スカイライン2000GT-X 【1971,1972】

ツインキャブと豪華装備を備えた “ゴールドバッジ”

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人気のスカイラインに加わったゴールドバッジ

 1971年9月、人気モデルのスカイライン2000GTハードトップに新たな個性が加わった。スポーティにしてラグジュアリーな2000GT-Xである。当時スカイラインは、勇者“赤バッジ”のGT-Rがサーキットを席巻。スポーツモデル王者の地位をがっちりと掴んでいた。同時にL20型直列6気筒ユニットを積んだ“青バッジ”の 2000GTによって快適な上級ツーリングカーとしてもユーザーの心を鷲づかみにしていた。新しく仲間に加わった“ゴールドバッジ”のGT-Xは、2000GTの魅力を走りと装備の両面で磨き上げたハイグレードモデルだった。

 GT-Xの特徴は、まずパワーユニットにあった。SU型キャブレターを2連装したハイパーワー仕様のL20型エンジンを採用したのだ。GT-XのL20型は9.5の圧縮比から通常のGTを10ps/0.5kg・m上回る130ps/6000rpm、17.5kg・m/4400rpmを発生し、馬力当たり荷重8.4kg/psを誇った。シングルキャブ仕様だったGTとはとくに高回転域のパワーの伸びが違い、走りは一段と俊敏に変化していた。

数々の豪華装備で快適性を計算

 GT-Xは4速マニュアルと3速オートマチックに加え、5速マニュアルミッションが選べることも魅力だった。当時5速マニュアルはGT-Rなどスーパースポーツモデルのみが搭載するマニア垂涎のトランスミッションだったからだ。5速化によってエンジン出力を一段と的確に引き出せるようになり、ハイウェイはもちろんワインディングロードでもGT-Xのアップテンポな走りに大いに貢献した。GT-Xのパフォーマンスは、スーパーなGT-Rと、ややジェントルだったGTのほぼ中間。GT-Rほどではないがスポーツ派ドライバーを満足させるのに十分な“パワーエリート”のレベルに達していた。カタログ上のトップスピードは175km/h(ATは170km/h)である。

 GT-Xは装備も特別だった。シートやドアトリムは専用の豪華なファブリック張り。ブルーとホワイトのボディカラーを選ぶと上品なタンカラーでコーディネートされた。スポーツ=ブラックのイメージが浸透していた当時、タンカラーでコーディネートしたGT-Xの華やかさは眩しいほどだった。しかも8トラック式のカセットオーディオ、パワーウィンドーも標準だった。専用クーラーこそオプションだったものの、まさにフル装備だったのだ。エクステリアもダブルリボン式のタイヤやブラック仕上げのホイールカバーなど、細かな部分を洗練させ、特別なモデルであることをアピールした。

GT-Xはグランドツーリングカーの理想形

 グランドツーリングカー(GTカー)の本質は、長距離をハイスピードで快適にこなせることにある。究極のグランドツーリングカーを名乗るには、パフォーマンスも快適性も最高を目指す必要があるのだ。速さのためになにかを犠牲にすることも厭わないスポーツカーとの違いはそこだ。スカイラインGT-Xはその点で一切の妥協がなかった。上質で華やかなコクピットに身を落ち着け、快適装備にかこまれて130psのツインキャブパワーをフルに解き放つとき、GT-Xのオーナーはグランドツーリングの神髄を感じ取ったに違いない。GT-Xの味わいはそれまでの国産車にはないものだった。高級スペシャルティカーという新ジャンルは、スカイライン2000GT-Xが切り開いたのである。

 当初ハードトップだけに設定されたGT-Xグレードは、1972年3月にセダンにも設定されスカイラインの新たな個性として完全に定着した。エンジンやスペシャル装備はセダンのGT-Xもハードトップと同様だったが、セダンにはパワーウィンドーがアクセサリーリストから外されていた。当時はまだ配線の問題があったのに違いない。

新たな個性を表現した新聞広告

 3代目は“愛のスカイライン”をテーマにした斬新な広告展開で高い人気を築き上げたが、その中でGT-Xの広告表現はやや異質だった。通常のシリーズ広告は「日曜日、裸足になってみませんか」、「風の音。枯葉のフル素晴らしき11月」などのキャッチコピーとともに美しい風景の中に佇むスカイラインの写真を掲載、スカイラインとのクルマの旅へ誘う構成だった。

 しかしGT-Xは「フィーリングからソールへ、あのGTにXがついた。ただ今、極限の登場」というキャッチとともにスタイリング写真とXの文字を大きく配置、ハードな印象に仕上げていたのだ。一連のイメージ主導ではなく、クルマ寄りの広告になっていた。1972年3月に追加された4ドア版の広告も同様で、「精悍4ドア」をメインキャッチとスタイリング写真で構成していた。GT-Xが従来までの2000GTとは別の個性の持ち主であることを広告表現でも大切にしたのである。