アリスト 【1997,1998,1999,2000,2001,2002,2003.2004】

欧米ではレクサスを名乗ったパワーエリート

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トヨタ屈指のハイパワーセダンの誕生

 1997年8月、トヨタ自動車は第二世代となるアリストを発売した。フラッグシップとして3リッターの直列6気筒DOHCエンジンに2基のターボチャージャーを装着したハイパワー仕様を設定した高性能スーパーセダンであった。

 第2世代のアリストは、同年のアメリカのデトロイトで開催された全米自動車ショーに、トヨタのアメリカでの上級ブランドであるレクサスのコンセプトモデルとして展示されたレクサスHPS(High Performance Sedan)の市販バージョン。レクサスGSの国内向けモデルだった。車名のアリスト(ARIST)とは、英語で「最上の」とか「最上級の」を意味する接頭語からの造語である。

ツインターボ仕様の潜在能力は300psオーバー

 第2世代になったアリストは、電子制御デバイスはさらに発展と高度化を極めることになった。エンジンは、排気量2997ccの直列6気筒DOHC24バルブで、過給装置を持たない自然吸気型とインタークーラー付きターボチャージャーを2基備えるツインターボチャージャー型の2種があった。

 自然吸気型の最高出力は230ps/6000rpmと控え目なスペックだが、ツインターボ型は280ps/5600rpmのハイパワーを持つ。この280psの値は、メーカー間の自主規制による最高出力表示であったと言われており、エンジン自体のポテンシャルはもっと高い水準にあったのは間違いない。300psは優に超えるものであったはずである。いずれのエンジンも電子制御燃料噴射装置を備え、やはり電子制御による連続可変バルブタイミング機構(VVT—i)、走行状況によってエンジン回転の制御を行うスロットル制御システム(ETCS—i)などのメカニズムが搭載されていた。

豪快で安全な走りを約束した先進デバイス群

 アリストのトランスミッションはマニュアル操作も可能な電子制御4速オートマチックのみの設定であり、駆動方式はフロントエンジン、リアドライブで4輪駆動モデルの設定はない。サスペンションは前後ともダブルウイッシュボーン/コイルスプリングとなっており、ブレーキは4輪ディスクで電子制御式のABSを標準で備える。

 ツインターボチャージャー仕様では電子制御後輪操舵装置(ARS=Active Rear Steer)が標準装備となっていた。安全装備でも、電子制御による車体安全制御システム(VSC=Vehicle Stability Control)、緊急ブレーキをかけた時に制動力を補助するブレーキアシストシステム、前後席のエアバッグ制御、プリテンショナー機構付きシートベルトなどなど、これだけの電子制御デバイスを搭載することで、誰もが安全かつ快適に高速ドライビングを楽しめるようになっていた。まさに、電子制御デバイス満載の状態であった。

 トヨタ車として最初にステアリング・スポーク左右にトランスミッションのシフトスイッチ(押しボタン式)を備えたことでも注目された。トヨタでは「シフトマチック」と呼ばれたもので、センター・コンソールにフロアシフトのレバーは残されていたが、ステアリングから左手を離すことなく、4速トランスミッションをマニュアルセレクトすることが出来た。電子制御デバイスによるドライブ・バイ・ワイヤーの始まりである。

初代のイメージを投影したスタイリングの価値

 ボディは、フルモノコック構造の4ドアセダンで、初代アリストのスタイリングが、イタリアン・カロッツェリアの第一人者であるジョルジェット・ジウジアーロが率いるイタル・デザインの手によるものだったのに対して、第二世代のアリストのスタイリングは全てがトヨタの社内デザインによるものとなっていた。

 旧型のイメージは色濃く受け継がれてはいるが、全体としては時代の流れに沿って正常進化を遂げたものと言える。逆台形のラジエターグリルや変形4灯式ヘッドライト、曲面で構成されたボディパネル、フラッシュサーフェス化(面一化)されたサイドウインドウとドアパネルなど、単純化されたエクステリアのデザインは、バランスに優れた独特の迫力を持つものとなっていた。

高性能という価値を追求したトップモデル

 車種構成は4ドアセダンのみであり、駆動方式も後2輪駆動だけとされ、4輪駆動モデルの設定はなかった。トヨタとしては、高性能スポーツセダンという位置付けであった。価格は379万円から436万円と決して安価なクルマではなかった。

 トヨタの膨大なモデルレンジの中で、4ドアセダンが持つ「快適さ」の最高級がクラウンであり、セルシオであるとするなら、絶対的な「高性能」のトップモデルがアリストであったわけだ。実際的には、5人乗りの4ドアセダンにこれほどの電子制御デバイスと圧倒的な高性能はほとんど不必要であったが、トヨタとしては自動車生産技術のショーウインドウとしての役割もあった。特異なスーパーモデルである。