インテグラ・タイプR 【1995,1996,1997,1998,1999,2000,2001】

レーシングテクノロジーで徹底チューンした赤バッジ

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手作業を用いた高精度の心臓部

 通称「インテアール」と呼ばれるこのスポーツモデルの魅力は、ボンネットを開けると目に飛び込んでくる赤いヘッドカバーのエンジンに集約されている。搭載されたのはB18C・96スペックRユニット。標準の1.8リッターDOHC VTECエンジンを極限まで磨き上げたユニットである。最高出力は200ps/8000rpm、最大トルクは18.5kg-m/7500rpm。SiRグレードのMTモデルと比較すると、最高出力は20ps、最大トルクは0.7kg-mのアップしていた。SiRでもDOHC VTECエンジンによる痛快な加速でファンを存分に魅了し、リッターあたり出力は100psに達する。そのユニットを自然吸気のままチューンアップし、最高出力の発生回転数を400rpm引き上げ、最大トルク発生回転数を300rpm高めたのだ。B18C・96スペックRのリッターあたり出力は、NAユニットとしては驚異的な111psを誇った。

 チューニングアップ手法は多岐に渡る。ピストン形状の変更やピストンヘッド内部の肉厚の切削、高回転での吸気量のアップ、大径エグゾーストシステムの採用などを実施。インテークポートの研磨やコンロッドボルトの締め付けなどは熟練工による手作業によって行われ、レーシングエンジンのような高い精度を追求した。結果、レッドゾーンは8400rpm。ピストンスピードは、当時のF1マシンを上回る毎秒24.4mにも達した。

限界域での走りを支える足回り

 足回りのチューンも徹底して実施された。足回りはショックアブソーバー減衰力とスプリングレートを大幅に引き上げたハードセッティングで、スタビライザーも強化。メカニカルヘリカルLSDを採用した。トランスミッションは5速MTのみ。2〜5速のギアレシオをローギア化したクロースレシオのセッティングである。シフトノブはチタンの削り出しだ。タイヤサイズは195/55R15。ブリヂストン製ポテンザRE010が選ばれた。チャンピオンホワイトのカラーリングが施されたホイールは8本スポーク形状で、ブレーキの冷却性能を高めるデザインとなっていた。

 インテアールは、徹底した軽量化も実施した。フライホイールの軽量化で750g、エンジンや排気系の軽量化では3329g、ラジエターのアルミ化で1350g、バッテリーの小型化で4000g、軽量アルミホイールの採用で5200g、ダッシュボードのインシュレーターの廃止で10665g、スペアタイヤリッドの樹脂化で997g、フロントウィンドウの板厚減で600gを削減するなど、その軽量化は、まさにグラム単位。3ドア・タイプRは通常モデルのSiRと比較すると車重が65kgもそぎ落とされ、パワーウェイトレシオは5.3kg/psという数値をマークした。

レッドのレカロ製バケットもRの証

 これだけのマシンを操るコクピットも、通常の市販車とは思えないほどのレーシーなムードを放つ。外から見ても鮮烈な印象を与えるレッドのシートは、レカロ製フルバケットシート。操縦席に身を沈める際、このレッドカラーのレカロ製シートはオーナーの気持ちをスポーツ心に瞬時に切り替える力を持っていた。ステアリングは、レッドのステッチが施されたMOMO製だ。

 ラインアップは、3ドアクーペと4ドアセダンの双方に設定。どちらも5速MTのみの用意だった。驚くべき数値やチューンが目白押しのこのマシンは、ホンダというメーカーの走りへのこだわりを改めて再認識させてくれたモデルだ。しかもリーズナブルだった。1000万円近いプライスを掲げたNSXタイプRにも匹敵するレーシングスピリッツを詰め込みながら、3ドアが222万8000円、4ドアが226万8000円という価格が与えられたのである。圧倒的な性能を手が届くプライスで実現したインテアール。ホンダファンのみならず、走りを好む自動車ファンの誰もが、拍手喝采で迎えたピュアスポーツだった。