ブリオ(アジア戦略車) 【2010】

新興国市場を目指した等身大の未来派コンパクト

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生活をイノベートする未来車への期待

 クルマを巡る国際環境は、目まぐるしく変化している。とくに販売の伸びが顕著な新興国市場ではリーズナブルで、性能に優れ、革新的な“未来のクルマ”が求められている。従来の概念の未来のクルマは、地球環境に優しいパワーユニットを持ち、革新的なパッケージングを持ったイノベーティブなモデルを指したが、新興国が欲する未来のクルマはもっと現実的だ。技術的なイノベーションではなく、生活をイノベートする未来車である。

 2010年11月30日の「タイランド・インターナショナル・モーターエキスポ2010」プレスデイで初公開されたホンダ・ブリオ(BRIO)は、そんな未来車の1台である。ブリオは、2011年じゅうにインドとタイで発売を予定しているアジア市場向けの戦略小型車だ。生産もインド、タイ工場で行う。既存のモデルを改良したモデルではなく、ゼロから開発したブランニューカーである。

インド&タイ市場を念頭に開発されたブリオの価値

 いまや世界一の自動車販売国となった中国は別格だが、インドやタイなどの新興国はいまがモータリーゼーションの爆発期にあたっている。サニーやカローラが誕生し、大衆車の販売が一気に伸びた1966年から1968年前後の日本と同じ状況が起きているのだ。インドやタイは、現在世界で最もコンパクトカーの販売が伸びているマーケット。とくにインドでは税金の安い全長4000mm以下のA2カテゴリーの人気が高い。

 ブリオは、このA2カテゴリーに新参入するモデルで、そのボディサイズは全長3610mm×全幅1680mm×全高1475mmに収まっている。スタイリングはフロントマスク回りにフィットのイメージを投影しているが、完全なオリジナルにまとめあげている。リアにいくほどホップアップするサイドのキャラクターラインやぐっと踏ん張った前後フェンダーのふくらみがダイナミックだ。ボディタイプは実用的な5ドアハッチバック。フロントドアと比較してリアドアが小さめなのはコンパクトなボディサイズの影響である。ただしホンダ独自の“マン・マキシマム/メカ・ミニマム”の設計思想を徹底することで、広く使い勝手に優れた室内空間を実現した。

室内は明るい印象。優れた燃費性能が自慢

 円筒をキーデザイン・モチーフにしたインスツルメントパネルは先進なイメージに溢れ、各部に小物入れを配置するなど気配りも充分。シートサイズもゆったりとした大型で、居住性はなかなかよさそうだ。明るい色調で統一したインテリアカラーも上品である。
 メカニズムの詳細は明らかになっていないが、フロントにガソリンエンジンを横置き搭載したFF車であることは確実。俊敏な走りとともに優れた経済性を重視しており、燃費性能は25km/L以上。タイ政府が認定するエコカーの基準を大幅に上回る。

 注目はその価格。ブリオはホンダが2輪事業で培ってきたリソースを活用して、鋼板をはじめアジア各国からさまざまな材料や部品を調達することで徹底したコスト管理を図り、日本円で100万円前後のリーズナブルな価格設定を実現したのだ。いくら魅力的な未来車でも、それが手の届かない存在であれば“絵に描いた餅”。しかしブリオはまさに“等身大の夢”なのだ。ホンダの先進技術を駆使したアジア向けのニューカマー、ブリオは、EVやハイブリッドだけが将来のクルマ社会を切り開くわけではないことを教えてくれる。マーケットに最適な未来戦略こそ、最大の武器なのだ。