ステップワゴン 【2001,2002,2003,2004,2005,2006】
家族のクルマ! すべてを熟成したミニバン定番車
ホンダが提案する「クリエイティブムーバー=生活創造車」の第3弾として1996年5月に登場したステップワゴンは、2001年4月に2代目に進化した。ステップワゴンは、乗用車用FFプラットフォームを採用した3列シートミニバンのパイオニアである。それまでの商用車派生ミニバンとはっきり違う快適性と、優れた走りでユーザーの圧倒的な支持を集め、初代の累計販売台数は47万台に達した。
ステプワゴンが誕生するまでファミリーカーの定番は、セダンかハッチバックだった。しかしステップワゴンのデビュー後は、ステップワゴンがその座を獲得する。圧倒的なユーティリティを誇る3列シート構成の広大なキャビンスペースと、乗用車と同等の走りを一度味わうと、ファミリーカー、つまり家族のクルマとしてこれほど便利な存在はないと感じた。しかもステップワゴンは便利なだけではなかった。休日を演出するクルマとして大切な“どこかに遊びに出掛けたくなる”要素を備えていた。自在にアレンジできるシートや、意識的にシンプルに仕上げられたモダンなデザイン、そして巧みな宣伝キャンペーンが、そう感じさせる要因だった。初代ステップワゴンはホンダのセンスのよさ、生活を存分に楽しむ姿勢が結実した、まさにクリエイティブムーバーの代表といえた。
2代目となる新型は、好評だった初代のコンセプトを忠実に継承、さらに便利で楽しいミニバンに仕上げられていた。
スタイリングはキープコンセプト。短いボンネットフードを持つボクシーなデザインだった。大きなグラスエリアと、フロントキャビンからリアバンパーまでのエッジ部をガーニッシュで回り込ませた処理がモダンな印象を訴求し、ボディサイズは全長4670mm、全幅1695mm、全高1845mm(FF)と扱いやすい5ナンバーサイズでまとめていた。後部ドアは助手席側だけにスライドドアを配置したオーソドックスな構成を採用する。
エンジンは排気量1998ccの直4DOHC16V。ホンダ独創の可変バルブタイミングリスト機構と、連続可変バルブタイミングコントロールを組み合わせた進化型VTECメカニズムにより低速から高速まで全域で十分なパワーを発揮する新世代ユニットを搭載していた。パワースペックは160ps/6500rpm、19.5kg・m/4000rpmとクラストップレベル。ファミリーカーにとって大切な燃費経済性も徹底追及され、10・15モード燃費は13.2km/Lと優れたデータを叩き出した。使用燃料はもちろんレギュラーガソリン。トランスミッションは全車が4速ATを組み合わせ、駆動方式はFFと4WDが選べた。
新型の特徴は、8名がゆっくりとくつろげる広大な室内空間にあった。しかも単に広いだけでなく3列シート・レイアウトの工夫で様々なライフシーンに対応したのが特徴だった。代表的なシートアレンジは「レストランモード」、「3列フルフラットモード」、「対座モード」、「カーゴモード」の4種。
レストランモードは、1列目シート両側を回転させ、2列目シートバックを折り畳んでテーブルにすることで、3列目と対座で食事が楽しめるアレンジ。ディーラーオプションのビルトインテーブルを活用するとさらに楽しい空間演出が可能だった。
3列フルフラットモードは、その名のとおり1列目から3列目までのすべてのシートをフラットにし、室内を全長約3mのフリー空間にするモード。ステップワゴンをもうひとつの部屋に変え、車中泊も楽々可能だった。
対座モードは、2列目をバタフライ式に座面と背もたれを逆転させ、ヘッドレストを付け替えることで2列目と3列目を対座させるモード。アウトドアシーンなどで子供の遊び場が生まれた。
カーゴモードは2列目をチップアップ収納し、3列目シートを左右跳ね上げ収納することで大型の荷物が積める空間を生み出すアレンジ。最大荷室長は1737mmに達した。
2代目ステップワゴンには多彩なオプションが設定されていた。なかでも個性的だったのは、ディーラーオプションとして用意されたステップコンポだった。ステップコンポは、ステップワゴンの荷室スペースにぴったりと収まる折りたたみ式電動自転車。アルミフレーム構造の採用で電動タイプながら17.8kgと軽量に仕上げられ、急な坂道でもすいすいと走り回れるのが魅力だった。1充電で最長30kmのアシスト走行が楽しめ、車内に100V電源ソケットを装着すればドライブ中の充電も可能だった。価格は10万9000円。ステップコンポは、初代シティと同時開発された超小型オートバイのモトコンポほどの注目は集めなかったが、ドライブ先の気軽でおしゃれな移動手段として好評を博した。ホンダの遊びゴコロを象徴したオプションである。
2代目ステップワゴンはカタログで「こどもあそぶ。ゆめつくる」と語りかけ、家族の大切な思い出作りに最適なミニバンであることを鮮明にしていた。初代モデルと比較して、室内の使い勝手は一段とよくなり、乗り心地や静粛性といった快適性も向上。走りも一段と逞しくなっていた。まさにファミリーカーに最適なモデルだった。しかし初代よりすべてが進化していたものの、新たな提案性に乏しかったのも確かだった。
トヨタのノアや日産のセレナといったライバルと比較して見劣りしたのがリアのスライドドアが助手席側にしかない点だった。ライバル車は左右両方にスライドドアを配置し一段と利便性に優れていた。ステップワゴンはリアドアを助手席側のみに割り切ることで、使い勝手に優れたシートアレンジと豊富な小物収納を実現していたが、やはりこれは大きな弱点だった。
2代目ステップワゴンが初代ほどの販売成績は上げることが出来なかったのは、ここに原因があった。ミニバンとして熟成されていたが、ドアの構成など新しさに欠けていたのだ。2代目ステップワゴンの経験は、ホンダに“チャレンジ精神”の大切さを改めて教える。