ラングレー 【1986,1987,1988,1989,1990】

スカイラインのイメージを備えたジャストサイズGT

会員登録(無料)でより詳しい情報を
ご覧いただけます →コチラ


スカイライン・テイストのさらなる追求

 ラングレーは、スカイラインの血統を継承するのが伝統。3代目では、さらにスカイラインに近づけようと努力する。開発陣は、従来のハッチバックに加えて“4ドアセダン”モデルの設定を決断する。主要テーマは「スカイラインのテイストを備えたジャストサイズの高性能GTセダン」。スタイリングはもとより、走りの性能についてもスカイラインに近づけることを目標とした。

 外装に関しては、異形角型の4灯式ヘッドライトにシャープなイメージのグリル、大型カラードバンパーなどで精悍なフロントマスクを演出する。また、リアビューにはスカイラインと同イメージの丸型4灯式リアコンビネーションランプを備えた。内装についても、スカイラインと同形状の3本スポークステアリングを装着するなどの工夫を凝らす。一方のハッチバックモデルに関しては、従来の5ドア仕様を廃し、3ドアのみの設定とする。内外装にはスポーティ感を強調した独自のアレンジを施した。

3代目はツインカムエンジンを新設定

 搭載エンジンは、新規にツインカム16バルブPLASMAシリーズのCA16DE型1598cc直4DOHC16V(120ps)を用意。既存のE15E/E15S型1487cc直4OHCやCD17型1680cc直4ディーゼルにも緻密な改良を加える。また、CA16DE型に組み合わせるミッションには、5速MTのほかにOD(オーバードライブ機構)付き4速ATを設定した。

 サスペンションはフロントがトランスバースリンク式のマクファーソンストラット、リアが新開発のパラレルリンク式ストラットを採用する。CA16DE型エンジン搭載車には、ツーリング仕様とスポーツ仕様の2種類の減衰力が選べるアジャスタブル・ショックアブソーバーを奢った。制動力の向上も図り、ブレーキブースターは全車で容量アップ。同時に、CA16DE/E15E/CD17型エンジン搭載車にはセミメタリックパッドを装備する。ボディ剛性については、従来比でねじり剛性が約1.5倍、曲げ剛性が約2倍のアップを達成した。

“Skyline's MINI”のキャッチを冠して市場デビュー

 3代目となる新しいラングレーは、N13型系パルサーの登場から5カ月ほどが経過した1986年10月に市場デビューを果たす。キャッチフレーズは、ずばり“Skyline's MINI”。イメージキャラクターには、当時日産のワークスドライバーとして全日本ツーリングカー選手権や全日本耐久選手権などに参戦していた鈴木亜久里選手を起用した。

 市場に放たれた3代目ラングレーは、4ドアセダンとともに3ドアハッチバックも設定していたが、実際の販売に関しては4ドアセダンに人気が集中した。とくにスカイラインをイメージしたツートンカラーのGTグレードの引き合いが多く、当時のプリンス店の販売スタッフによると「スライライン人気の根強さを再認識した」という。

 一方、ラングレーのセダンモデルの追加は一般ユーザーに混乱をもたらした。ラングレー・4ドアセダンを知らない人がディーラーに赴いた際、「スカイラインって、あんなに小さかったっけ!?」と勘違いすることがあったのだ。販売スタッフがラングレー・4ドアセダンの存在を説明すると、「よくここまで似させたなぁ」と感心されたという。

 ボディの大きさが判別しにくい夜間では、「点灯した丸型4灯のテールランプだけでは、ラングレーとスカイラインの識別ができない」という感想をもらすユーザーもいたそうだ。スカイラインのイメージを使ってラングレーの存在感を高める開発陣の方策は、ある種の戸惑いを伴いながら、確実に成果をあげたのである。

3代目がラングレー最後のモデルに−−

 3代目ラングレーは、デビュー後も着実に車種設定の強化と中身のバージョンアップを図っていく。
 1987年1月にはセンターデフにビスカスカップリングを用いたフルタイム4WD仕様を追加。1988年6月になると、特別仕様車の1500タイプFセレクトをリリースする。同年9月にはマイナーチェンジを実施し、1500のエンジンがGA15E型とGA15S型の直4OHC12V(1気筒当たり吸気バルブ×2/排気バルブ×1)に換装された。

 プリンス店系列の定番小型車として、確固たる地位を築いたラングレー。しかし、メーカーでは別の戦略を練っていた。オースター/スタンザ、サニー/ローレル・スピリット、そしてパルサー/ラングレー/リベルタ・ビラ/エクサなど、多くのクラスで派生車種が増えたため、一旦整理する必要があると考えたのである。そして1990年8月、パルサーがフルモデルチェンジしてN14型系に移行すると、ラングレーはリベルタ・ビラやエクサとともにカタログから落とされ、プリンス店系列ではパルサーが販売されることとなった。“小さなスカイライン”として人気を集めたラングレーだったが、その車歴は10年あまりで幕を閉じたのである。