マーチ・カブリオレ 【1997,1998,1999】

小さな4シーターフルオープン

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世界戦略車の第2世代をベースに

「ニューコンパクト」をキャッチフレーズに、第2世代に進化した日産のリッターカーのマーチは、多くのバリエーションモデルを生み出しながら、日本のベーシックモデルとして高い人気を集めた。世界各国へも輸出されたが、車名のマーチ(March)は本来の意味は行進曲とか3月を表す英語だが、老舗レーシングカーコンストラクターと同名であることから、輸出名はミクロの複数形であるマイクラ(Micra)とされた。

 第1世代のマーチが、直線を基調としたスタイリングだったのに比べ、第2世代では一転して曲面豊かなスタイルとなった。ボディはホイールベースで60mm拡大、全高で40mm低くなり、見た目の印象ではひと回り大きくなっている。特に室内空間とラゲッジスペースの拡大は実用性を大きく向上させた。ボディーバリエーションは3ドアハッチバックおよび5ドアハッチバックを基本とし、様々な限定モデルや特装車を加えていった。

1995年のモーターショーにプロトタイプ出品

 1995年の第31回東京モーターショーに、マーチをベースとしたカブリオレ仕様を参考出品して注目された。ファンからは市販化の要望が多く寄せられ、2年後の1997年8月に2ドアのソフトトップ仕様であるカブリオレをラインアップした。主にヨーロッパ市場からの要求に応えたものであった。

 当時は安全性(特に転覆時)の確保という意味から、カブリオレやロードスターなどのオープンモデルは少数派だった、小型車とは言えフルオープンのカブリオレモデルの存在は貴重で、市場ではマニアから絶大な人気を得る。マーチ カブリオレは安全性確保の意味から、前部シート後方に頑丈なロールオーバーバーを残すスタイルとなっていた。

 ソフトトップは電動で駆動され、コックピットのセンターコンソールにあるスイッチで動かすことができる。ボディーが小型であるため、下ろした時にトランク内部にすべて収めることができず、後部座席の後ろ側にトノカバーをかけた上で露出する形で折り畳むことになる。ただし、リアウインドウは曇り除去のための熱線入りガラスとするなど実用性を考慮した設計となっていた。

パワーユニットはトルクフルな1.3L

 搭載されるエンジンやサスペンションなどは、第2世代用に完全な新設計となったハッチバック系のものと基本的に準ずる。搭載エンジンは1種。ハッチバックでは排気量997cc(CG10DE型、出力58ps/6000rpm)も用意し、1.0Lと1.3Lの2種の直列4気筒DOHCのパワーユニットを用意するのに対して、カブリオレは1274ccの直4DOHC16V(CG13DE型、79ps/6000rpm)のみ。トランスミッションは5速マニュアルと電子制御方式のCVTがあり、どちらもフロアシフトである。駆動方式はフロント横置きエンジンによる前輪駆動だ。

 サスペンションは前がストラット/コイルスプリング、後が5リンク/コイルスプリング、ブレーキはベンチレーテッドディスク(前)とリーディングトレーリング(後)の組み合わせでサーボ機構を持つ。車重はオープン仕様とするためのボディー各部の強化やトップの開閉システムの搭載などで若干増加し、ハッチバック系が800~840kgであるのに対して920~930kgとなった

オープンカーならではの装備を採用

 マーチ カブリオレは、多彩なアイテムを標準装備した。イグニッションキーは。車体をモチーフにしたデザインで、ボディーカラーに合わせて3色を用意。また、女性ドライバーが髪の乱れをチェックする際に便利な運転席バニティミラーを標準装備。そのほか、リアフェンダー上部にレイアウトされたフルオートアンテナや、キー付きグローブボックス、フロントサイドとリアサイドに採用のパワーウインドウなど、オープンドライブを快適な時間としてくれる装備を採用した。オープンドライブのエントリーモデル的なクルマだったが、ソフトトップの電動開閉機能やリアガラスウインドウなどクラスを超えた魅力的なアイテムを装備していた。

 日本車には珍しいリッターカーのオープンモデルであったが、日本市場よりもむしろやヨーロッパなどの海外市場で大きな人気を獲得したのは面白い現象だった。画一的なモデルが多い国産小型車の中にあって、異色の存在であった。