カローラ・リフトバック 【1976,1977,1978,1979】

スポーツワゴンの機能を持った行動派

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スポーツワゴンの機能を備えた新生カローラ

 1976年1月にカローラの新バリエーションとして登場したリフトバック(LB)は、フレッシュな雰囲気に溢れた存在だった。スポーティ指向のスプリンター・クーペを基本に、ルーフを後方まで延長し大型リアゲートを組み合わせたプロポーションは伸びやかそのもの。当時、世界的に流行の兆しを見せていたスポーツワゴンの先取りともいえ、スタイリッシュさとユーティリティを高次元でまとめたデザイン手腕は見事だった。

 すでにトヨタにはセリカ・リフトバックという兄貴分が存在した。そちらは純粋なファストバッククーペとリアゲートの組み合わせ。ユーティリティという面ではさほど優れていなかった。しかしカローラ・リフトバックは後席の居住スペースはもとより、ラゲッジスペースの使い勝手もハイレベルだった。とくにラゲッジスペースの広さは特筆レベルで、後席を倒すと長尺物も難なく積み込めた。スキーやスキューバダイビングなどの嵩張る遊び道具をスマートに収納する能力はクラス随一と言えた。1970年代半ばは、クルマに社会適応性や生活を豊かにする要素が要求されるようになった時代だが、カローラ・リフトバックは見事に時代の期待に応えた存在だった。

精悍マスクで走りのイメージを表現

 カローラ・リフトバックは優れたユーティリティだけでなく、精悍なフロントマスクも話題を呼ぶ。丸型形状の2灯式ヘッドランプと横長のセンターグリルで構成した造形は、スペシャルティカーの元祖であるフォード・マスタングにも似たダイナミックさを持っていた。さらに高速走行時の安定性を高める大型エアダムの採用もあってモダンな印象も漂わせた。トヨタの屋台骨を支えるカローラだけに手抜きはいっさいなし。アメリカをはじめとする海外市場の動向を含めて吟味されたマスクは、リフトバックの先進性を象徴していた。

 バリエーション展開はシンプルだった。パワーユニットは昭和51年排出ガス規制に適合した1588ccの12T型(85ps/12.5kg・m)と1166ccの3K-U型(64ps/9.2kg・m)の2種で、トランスミションはともに5速と4速のマニュアルアルミッションのみ。グレードは、上級版の1588ccモデルがGSL/ハイデラックス/デラックスの3種。ベーシックな1166ccモデルもSL/ハイデラックス/デラックスの3種から選べた。最上級モデルのGSLは分割可倒式リアシートをはじめ、リアデッキランプ、パーセルカバー、リアワイパー&デフォッガー、リモートリアゲートロック解除機構などが標準装備となっていた。

心臓は排気ガス規制に適合したクリーンユニット

 ユニークだったのは、排気ガス対策システムがエンジンによって異なっていた点だ。当時はまだ排気ガス浄化システムの開発熟成段階で、最適解が見つかっていなかった。そのため複数のシステムをエンジンごとに使い分けていたのだ。

 1588ccの12T型が採用した浄化システムは、TTC-Lと名付けられたトヨタ希薄燃焼システム。均質な希薄混合気(空燃比16〜18)をTGP(乱流生成ポット)などの独自の工夫で安定して燃焼させることでクリーンな排気ガスを実現していた。燃焼そのもののを改善していたため触媒などの後処理装置は装備されていない。一方、1166ccの3K型は、エンジン自体の改良とともにEGR(排気ガス再循環装置)、二次空気供給システム、触媒などの後処理装置をプラスすることでクリーンな排出ガスを実現していた。

 ただし残念なことに、どちらのエンジンもクリーンな排気ガスと引き換えにパワフルさと自然なドライバビリティを失っていた。昭和51年規制対応ユニットとして平均レベルを超えるパフォーマンスを発揮したのは確かだったが、かつての排気ガス規制前のユニットと比較するとレスポンス面でもパワーの盛り上がりという面でもはっきりと見劣りがした。燃費も明らかに悪化していた。カローラ・リフトバックが排気ガス規制のデメリットを克服し、逞しい走りを実現するのは1977年1月にDOHCエンジンを積むGTグレードが追加されてからだった。

ターゲットはアクティブなファミリー

 カローラ・リフトバックのカタログにはこう書かれていた。「クルマを愛するファミリーは、クルマの機能を移り変わる時代の中で効果的に利用し、健全なカーライフを送ってきています。カローラ・リフトバックは、こうしたファミリーの要望に応え、一歩前進して〈ニューファミリーライフ〉をエンジョイさせることを目的に誕生したのです」。スポーツワゴン的なスタイリングを持つカローラ・リフトバックだが、メーカーがターゲットに定めていたのはセダン系と同様にファミリー層だったのである。

 カタログには上記以外にも、週休2日制の定着により休日が年間で100日以上となり、レジャーの形態が休養型から活動型に変化していること、気のあったファミリー同志の付き合いが増えていることに触れ、カローラ・リフトバックが行動派のファミリーに最適なクルマであることをアピールしていた。当初はスポーツユニット搭載車がなく、スポーティなイメージを訴求しにくかった側面も否定できないが、ファミリーユースでも満足できる高いユーティリティを誇っていたことからこそのアピールだった。