117クーペ(後期型) 【1977,1978,1979,1980,1981】

角型ヘッドライトで一新したスペシャルティ

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高度化するユーザー需要への対応

 段階的に厳しくなっていった排出ガス規制に対し、一定の目処がついた1970年代終盤の日本の自動車市場。いすゞ自動車は、フラッグシップモデルである117クーペの改良を着々と推し進めていた。マイナーチェンジの主要テーマは「成熟と充実」。より高度化するユーザーの要求性能に対し、117クーペならではのキャラクターを踏まえながら内外装とメカニズムの入念な進化を図ろうとしたのである。

 スタイリングに関しては、ヘッドライトのデザインを角型4灯に変更したことが最大のトピックとなる。また、バンパーは頂部だけにクロームメッキを施したプロテクテッドラバーバンパーを採用し、同時にフロントのウィンカーランプをバンパー内に埋め込んだ。ほかにも、フェアリングロアーと称するエアダムや新デザインのホイールが装着される。

メカニズムの熟成で上質な走りを実現

 搭載エンジンはG180型1817cc直列4気筒のDOHC版(130ps)とOHC版(ECGI仕様115ps/キャブレター仕様105ps)を用意する。排出ガス浄化装置として、EGR(排気ガス再循環装置)や2次空気供給、酸化触媒も装着された。また、排気干渉の抑制や点火進角の改良などにより、低中速トルクのアップを図る。前ダブルウィッシュボーン/後トルクロッド付き縦置半楕円リーフの足回りは基本的に従来と同形式だが、各部のチューニング変更により乗り心地と直進・旋回安定性の向上を達成した。

 インテリアについては、集中ウオーニングシステムの採用によるインパネの意匠変更やスイッチ類の操作性の向上、シート地の変更および前席のフルリクライニング化などを実施する。また、空調にはエアミックスタイプのエアコンを新採用。ステアリング機構には、パワーアシストも組み込まれた。

年間1万7000台の好調な販売セールス達成

 大幅な改良を図った117クーペは、1977年11月に市場デビューを果たす。車種展開では、DOHCエンジン+5速MTを組み込んだスポーティモデルのXG、最上級グレードのXE並の内装を設定した装備充実のXT-L、再登場したXEの5速MT仕様などが注目を集めた。

 市場に放たれた改良版の117クーペは、スタイリッシュな内外装や熟成された走りが好評を博し、従来モデルよりも販売台数を上昇させる。結果的に生産された台数は、1年間で1万7000台超を達成した。

排気量をアップした最終モデル

 117クーペの進化はさらに続く。1978年12月にはフルトランジスター点火方式を採用したG200型1949cc直列4気筒エンジンを積む“★★(スター)シリーズ”を設定。G200型ユニットはDOHC版(135ps)とOHC版(ECGI仕様120ps/キャブレター仕様115ps)をラインアップし、昭和53年排出ガス規制もクリアしていた。また、上位グレードの一部には4輪ディスクブレーキやヘッドランプウオッシャーを新たに採用する。

 1979年12月になると、117クーペ最後のマイナーチェンジが実施される。最大のトピックは“ジウジアーロ・カスタム”とディーゼル仕様の設定で、前車は117クーペのデザインを手がけたジョルジエット・ジウジアーロが内外装のカスタムを、後車は改良版のC223型2238cc直4渦流室式ディーゼルエンジン(73ps)を搭載したモデルだった。また、この時のマイナーチェンジでは装備の充実化も敢行。上位グレードにはスライド&チルト式サンルーフやシートのランバーサポートを採用し、スポーティモデルのXGには減衰力可変式ダンパーやLSDを組み込んだ。

 毎年に渡って様々な改良が行われた117クーペ。しかし、他メーカーから斬新で高性能な高級スペシャルティカーが発売された1980年代初頭になると、販売成績は急速に落ち始める。結果的にいすゞ自動車は、最後に限定モデルのXEリミテッドやXCリミテッドをリリースして117クーペの生産を終了。後継を担ったのは、1981年5月に発表(発売は同年6月)され、117クーペと同様にジウジアーロが基本デザインを手がけたJR130型系ピアッツァだった。