クレスタ 【1992,1993,1994,1995,1996】

走りを徹底的に磨いた上級パーソナルサルーン

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欧州車に迫った実力派の4代目

 1992年10月、クレスタが4代目に移行した。クレスタはマークII、チェイサーと兄弟車の関係になるトヨタの上級パーソナルサルーンだ。マークII、チェイサーがサッシュレス式ドアを持つピラードアハードトップ・ボディなのに対し、クレスタはオーソドックスなサルーン・ボディを採用。販売ディーラーはビスタ(現ネッツ)店が担当した。ちなみに月間販売目標はマークIIの1万4000台、チェイサーの6000台に対して、7000台に設定していた。

 4代目の特徴は、上級モデルとして走りの実力を徹底的に高めた点にあった。すべての基本となるボディを骨太に仕上げ、クラス水準を大幅に上回る高いボディ剛性を実現。サスペンションは全車に新開発の4輪ダブルウィッシュボーン式を奢った。ボディサイズを3ナンバー規格に拡大(全長×全幅×全高4750×1750×1390mm)したのに伴いトレッドも大幅に広がり、足回りの性能は飛躍的に向上した。ステアリング形式もシャープな反応を示すラック&ピニオン式である。

最強エンジンは280psを発揮するツインターボ

 ラインアップするエンジンは6種類。排気量2997ccの2-JZ-GE型・直6DOHC24V(220ps/5800rpm)を筆頭に、主力となる2.5リッターは2491ccの1-JZ-GE型・直6DOHC24V(180ps/6000rpm)の自然吸気と、そのツインターボ版である2491ccの1JZ-GTE型(280ps/6200rpm)の2種。この他にガソリン仕様の1998ccの1G-FE型・直6DOHC24V(135ps/5600rpm)と、1838ccの4S-FE型・直4DOHC16V(120ps/6000rpm)。燃費性能に優れた2446ccの2L-TE型・直4OHC8Vディーゼルターボ(97ps/3800rpm)をラインアップした。

 トランスミッションは4速AT(上級モデル用は電子制御式)をメインに、一部モデルには5速MTを設定。駆動方式はデビュー当初はFRのみ。1993年10月に電子制御4WDシステムを組み込んだi-Fourシリーズがラインアップに加わった。

世界トップを目指した開発陣の熱意

 4代目が走りの機能を高めた背景には、当時の社会環境と、ライバルの存在があった。4代目の開発時、日本は後に“バブル”と呼ばれる空前の好景気のまっただ中にあった。自動車の販売は絶好調。その影響で潤沢に開発資金を投入できる環境にあった。

1990年前後、日本の自動車界は高い品質と圧倒的な性能で、世界トップの座に就くことを目指していた。なかでもトヨタは精力的だった。クレスタは基本的に日本専売モデルである。日本の高速道路の制限速度は100km/h。常識的に考えれば、超高速域での優れたパフォーマンスはさほど必要なかった。しかし開発スタッフは、世界一を目指す。BMWやメルセデス・ベンツをライバルに設定し、それに負けない走りの実現を目標としたのだ。

大幅グレードアップの陰にライバルの存在

 開発陣を決断させた要因に、1989年に登場した8代目スカイライン、R32型の存在もあった。R32型スカイラインは4輪マルチリンク式のサスペンションを採用し、グループAレースでの完全制覇を狙ったGT-Rをラインアップに加えるなど、日本の上級モデルの走りを根本的に刷新する。その高い実力は、欧州のライバルを凌駕するレベルにあった。R32型スカイライン登場後、開発陣には、ユーザーから「クレスタは快適だが、走りのしっかり感でスカイラインに負けている」という声が多く届いたという。これに開発陣が発奮したのだ。4代目が世界トップの走りを目指した裏には、打倒スカイラインの意識が存在した。

 4代目クレスタは、伝統である豊富な装備と上質な仕上げも健在だった。これに世界水準の走りが加わったのだ。4代目は、走り好きのユーザーにとって、実にお買い得なモデルだった。なかでもツインターボの280psユニットを搭載したツアラーVは、スカイラインGT-Rの速さを実現した“羊の皮を被った狼サルーン”として注目された。3リッターや2.5リッターの自然吸気ユニット搭載の上級版、スーパールーセントも、BMW5シリーズと同等のシルキーな走りを誇った。トヨタの長い歴史のなかでも、優れた走りを持つ名車である。