レガシィ 【1993,1994,1995,1996,1997,1998】
スタイリッシュで走りに優れた傑作モデル
1993年10月、SUBARUの大黒柱に成長したレガシィが2代目に進化した。2代目は熟成を目指したキープコンセプトのモデルチェンジで完成度を高め、大ヒットモデルに成長する。
2代目レガシィもワゴンとセダンの2ボディタイプを用意したが主力は完全にワゴンだった。ワゴンの自由でカジュアルな雰囲気とマルチユースフルな個性はライバルに対して絶対的なアドバンテージを築いていたからだ。しかもレガシィはリアルスポーツを凌駕する優れた動力性能と、路面状況を選ばない4WDシステムの持ち主だった。優位性は絶対的だったのである。
ちなみに初代ではセダンで行った速度チャレンジも、2代目はワゴンで行っている。米国ユタ州のソルトレイクにあるボンネビル・スピードウェイで実施された記録会で、まったくのノーマル状態にも関わらず見事に249.981km/hをマーク。世界最速ワゴンの座を獲得した。
2代目レガシィのチーフデザイナーは、オリビエ・ブーレイ氏が担当した。従来のスバルデザインとはひと味違うシャープさとグラッシーなキャビンの融合は、彼の手腕によるものだった。それまで「走りはいいけれども、スタイリングがちょっと……」と、レガシィに乗ることを躊躇していたユーザーにも2代目は好評だった。
初代と2代目で基本的にデザインを構成する主要エレメントは変わっていない。しかし2代目が明らかにスタイリッシュなのは、まさに“デザインの力”と言えた。ちなみにオリビエ・ブーレイ氏はレガシィのデザイン後、再びメルセデス・ベンツに戻りフラッグシップのマイバッハの先行開発を担当。三菱自動車がベンツの傘下に入ると三菱自動車のデザイン本部長として活躍した。日本文化についての造詣も深く、日本人の嗜好を熟知した名デザイナーである。
2代目レガシィのカタログでは、メルセデス・ベンツ190E、BMW5シリーズ、アウディ100を従えたレガシィの写真がメインビジュアルに使われている。欧州プレミアムブランドに勝るとも劣らない魅力の持ち主というわけである。
この主張は嘘いつわりがなかった。伝統のボクサーフォー、すなわち水平対向4気筒エンジンと、フルタイム4WDメカニズムが生み出す走りは惚れ惚れとするほどだった。とくに2ステージツインターボを組み合わせたGTグレードの走りは圧巻で、250ps/6500rpm、31.5kg・m/5000rpmの出力&トルクを生み出す1994ccのEJ20型ユニットは超パワフル。気になるターボラグはほとんどなく、超回転域では爆発的なパワーが実感でき、普段使用する中低速域でも力強く滑らかだった。回すほど高まる独特のボクサーサウンドとも相まって、国産車では稀なドライバーと対話できるエンジンだったのである。
足回りや駆動系の完成度も見事だった。GTグレードはAT車が不等&可変トルク配分の電子制御4WD(VTD-4WD)、MT車はビスカスLSD付きセンターデフ式フルタイム4WDと駆動システムを使い分けていたが、どちらも圧倒的なパワーを4輪に確実に伝え、速さへと還元する術に長けていた。4輪ストラット式サスペンションのチューニングも絶妙で、まさにしなやかにして強靱。ワインディング路でのシャープな回頭性と、高速道路でのスタビリティ、そして市街地の良好な乗り心地をハイレベルで両立していた。レガシィはまるでドライビングテクニックが上達したかのように、スムーズで俊敏なドライビングが自在に出来るクルマだった。燃費の悪さや、高速時の静粛性などに課題を残していたが、SUBARU技術陣のクルマに対する熱い想いが実感できる逸材だったのである。
2代目レガシィは内外の質感や作りも大幅に向上していた。扱いやすい全長4690mm×全幅1695mm×全高1490mmの5ナンバー規格に収めたボディは各部をラウンディッシュに仕上げ、空力特性をリファインすると同時にボディパネルに独特の表情をもたらした。しかも重心の低いボクサーエンジンの利点を生かした低くシャープなノーズによりダイナミックさという点でも一級品だった。
室内も上級モデルにイタリア・モモ社製の本革ステアリングを採用するなど素材を吟味していた。ワゴン作りに長い経験を誇るだけに使い勝手にも優れており、後席を倒さなくてもラゲッジルームは大容量を確保。巻き取り式のトノカバー、メンテナンス用品などが収納できるサブトランク、カーゴフックなど細かな配慮も満載していた。ワゴンにも関わらずボディ剛性が高かったのも特筆ポイントで、印象はセダンと同等。荷物を満載した時の姿勢変化も軽微だった。この点はワゴン作りにスバル同様の長い歴史を誇るボルボを凌いでいた。
2代目レガシィのカタログには「ツーリングワゴンは、走ることの愉しさや日常生活にはちょっと贅沢なくらいの機能や装備を持った旅のクルマ=グランドツーリングカー。だから、ふだん乗っていても何となくリッチでリゾートの心やすらぐ空気が漂っている。」と記されていた。まさにこの言葉通りのプラスαの魅力が実感できるクルマだった。 SUBARUのまじめな姿勢が、豊かさを産んだ好例である。