グランディス 【2003,2004,2005,2006,2007,2008,2009,2010,2011】

ミニバン時代を拓いた先駆の完成形

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新生三菱の代表。デザインは日本固有の美を表現

 三菱自動車は2000年秋、クレーム隠しが発覚。ユーザーの信頼を失い業績が低迷した。2001年の生産・販売台数は前年比60%台にまで落ち込む。企業の存続そのものが危うい状況に立たされたのだ。そんななかで開発されたグランディスは「信頼されるクルマ」が最大のテーマとなった。車名のグランディス(GRANDIS)は、フランス語で偉大さとか雄大さを意味するgrandioseを基にした新造語である。

 デザインの出発点は2001年の東京モーターショーに出品されたコンセプトカーの「スペースライナー」と「CZ3ターマック」の2台。スペースライナーは乗用車の未来像を模索したもので、CZ3ターマックは走りへの情熱を造形化していた。グランディスは“未来”と“情熱”という両車のキャラクターを1台に融合させたのである。その接着剤となったのが“ジャパニーズ・モダン”という考え方だった。

 日本固有の人間の手の温もりを感じさせる造形美や、伝統的な非対称の造作、時間の経過とともに表情を変化させる、移ろいの美という要素を導入することでグランディスの造形は誕生した。スタイルの決定に際して、ダイムラー・クライスラー社(現ダイムラーAD)の傘下に入ったことで、三菱自動車のデザイン責任者に就任したオリビエ・ブーレイ氏の「三菱は日本のメーカーなのだから日本発のデザインのこだわるべき」というアドバイスが大きな力になったという。

最高水準の衝突安全性を持つ強靱ボディ

 グランディスは、基本的な部分、たとえばエンジン、サスペンションなどをギャランやエアトレックなどと共用していた。しかし、大幅な変更が加えられており、事実上は個別のシャシーになっていた。ボディサイズは全長4755mm、全幅1795mm、全高1655mm、ホイールベースは2830mm。このクラス(2.0〜3.0リッター)のミニバンとしては最大級のボディを持つ。

 多くのミニバンが後部サイドドアをスライド式を採用する中、グランディスは左右とも前ヒンジの横開きドアとしていた。衝突安全性は高く、日本独自の衝突安全基準であるJNCAPでは最高の6つ星相当の評価を得ている。大人数が同時に乗るミニバンであるだけに、衝突安全性の向上は必須条件だった。

ライバルを凌ぐ多彩なシートアレンジと走り

 インテリアのシートアレンジメントは多様で、とても短時間ではその全てを理解し活用することは難しい。場合によっては、所有している間に一度も使わずに終わるシチュエーションもあるのではなかろうか。2列目シートは3名乗車が可能なベンチタイプと、セパレートタイプの2種から選べた。乗車定員はそれぞれ7名と6名である。

 グレードは豪華装備のエレガンス、エレガンス-X、スポーティーなスポーツ、スポーツ-X、そしてベーシックなスタンダードの5種があり、駆動方式はフロント2輪駆動と4輪駆動から選べる。

 エンジンは吸気バルブタイミングを低速と高速で切り替える新開発のMIVECシステムを備えた直列4気筒SOHCで、排気量は2378cc、出力は165ps/6000rpmの高性能仕様となっていた。トランスミッションはマニュアルセレクトも可能なINVECS-IIと呼ばれる4速オートマチックのみ。車重は1620〜1700kgであり、性能的には十分以上のレベルに在った。
 価格は208万3000円から292万3000円まで。直接のライバルはホンダ・オデッセイやトヨタ・エスティマ、マツダMPVなどであった。

GDI以上にパワフルでクリーンな心臓

 三菱自動車は1996年発表のギャランで世界に先駆けてガソリン直噴方式のGDIエンジンを開発。グランディスの先代モデルとなるシャリオ・グランディスはGDIエンジンを搭載していた。しかし単独ネームとなったグランディスでは可変バルブタイミング機構を備えた新開発のコンベンショナルエンジン、4G69型を搭載する。GDIエンジンを継承しなかった理由は、よりクリーンな排気ガスを求めたためだった。超希薄燃焼を行うGDIエンジンは数々のメリットを持つ半面、Noxの排出が多いという弱点を持っていた。グランディスはそれを嫌ったのである。

 新開発の4G69型は、GDIエンジンで学んだ燃焼マネージメント技術をフルに活用し完全燃焼を目指し、それでも排出されるNoxは三元触媒によって酸素を奪うことで無害な窒素と水などに変換していた。しかも低速と高速で吸気バルブのタイミングを可変させることで全域パワフルなチューニングとしていた。165ps/6000rpm、22.1kg・m/4000rpmのパワースペックはクラス水準を抜くもので、しかもGDIエンジンがプレミアムガソリンを要求したのに対し、レギュラーガソリン指定だった。4G69型は総合性能に優れた新世代エンジンだったのである。