ランドクルーザーBJ42 【1979,1980,1981,1982,1983,1984】

世界最強の名を決定づけた傑作オフローダー

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40はエンジニアがデザインまで担当

 名車、ランドクルーザー40系がデビューしたのは、1960年のこと。ランドクルーザーはトヨタ本体ではなく、関係会社の荒川板金工業(現アラコ)が生産を担当していた。
 荒川板金工業は、トヨタ自動車(当時は豊田自動織機の自動車部)の工長だった荒川義兵衛誌が1947年に興した会社で、トヨタの車両ながら量産体制に組み込めない特殊な仕様のボディを専門に造っていた。独立企業ながら生産はトヨタ本社工場の一角で行われ、制服もトヨタと同じ。トヨタの一部門と言っていいほど関係の深い会社だった。

 荒川板金工業は、ランドクルーザー20&25系から40系へのモデルチェンジに際し、スタイリングを含めボディ関係のすべてを担当する。驚くことに担当者は入社間もない森下倫氏のひとりだけ。森下氏は1年という時間を掛けて40のデザインを煮詰めていった。40では幌仕様とともに、固定ルーフ仕様も主力としたため作業は多岐に渡った。海外での生産やパネル交換をしやすくするためボディを一般的な溶接組み立てでなく、ボルト締め組み立てをメインとしたのが特徴で、40シリーズの個性ともなったラウンド形状のリアクォーターウィンドーは良好な視界確保のための工夫だった。

2段トランスファーを採用

 40シリーズは、4速型トランスミッションと2速トランスファーを採用(インスツルメンツパネルに付けられた電磁スイッチにより、低速走行中でも切り替えが可能)。ファイナルギアのギア比をリファインして高速走行時の騒音を低減する。
 インスツルメンツパネルは、扇型のメーター・クラスターとグラブボックスのカバーが左右対称の位置となっていたが、これは輸出地の道路基準により、左右どちら側にでもステアリング位置を決められるようにした合理的なデザインの一つだった。

最強ガソリンに続きディーゼル登場

 搭載したエンジンは伝統的な直列6気筒OHVのガソリン・エンジンで排気量3878cc、125ps/3600rpmの最高出力と29kg・m/2000rpmの最大トルクを発揮。ソフトトップ仕様でも1850kgと軽くはない車重をものともせず、約51度と言う登坂力と120km/hの最高速度を可能としていた。

 アメリカでも未だ大排気量V型8気筒エンジンを搭載したフォード・ブロンコ(1965年)やシボレー・ブレーザー(1969年)などの4WDが存在しなかった時代に於いては、4.0リッターに近い排気量のパワフルな直列6気筒エンジンを搭載したランドクルーザーは、文句無く世界最強の4WDであった。

 FJ40系の生産は1960年1月から始められたが、生産される車両の大部分は輸出に振り向けられることになる。最も大きな変化は、1973年に輸出用モデルに限って90馬力を発揮する排気量3576㏄の直列6気筒OHVディーゼル・エンジン仕様が導入されたことだ。1970年代初頭に突如起こったオイルショックに対応したものだが、トルク特性に優れた大排気量のディーゼル・エンジンの採用により、ランドクルーザーの性能は一段と高められた。

 オフロード向け4WDとディーゼル・エンジンの相性の良さを確認したトヨタでは、1974年からは国内向けのモデルにもB型と呼ばれる排気量2977cc、直列4気筒OHVディーゼル・エンジン(最高出力85ps/3000rpm、最大トルク30.0kg・m/2200rpm)を組み合わせ、BJ40として売り出した。もちろん従来からの直列6気筒のガソリン・エンジン仕様(FJ40型)は併売された。この後、40系ランドクルーザーはマイナーチェンジを繰り返しながら、基本的なスタイリングと仕様を変えることなく、1979年1月まで造り続けられた。

1979年、究極BJ42型デビュー

 大規模な改良が行われたのは1979年2月になってからであったが、好調な販売実績に支えられるかたちで、基本的なボディスタイルには変更は無かった。ただ、ボディには生産性向上のための改良が加えられ、ハードトップ仕様の左右のドアは組み立て式から1枚もののプレス製となり、軽量化のためにボディ鋼板の厚さもやや薄いものが使われていた。

 フロントエンドは小変更で、左右の丸型2灯式ヘッドライトを結ぶ白色のグリルの枠がネット張りの矩形となり、幅が拡げられている。エンジンも改良を受け、ソフトトップ仕様とハードトップ仕様のショートボディとロングボディには2B型の排気量3168cc、直列4気筒OHVのディーゼル仕様が搭載されることになった。

 このままで1980年代に入ったランドクルーザーは、1982年にエンジンを排気量3431cc、直列4気筒OHVの3B型ディーゼル・エンジン(最高出力98ps/3500rpm、最大トルク23.0kg・m/2200rpm)に変更、BJ42型となった。トランスミッションもリファインを加え、ドライバビリティはさらに向上した。ブレーキも前がサーボ付きディスクを標準装備とした。

 いわば、軍用車両としての競争試作に敗れた落ちこぼれの転身として市販化されたランドクルーザーだったが、永年に渡る地道な改良によって、トヨタを代表する車種に成長したのだった。やはり継続は大きな力である。