セドリック430 【1979,1980,1981,1982,1983】
国産初のターボを設定したフラッグシップ
高級サルーン、セドリックは、1979年6月にフルモデルチェンジを受けて第4世代に進化した。1971年からグロリアとボディを共用するようになってからは2世代目のモデルとなる。
スタイリングは全面刷新され、斬新な直線を基調としたシャープなものとなった。ボディバリエーションは大きく変更を受け、2ドアハートップは消滅。スタイリッシュでしかもユーティリティにも優れた4ドアハードトップがトップレンジとなり、4ドアセダンとワゴン、バンでラインアップを構成した。
サスペンションも新世代に移行。4ドアハードトップとセダンの後輪サスペンションは縦置き半楕円リーフスプリングからコイルスプリングを使った5リンク式とされた。また、伝統のL型エンジンには、一部の上級モデルにコンピューターによる集中制御システムが採用している。
スタイリングは伸びやかな印象にまとめる。フルモノコックボディを持つ4ドアセダンと4ドアハードトップはCピラーに小さなウィンドウを持った6ライト構成。サイド・ウィンドウは2次曲面を持ち、室内空間の拡大に寄与していた。前後ウィンドウの傾斜は強く、空力的にも優れたスタイルとなっている。外観にはグリルやサイドモールディング、バンパーなどクロムメッキの部品が多く、伝統の高級車イメージを継承していた。雰囲気としてはどことなく、同時代のアメリカ車に近い。
室内のデザインや装備は、トヨタ・クラウンと市場を2分しているモデルだけに豪華そのもの。外観と同様に直線を基調とした造形となっていた。上級グレードのシートは前後ともモケット張りで、前席には電動パワー機構が付く。上級車はフルオートマチック・エアーコンディショナー、電子チューナーラジオ、パワーステアリングなどが標準装備であり、アンチロック・ブレーキ・システム(ABS)、ドライブコンピューターやTVチューナーなどオプション装備も数多く用意された。
搭載されるエンジンは直列6気筒ガソリン仕様が3種、直列4気筒ディーゼル仕様が2種ある。ガソリンは自家用および法人向け、ディーゼルはタクシーや商用車向けと想定された。
トップグレードの280Eブロアムに搭載されるのは、排気量2753㏄のL28型、直列6気筒OHCで電子制御燃料噴射装置と8.3の圧縮比から145ps/5200rpmの最高出力と23.0kg・m/4000rpmの最大トルクを発揮する。トランスミッションは3速オートマチックでセレクターレバーはセンターコンソールに置かれる。ブレーキは280Eブロアムに限って前後ディスクとなり、前ブレーキはベンチレーテッド・タイプだった。高級な高性能車だけに、強力なブレーキは必要不可欠なものだ。価格は200スタンダードの120万6000円から4ドアハードトップ280Eブロアムの285万円と同一車種とはいえ大きな幅を持っていた。
第4世代のセドリックは、1979年10月に直列6気筒のLD28型ディーゼル・エンジンを搭載した280Dシリーズ、同年12月にはL20E型エンジンにターボチャージャーを装着した2000ターボ・シリーズを加えバリエーションを拡大していく。それに伴い人気も上昇しユーザーから熱い視線を集めた。とくにターボモデルの人気は別格だった。
ターボは、排気ガスのエネルギーを利用して、エンジン内により多くの空気を加圧供給し、エンジン出力を増大させる装置。排気ガス対策にひと息ついた当時の自動車メーカー各社は、パワーアップの切り札として鋭意開発に没頭し、日産がその実用化に先鞭をつけた。
排気量1998ccのL20ET型の最高出力は145ps/5600rpm、最大トルク21.0kg・m/3200rpm。ベースとなったL20Eと比較して出力で15ps、トルクは4kg・mもの増強だった。ターボパワーは確かに圧倒的で、大柄なセドリックをぐいぐいと加速させ、スポーツモデルに匹敵する俊足を披露した。
ターボの効果が明確になるのは3000rpm以上。低回転域では標準仕様よりむしろ鈍い印象だったが、圧倒的なターボパワーを体感するとそれも些細な欠点に思えた。ちなみに国産初のターボモデルがスカイラインなどのスポーティモデルではなく、フォーマルなセドリックになったのは、当時の通産省の指導があったからだと言われている。刺激的なパワーを持つターボだけに導入に慎重さを求めたのだ。確かにセドリック・ターボの誕生以降、各メーカーからターボ仕様が続々と生まれ、壮絶なパワーウォーズが勃発する。通産省の指導はひとつの見識と言えた。