トヨタデザイン12 【1989】
空力性能と質感に磨きをかけた4台のスペシャルティ
後に“バブル”と呼ばれる好景気真っ只中の1989年秋、トヨタ自動車は豊富な開発資金を使って小型スペシャルティ群の大胆な全面改良を敢行する。シャシーやエンジンなどを共用化した5代目セリカと2代目カリーナED、そしてコロナ・クーペから切り替わったコロナ・エクシヴ(EXiV)が同年9月に市場デビュー。翌10月には第2世代のMR2をリリースした。
全モデルに共通していたのは、車両デザインが上質かつ空力性能に優れる造形に刷新されたこと。4台は1990年代に向けたスペシャルティカー・デザインのトヨタからの提案だった。
5代目セリカは、“未来感覚”あふれるコンセプトカーを彷彿させるとともにスタイルから受ける第一印象でスポーツ走行への欲求を喚起させることを狙いに据え、低重心・ワイドプロポーションを基調とした斬新なエアロダイナミクスフォルムを創出する。具体的には、ラウンドシェイプのフロントマスク&ロアボディと絞り込みのきついグリーンハウスを組み合わせたサイドビュー、曲面基調のリアエンドなどで新スペシャルティスタイルを実現した。内装にも曲面パネルを多用し、同時に継ぎ目を少なくしたキャラクターラインで適度な囲まれ感と上質感を演出する。またオーバルシェイプのメーターフードやホールド性を高めたスポーツシートなどを装備し、スポーツ走行のムードを増幅させていた。
“エキサイティング・ドレッシィ”ことカリーナEDに関しては、従来のローフォルム4ドアハードトップの基本デザインを踏襲しながら、先進感や高品質感といった要素を存分に加味する。外装には“アドバンスド・サーフェスフォルム”と呼ぶスタイリングを導入。フロント部はスラントしたノーズとラウンドシェイプのバンパーで構成し、サイドビューは台形フォルムのロアボディと球面形状のグリーンハウスを組み合わせた躍動感あふれる造形に仕立てる。リアセクションはラゲッジからバンパー下端まで一体感を出すと同時に前傾フォルムでアレンジし、動的なイメージを打ち出した。
インテリアは、外観と同一の流麗なラインを基本とした高品質なキャビン空間でまとめる。とくにインパネからドアトリム、センターコンソールへと続くローウエストラウンディッシュフォルムは、乗員を柔らかく、かつ独特なムードで包み込んだ。装備面ではアーチドシェイプのメーターフードやプッシュ式の空調コントロールスイッチ、ホールド性と座り心地を向上させたフロントシートが特長。また、メカニカルセンシングSRSエアバッグやスーパーライブサウンドシステムといった先進アイテムも豊富に盛り込んでいた。
従来ノッチバックの2ドアクーペボディを採用していたコロナ・クーペは、4ドアハードトップボディのコロナ・エクシヴに代替わりする。エクシヴのボディ骨格はカリーナEDと基本的に共通だが、若者層向けのEDに対し、エクシヴはやや年齢層の高いユーザーにターゲットを絞って内外装に独自の演出を施した。
フロントビューはコロナ・シリーズのアイデンティティを織り込んだうえで、存在感のあるグリルやラウンドした薄型ヘッドランプ等によってシックな顔を創出する。サイド部はメッキのドアハンドルやモール類などで高級感を強調。リアセクションは上下2分割・横一文字のコンビネーションランプや二重レンズなどを組み込んでエクシヴならではのスペシャルティ感を主張した。内装ではモーブと称するワインレッド系のオリジナルカラーを設定したことがトピック。また、ラグジュアリーシートのヘッドレストには専用タイプを装着していた。
2代目となるMR2は、そのキャラクターをライトウエイトスポーツからミディアム級のスポーツカーへと一新させた。ボディサイズは全長を220mm、全幅を30mm、ホイールベースを80mm拡大。ミッドシップに横置き搭載するエンジンは、従来の1.5〜1.6Lから2L級へと排気量アップする。そのうえで、車両デザインには“パワーサーフェス(力面形)”をテーマとする張りのある曲面フォルムを採用。具体的には、低く鋭角的なフロントノーズからリアデッキへと続くウエッジシェイプに2シーターのフォワードルックキャビン、ボディと面一化したバンパー、ボディと一体感のあるサイドエアインテークなどでスタイリングを構成した。
インテリアもスポーツカーを意識していた。下半身のホールド感と上半身の開放感を重視し、キャビン全体に柔らかな流れを持たせることによってクルマと乗員の一体感を演出する。インパネおよびセンタークラスターはドライバーを囲むような造形でアレンジ。また、運転席には様々なアジャスト機構を内蔵したスポーツシートを組み込み、上級グレードの表地には高品質なエクセーヌ+本革を採用していた。