レオーネ4WD 【1975,1976,1977,1978,1979】

したたかな走破性、世界初の量産4WD乗用車

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道を選ばないスバル4WD乗用車の出発点

 1975年1月、世界初の量産4WD乗用車、レオーネ4WDセダンがデビューした。レオーネにはすでに1972年9月にエステートバンに4WDモデルがラインアップされていたが、エステートバンは4ナンバー登録の商業車。乗用車としてのスバル4WDの歴史は、1975年にスタートする。

 水平対向エンジンと4WDの組み合わせは、いまやスバルのコアテクノロジーである。すべてのドライビングシーンで優れた安定性を発揮する低重心の水平対向ユニットと、4WDのコンビネーションは、スバルの走りの個性を決定する重要な要素になっている。WRC(世界ラリー選手権)で圧倒的な強さを示し、過酷なニュルブルクリンク24時間レースで好成績を残しているのは、水平対向エンジン+4WDのメカニズムがあったからこそ。スバル4WDは、オンロードでの極限の速さを追求する上で欠かすことのできないメカニズムになっている。

 しかし1975年、レオーネ4WDセダンが登場した当時、4WDはオンロード用というよりも、スノーロードや悪路用といったイメージが強かった。事実、カタログは白銀のスノーロードを逞しく走るシーンをメインに構成していたし、カタログ内のコピーでも「高速クルージングでは“スバルFF方式”のゆるぎない走行安定性が、雪道、泥ねい、急坂では“FF+後輪駆動」のたしかなローダビリティがあなたのものです。」という記述がある。当時、4WDといえば、ジープに代表されるクロスカントリーモデルのもの。レオーネ4WDは、いわばクロスカントリーモデルの走破性と、乗用車の快適性を融合したものだった。

セレクティブタイプの4WD機構を採用

 4WDメカニズムは、FFと4WDをレバー操作で切り替えるセレクティブ方式。センターデフはなく、乾燥路面で4WD中に大きくハンドルを切ると、前後輪の回転差に起因するブレーキング現象が発生した。そのため4WDは事実上タイヤのスリップにより回転差が吸収できるオフロードやスノーロード用だった。最低地上高は190mmとたっぷりとした設定で、リアには石はねからボディを守る大型のマッドガードを標準装着。スタイリングはラリー車のようなワイルドな印象が漂った。ただしタイヤは、マッド&スノー機能を備えたエステートバン用とは異なり、オンロード用の155SR13サイズが採用される。

パワーユニットは、当然ながらスバル伝統の水平対向タイプ。デビュー当初は排気量1361cc(77ps/6400rpm)だったが、1975年10月には昭和51年排出ガス規制に対応した1595cc(80ps/5600rpm)に拡大された。1595ccエンジンは、SEEC-Tと呼ぶスバル独自の空気導入式燃焼抑制制御システムを採用した、触媒やサーマルリアクターなどの後処理装置なしでクリーンエアを実現した進歩的なエンジンである。
 組み合わせるトランスミッションはフロアシフトの4速マニュアル。前述の4WD切り替えレバーはシフトレバーの前方に配置され、走行中でも自在な切り替えが可能だった。

世界で唯一の4輪独立サス+4WDの組み合わせ

 レオーネ4WDセダンの美点は優れた走破性とともに、しなやかな足回りにもあった。サスペンションはフロントがストラット式、リアがセミトレーリングアーム式の4輪独立タイプ。当時4WD車で4輪独立サスペンションを備えていたのは、レオーネが世界で唯一の存在だった。ベースモデルのFF車と比較すると各部が強化され、全般的に固めの設定になっていたが、それでも乗り心地に優れ、オフロードやスノーロードでも乗用車を名乗るにふさわしい快適さをキープした。

 装備も充実していた。シートはサポート性を重視したハイバック形状で、ステアリングホイールには3本スポーク形状を採用。タコメーターや内外気切り替え機能付きヒーターやフルトリム内装など、4WDから連想するスパルタンな印象はまったくなかった。だが電動ファンと直結ファンを併用したデュアルファン方式のエンジン冷却機構や、ブレーキ回路をクロス配管の2系統タイプとし、さらにリアのブレーキ配管を室内に収め、損傷防止対策に万全を期すなど、過酷な走行に配慮した工夫を随所に施していた。レオーネ4WDセダンは、スバルらしい技術へのこだわりが結晶した意欲作であり、世界で唯一のユニークな存在だった。デビュー後もたゆまぬリファインを繰り返し、全天候型マルチパーパスサルーンへと成長する。

英国の権威ある専門誌も絶賛! 輸出モデルの実力

 レオーネ4WDは、米国に“スーパースター”のネーミングで輸出された。スーパースターに試乗した英国の権威ある自動車専門誌「AUTO CAR」(1975年10月4日号)のレポートを紹介しよう。「東洋のシトロエンと言われ、独創的な前輪駆動車を生み出してきたスバルは、従来のFF方式に後輪駆動を加えるという独自のアイデアを具現化した。レバー操作ひとつでオフロードカーに変貌するのである。しかも4輪駆動車は、大きく、高価で、燃費が悪く、さらに一般路上で接地性に乏しいという欠点がある。しかしスバル・スーパースターには、このような弱点はひとつもなく、一般路ではゆったりとした乗用車であり、そのFF方式は良好な操縦安定性を提供してくれる。この独創的なオールラウンドなファミリーカーを見るにつけ、ヨーロッパのカーメーカーはスバルを参考にして、大衆車への4輪駆動の応用が強く望まれる」。辛口の論調で知られるAUTO CARだが、スバル・スーパースターはほぼ絶賛だった。高い実力でクルマ通を納得させたのである。