AZオフロード 【1998,1999,2000,2001,2002,2003,2004,2005,2006,2007,2008,2009,2010,2011,2012,2013,2014】

マツダとスズキの協力関係が生んだマツダ版ジムニー

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2代目キャロルでスタートしたスズキとの協力関係

 1998年10月に登場したAZオフロードは、スズキ・ジムニーのオートザム版である。両車の違いはエンブレム程度。内外装はもちろん、メカニズムの細部に至るまで2台は共通だ。つまりAZオフロードは、スズキ・ジムニーのOEM車なのだ。

 現在でこそ軽自動車を中心に、OEM車は珍しくない。だがAZオフロードを販売するマツダ(オートザム)と、生産メーカーであるスズキの関係は長く深い。AZオフロードを販売するディーラーであるオートザムは、1989年にスタートした。オートザムは地域に密着したディーラーを目指してマツダが開設した新販売チャネルである。イタリアの高級ブランド、ランチアの輸入販売も行っていたが、メイン販売車種は軽自動車、具体的にはキャロルだった。

 1962年に誕生した初代キャロルは、4輪車メーカーとしてのマツダの躍進を支えたエポックモデルである。排気量360cc制限の軽自動車規格のなかでライバル以上の“乗用車”を目指して4気筒エンジンを搭載。軽自動車初の4ドアモデルも設定する。一時はスバル360を抜きクラスリーダーの座に君臨したベストセラーモデルだった。

 マツダはオートザム開設を機に1970年に生産終了したキャロルの復活を計画する。しかし1980年代後半のマツダは、ロードスターをはじめ、さまざまなニューモデル開発を精力的に進めていた。そのため軽自動車のキャロルをゼロから開発するのが物理的に不可能だった。そこで、マツダはスズキと協力関係を結び、アルトをベースにマツダ側が内外装をデザインするカタチで2代目キャロルを開発する。生産もスズキが行い、マツダ側に供給。オートザムで販売する協力体制を樹立したのだ。

OEM車によってラインアップを増やしたオートザム

 2代目キャロルで具現化したマツダとスズキの協力関係は、1995年に登場した3代目キャロルでも継続された。しかし、その後はマツダ側の経営・開発環境の変化により、スズキ製のベースモデルを元にマツダ側が内外装をデザイン、オリジナルモデルに仕上げるという図式が崩れる。マツダ側に新規デザインする余裕がなくなったのだ。

 このため、1998年登場の4代目キャロルからは、アルトのエンブレムを変えただけの実質的な“バッジエンジニアリング車”になった。だがマツダ側は、したたかだった。デザインのオリジナル化を諦めた代わりに、軽自動車ラインアップの充実を図ったのだ。

 このラインアップ充実の果実が、今回の主役のAZオフロードである。AZオフロードを販売するまで、オートザムのラインアップには本格4WDモデルは存在しなかった。だが雪の深い地域での4WDモデルのニーズは根強い。なかでもジムニーは圧倒的な人気を誇っていた。オートザムは、1998年に施行された軽自動車の新規格化移行のタイミングで、ジムニーのオートザム版、すなわちAZオフロードの販売をスタートさせる。

クルマは共通。違いは販売ディーラー

 AZオフロードとジムニーの違いは前述のようにエンブレム程度。ボクシーで力強いスタイリングは共通だし、排気量658ccのK6A型・直列3気筒DOHC12Vターボ(64ps/6500rpm)、強靭なフレーム構造、副変速機を持つパートタイム方式の4WDメカニズムもすべてがオーバーラップする。XLとXCの2グレードで構成するバリエーション展開も変わらない。

 ユーザーが、AZオフロードにするのかジムニーを選ぶのかの決定的な要素は、この両車の場合はクルマ側にはない。ディーラーの立地条件や、人的な繋がりになるだろう。でもそれはそれで立派なクルマ購入の判断材料だ。とくに世界中で圧倒的な信頼を集めるジムニーのOEM版となるAZオフロードの場合、クルマの完成度にはなんの不安もない。生活に有用なニュージャンルのクルマが、なじみのディーラーで購入できるメリットは非常に大きい。AZオフロードは自動車成熟時代の、新たなクルマ選びのスタイルを示すモデルかもしれない。