロントグリルやボンネットなどの形状を一新し、より格調の高いルックスに仕立てる。また、ベンチレータールーバーやホイールキャップ、バックアップランプといったパーツ類のデザインも一新した。インテリアでは、遮音材の増強などによって静粛性を向上させたことがトピック。同時に、面圧分布を改良したフロントシートやフルベンチレーションを採用し、乗員の快適性を大きく高めた。透視光式計器盤や大型ウィンカーランプを組み込んで安全性を引き上げたことも、NⅢの訴求点だった。

 搭載エンジンは従来の改良版となるN360E型354cc直2OHCの空冷ユニットで、シングルキャブ仕様(31ps)とツインキャブ仕様(36ps)の2タイプを設定する。組み合わせるミッションは新開発の4速フルシンクロMTとし、正確かつ滑らかなチェンジフィールを特長とした。また、4速フルシンクロ化によって燃費性能も向上。60km/h定地走行燃費はクラストップレベルの28km/L(シングルキャブ仕様)を実現した。

 N360の第3世代となるニューモデルは、1970年1月に「NⅢ360」の名で市場デビューを果たす。キャッチフレーズは“ナイセストカー”。車種展開はスタンダード/デラックス/Rデラックス/スーパーデラックス/カスタム/Sの各グレードに、それぞれシングルキャブ・エンジン仕様とツインキャブ・エンジン仕様を設定する。高性能版のツインキャブ・エンジン仕様はツーリングを名乗り、専用のブラックグリルやドロップセンターリムなどを標準で装備していた。

街乗りの走行性能を重視した新バージョンの登場

 NⅢシリーズのデビューから7カ月ほどが経過した1970年8月、本田技研は市街地ユースに重きを置いた新バージョンの「NⅢタウン」を発表する(発売は同年9月)。同車は市場からの「街乗りにより適した走行性能と装備を有する軽自動車がほしい」という要望に応えたニューモデルだった。

 “理想のタウンカー”を目指して開発したNⅢタウンは、N360E型354cc直2OHCエンジンをフラットトルク型にチューニング変更する。最高出力は27psに抑えられたが、そのぶん低中速域における過渡トルクの厚みが増し、市街地走行でより扱いやすい特性に仕立てられていた。また、足回りもソフトな方向にセッティングされ、いっそう快適な乗り心地を実現する。
 室内デザインも変更を加えていた。新形状のダッシュボードにインパネ中央部に配したシフトレバー、ベンチタイプのフロントシートなどを採用してサイドのウォークスルー性を高めていた。

ラインアップは4グレード構成。上級グレードは装備充実

 グレード展開はデラックス/Rデラックス/スーパーデラックス/カスタムの4グレードで構成する。デラックスはブラックの内装色にフロアカーペットやサンバイザーといったアイテムを装備。Rデラックスはフロントシートにリクライニング機構を組み込む。スーパーデラックスはブラックまたはリッチブラウンの内装色を設定し、カーラジオやモール付きドアライニング、熱線吸収ガラスなどを標準装着した。そして最上級仕様のカスタムはブラックまたはディープマルーンの内装色を用意し、メッシュタイプのシートやフロントアームレスト、木目調シフトノブ、ドアガーニッシュ、カスタムミラー、オーバーライダー、マフラーカッター、4PRタイヤなどの上級アイテムをフル装備する。ボディ色はイメージカラーのカロリンイエローを含めて全8タイプをラインアップした。

 パワー競争からソフト路線へと切り替わったNⅢタウンのキャラクターは、市場から好評を持って受け入れられる。軽自動車の新たな方向性の創出に自信を深めた本田技研の開発陣は、後にデビューする新型車のライフにも街乗り重視のソフト路線を採用することとしたのである。