サファリ 【1980,1981,1982,1983,1984,1985,1986,1987】
レジャーユースも狙った本格SUVの登場
第二次世界大戦終結後の1951年に、現在の自衛隊の前身である警察予備隊の制式車両として、各自動車メーカーによる小型4輪駆動車の競争試作が行われた。結局は、アメリカのカイザー・ウィリス社と技術提携していた中日本重工業(旧・三菱系で、現在の三菱自動車のルーツ)の三菱Jeepが採用されるのだが、競争試作に参加したトヨタと日産は、そのとき試作したモデルを基に、トヨタはランドクルーザーへ、日産は日産パトロールを開発、本格的な4WDとして量産化することになる。
面白いのは、トヨタも日産も最初の試作モデルでは、「トヨタ・ジープ」「日産ジープ」という名前を付けていたことだ。市販に際して商標権の問題が生じ、各々「トヨタ・ランドクルーザー」「日産パトロール」に改名したのだと言う。
日産パトロールは、1951年から本格的な生産を開始し、以後1961年に初めてフルモデルチェンジされる。2代目も基本的なメカニズムに変更は無かったが、英国のランドローバーのようなスタイルになった。130ps/3600rpmのパワーを持つ直列6気筒の3956ccエンジンを搭載して、世界最強の4WDと言われていた。
その日産パトロールを20年ぶりにフルモデルチェンジしたのが、1980年3月に発売された3代目のサファリである。スタイルは一新され、名称も変更された。それまでが実用一辺倒のオフロード向け4WDであったのに比べ、一転して昨今大流行している、SUVやRVとしての要素を強めたものとなった。
モデルバリエーションは3種で、3つのボディタイプがすべて商用車登録であった。ホイールベース2350mmのショートホイールベース仕様のハードトップ標準ルーフは乗車定員2名+最大積載量400kg。ハイルーフは2名(4名)+400kg。バンは、ホイールベース2900mmのロング仕様で、2名乗車時で500kg、5名乗車時で300kgだった。
全体のスタイルは乗用車的な雰囲気を持つ。ソフトトップと前倒しが可能なフロントウインドーは設定されず、スチール製キャビンとFRP製の荷室カバーを備える。ショートホイールベース仕様では、後部荷室には向かい合わせに2名が乗車できる。インテリアも乗用車的なインスツルメンツパネルのデザインやソフトな感覚のシートなどを特徴としていた。
搭載されるエンジンは、旧パトロールからキャリーオーバーされた95ps/3600rpmの最高出力と22.0kg-m/1800rpmの最大トルクを発揮する、排気量3246ccの直列6気筒ディーゼルエンジン一種のみとされ(輸出用にはガソリン仕様も存在していた)、トランスミッションは前進4速となり、2速トランスファーを備えるパートタイム4WDシステムを持つ。これも、旧パトロールから受け継がれたものだった。
日産初の本格的なSUVとしてデビューした日産サファリは、ライバルのトヨタ・ランドクルーザーや三菱パジェロなどとともに、日本国内ばかりでなく、世界のSUV市場を席巻することになる。