パジェロ 【1999,2000,2001,2002,2003,2004,2005,2006】

ワールドクラスに成長したクロスカントリー4WD

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1999年、世界基準の3代目登場

 1999年9月、本格クロスカントリー4WDとして世界的な名声を確立したパジェロが3代目モデルに移行した。パジェロはその頃までに世界170カ国に累計126万台を輸出。国内累計販売も47万台を記録しており三菱の実質的なフラッグシップ・モデルに成長していた。3代目は過去2世代が築き上げた名声と実績を、一段と強固にするためメカニズムを積極的にブラッシュアップする。開発キーワードは「新世代の世界基準パジェロ」である。

クロスカントリー4WDに市民権を与えたパジェロの功績

 パジェロは、類い希なオフロード走破性を持つクロスカントリー4WDながら、都会などでの日常使用では優れた快適性を示すマルチパーパスぶりが魅力ポイントだった。1982年に初代パジェロが誕生するまで、クロスカントリー4WDは“タフ&ワイルド”の代名詞。あくまでプロユースのワークホースであり、快適性とは無縁の存在だった。高速道路でのパフォーマンスもプアーだった。したがって販売台数はごく少数にとどまっていた。しかしジープの国産化などでクロスカントリー4WDに豊富な経験を持っていた三菱は、このジャンルの可能性を認識していた。「どんな道路環境でもしたたかに走るクロスカントリー4WDは、実用車の究極の姿。タフさとともに快適な乗り味、高速道路でも十分なパフォーマンスがプラスできればユーザー層はぐっと広がる」と考えたのである。

 コイル式ばねを持った足回りと、パワフルなターボ仕様のパワーユニット、そして頑丈なハシゴ型フレーム、セレクティブ方式の4WDシステムを持った初代パジェロはその回答だった。初代パジェロは、高速道路を生き生きと、町中はしなやかに駆け抜け、そしてオフロードや雪道でも安定した走りを示した。初代パジェロは瞬く間に世界中のユーザーを魅了する。さらに「パリ−ダカール・ラリー」などのモータースポーツ分野で技術を磨き上げ、それを市販車にフィードバックすることでクルマとしての完成度を積極的にブラッシュアップした。

世界を見据えた先進メカニズムを積極的に投入

 1991年1月に登場した2代目では魅力をさらに鮮明化する。初代モデル以上にマルチパーパス性と、装備を充実。さらにワイドなバリエーション展開で幅広いニーズに応えた。パジェロの人気は初代以上に高まり、トヨタ・ランドクルーザーはもとより、ライバル各社は、パジェロを意識した競合モデルの開発に躍起になった。

 そして今回の主役となる3代目である。3代目は“世界基準”という開発キーワードが示すように、一段とワールドワイドな市場を意識していた。ボディタイプはロングホイールベース仕様の4ドアロングと、ショートホイールベース仕様の2ドアショートの2タイプ。スタイリングは基本的にキープコンセプトで、遠くからでも“パジェロ”とすぐに認識できる独自のアイデンティティを大切にしていた。世界基準を感じさせたのはボディサイズ。4ドアロングで全長4735×全幅1875×全高1855mm。2ドアショートは同4270×1875×1845mmに達した。ともに全長はもとよりとくに大幅にワイドになった全幅がワールドカーであることを雄弁に物語っていた。

 メカニズムは、新たな挑戦を多くの点でしており、前2世代で築いた伝統を新たなステージに引き上げた。まずクルマの基本となるボディ構造が新しかった。ボディはビルトインフレーム付きのモノコック構造に進化。これによりパワーユニットなどの搭載位置の見直し(低重心化)と軽量化が実現。足回りは前ダブルウィッシュボーン、後マルチリンクの4輪独立システムが組み込まれ、ロードホールディング性能を一挙に高めた。駆動システムは、路面状況に応じて4種の走行モードが選択できるスーパーセレクト4WDⅡ.フルタイム4WDモードでは、前後の駆動力配分を33対67から50対50の範囲で最適に可変制御するロジックを新たに組み込んでいた。

 エンジンも新しかった。ディーゼル仕様は完全新設計。排気量3200ccの直噴4気筒DOHC16Vとなり175ps/39.0kg・mをマーク。ガソリン仕様は旧型用をリファインした排気量3496ccの直噴V6DOHC24Vで220ps/35.5kg・mのハイスペックを誇った。

理想を追求したパジェロの誤算とは!?

 3代目パジェロは、開発コンセプト通り、クロスカントリー4WDの新たな基準に相応しい意欲作だった。だが、残念なことに販売台数は前2世代ほどには伸びなかった。その要因はいろいろ考えられたが、ひとつには都会派ユーザーにとって機能が高度になりすぎ、ポテンシャルを使いこなせなかったことが考えられた。

 パジェロがこのクラスのパイオニアであり、追従者がなかったときには、高度な機能は“憧れ”の対象だった。しかし3代目が誕生する1999年には、トヨタ・ハリアーや、ホンダCR-Vなど、乗用車派生の新種がデビューしていた。それらは乗用車派生だけにパジェロ以上に快適で、スタイリッシュ。オフロードでの走破性はパジェロが大幅に上回っていたが、日常使用には新種のモデルでも十分なレベルに達していた。しかも価格はパジェロよりリーズナブルだった。3代目パジェロの高度な機能は、一般ユーザーには“無駄”なものと映ったようだ。パジェロは理想を追求するあまり、いつのまにかユーザーニーズを追い越してしまったのである。