マツダデザイン8 【1985,1986,1987,1988】

高い商品性と品質の向上を果たした1980年代後半

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上級クラスに進化したロータリースポーツ

 マツダは1984年5月に社名を東洋工業から変更する。新生マツダのテーマは、トヨタ、日産に続く業界3位の座の確立。実現のため、既存モデルのインパクトのある全面改良と新規モデルの拡充を実施する。車両デザインに関しては、スタイリッシュかつ上級な雰囲気を持たせるように努力した。

 1985年9月、第2世代となるFC型系サバンナRX-7を市場に放つ。新しいロータリースポーツを企画するにあたり、開発陣は「スポーツカーとは何か」という基本テーマを掲げ、ゼロベースに立ち返って仕様検討を行う。社内に“スポーツカー研究会”を立ち上げ、参考になるクルマの徹底的な走り込みを行った。得られた目標は「心地よい緊張感が感じられるクルマ」。さらに、時代が求める高級感を加えることが課題とされた。スタイリングに関しては入念な風洞実験を実施したうえで、スポーティで空力特性に優れた(Cd値0.32)フォルムを構築する。リトラクタブル式ヘッドランプを採用したエクルテリアは、見た目の雰囲気も、従来型より上質に仕上げた。内装も見栄えとクオリティを高め、さらに室内スペース自体も広くした。肝心のエンジンは、13B型654cc×2をベースにツインスクロールという凝ったメカニズムのターボ機構を組み込んだ。

 新しいサバンナRX-7は、走り好きから大歓迎で迎えられた。とくにスタビリティが向上したコーナリング性能は高く評価され、たちまちワインディング王者の称号を獲得する。従来のライトウエイトスポーツ然とした雰囲気からグランツーリスモの方向に変わった内外装の演出も、ユーザーから好評を博した。

都会派パーソナルハッチの登場

 既存車の全面改良を推し進める一方、マツダはシャシーを共用化する兄弟車の開発を積極的に行う。そして1987年1月には、6代目ファミリアのシャシーを利用した「エチュード」をリリースした。

 エチュードはキャッチフレーズに“アーバンチューンド”を掲げる。フレーズ通り、都会の風景に似合う内外装の演出を意図した。外装は3ドアハッチバックのボディにクーペ風のイメージを持たせたのがトピック。B/Cピラーをブラックアウト処理して、広いガラスエリア(マツダでは“テラスバック”と表現)を強調したのが目をひいた。内装はファブリック素材を用いたダッシュボードや天井シーリングなどが特徴で、キャビン全体を高級にまとめる。エンジンはファミリア用自然吸気のトップユニット、B6型1597cc直4DOHC16Vを搭載した。エチュードは街中をキビキビと駆け抜けて、高速クルーズも難なくこなす--そんな“ハイバランスド高性能”が走りの謳い文句だった。

カペラはベーシック&アドバンスをキーワードに開発

 1987年5月になると、中心車種のカペラの全面改良を実施する。5代目となるGD型は、走行性能に磨きをかける目的でハイテク機構を積極的に採用。足回りでは量産車で世界初採用となる車速感応型4輪操舵システム“4WS(4 Wheel Steering)”を、エンジンでは量産ユニット初のコンプレックス型スーパーチャージャー=PWS(プレッシャー・ウェーブ・スーパーチャージャー)を組み込むRF型1998cc直4OHCディーゼルや、可変慣性過給システムのVICS(バリアブル・イナーシャ・チャージング・システム)を内蔵するFE型1998cc直4DOHC16Vガソリンを設定した。

 スタイリングは意欲的だった。滑らかな曲線を基調にしたデザインでスタイリッシュさを強調する。ボディタイプは5ドアハッチバックのCG(City Gear)をメインに、4ドアセダンと2ドアクーペのC2(Composite Coupe)を用意。また、遅れて5ドアワゴン(カーゴ)/バンも設定した。内装に関しては、外観と同様にラウンディッシュな造形でまとめる。フロントシートの演出にも凝り、グレードごとにラグジュアリー/スポーティ/バケットといった仕様を採用した。

 5代目カペラは“ベーシック&アドバンス”のキャッチフレーズの下、斬新なメカニズムや欧州調のスタイリッシュなルックスなどで好評を博す。4WSの走りについてはコーナリング中にややクセの強い動きが出たものの、先進的な走りは大いに関心を集めた。

スペシャルティな味わい。特別な4ドアを開発

 1988年10月には、5代目カペラをベースにしたスペシャルティな4ドアがデビューする。ボディはピラーレス・ハードトップ。車名はパーソナル感を強調する意味で「ペルソナ」とネーミングされた。グレード展開はシート&ドアトリムのアレンジ別に2種類を設定。クロス張りがタイプA、手縫いの本革張りがタイプBを名乗る。

 ペルソナは伸びやかなスタイリングとともに、“インテリアイズム”というコピーが示すとおり、室内空間の細部まで入念にデザインしたことが特徴だった。インパネからリアのシートバックにかけてのラインに連続性を持たせ、全体を曲線基調でまとめる。後席はラウンジのソファーのような造形で、既存モデルにはなかったくつろぎ感を創出した。インパネのデザインもオリジナリティあふれるもの。とくにスイッチ類をメーター周囲のクライスターにシンプルに集約した点が注目を集めた。後席には専用クッションが用意され、前席用3点式シートベルトの取り付け部も、ルーフではなくリアドアとし、見た目がすっきりとした印象になるよう工夫を凝らしていた。