マークII 【1984,1985,1986,1987,1988】

機能とデザインを磨き込んだ超人気“ハイソカー”

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開発エンジニアの熱気が実感できた5代目

 1980年代の国産車は、新型にモデルチェンジするたびにスタイリングだけでなくメカニズムも長足の進歩を遂げた。開発エンジニアの熱意、世界の頂点を目指した積極的な技術革新が具体的なカタチで実感できたのである。1984年8月に登場した5代目のマークIIは、その代表モデルだった。

 5代目マークIIは、兄弟車のチェイサー、クレスタとともに新世代に移行した。3車のうち4ドアハードトップ、4ドアセダン、バン&ワゴン(11月に遅れて登場)などの多くのボディタイプを設定していたのはマークIIのみ。チェイサーは4ドアハードトップ、クレスタは4ドアセダンのそれぞれ1種だった。兄弟車とはいっても伝統あるマークIIがあくまで主役だったのである。

時代をリードした電子制御の足回り!

 “時代をリードする高級・高性能サルーン”を開発コンセプトに掲げた5代目の進化ポイントは、走りを支えるフットワーク面だった。新型は足回りを全面的に新設計とし、前後ともにトレッドをワイド化すると同時に6気筒エンジン搭載モデルではフロントがストラット式、リアがセミトレーリングアーム式の4輪独立サスペンションを与えた。

 4輪独立サスペンションの形式そのものは先代と同様だったが、ジオメトリー設定や各アーム類などをゼロから見直した新開発の足回りで、上級モデルでは走行状況に応じてダンパーの減衰力を3段階にマイコン制御するTEMS(トヨタ電子制御サスペンション)を組み込んでいた。さらにラック&ピニオン式に進化したステアリングは、2モード・プログレッシブ・パワーステアリング機構付きである。これは操舵力を車速に応じて連続的に制御し、走行パターン(通常走行/スポーツ走行)に応じた最適な操舵力が選べる機構だった。

走りは逞しく変身。エンジンも新世代

 滑りやすい路面でのロックを防ぐ4輪ESC(4輪エレクトロニック・スキッドコントロール)を含め、マークIIのフットワークは電子制御メカニズムの積極採用でハイレベルに仕上げられていた。従来マークIIのフットワーク性能は、スカイラインなどのライバル車と比較して見劣りする部分だった。乗り心地などの快適性面ではスカイラインを凌駕していたが、ワインディングロードや超高速域の安定性がいまひとつだったのだ。しかし5代目は違った。フットワークは明らかに逞しくなっており、しかも従来からの美点である快適性にも磨きがかかっていた。

 エンジンも新世代に移行する。とくに主力となる6気筒エンジンの充実が光った。パワーだけでなく燃費や環境性能を含めた新世代エンジンであることを示す“レーザーα”を名乗った直列6気筒DOHC24Vの1G-GEU型ユニット(160ps)が新登場するとともに、定評ある直列6気筒SOHC12Vの1G-EU型(130ps)にも大幅改良を施したのだ。

 新世代の6気筒エンジンは、スムーズな変速フィールを持つ4速オートマチックとの相性が抜群で、DOHC仕様、SOHC仕様ともにシルキーかつ力強いパフォーマンスを実現した。走りだけでなく実用燃費にも優れていたのもポイントで、この点でもスカイラインなどのライバルに大差を付けた。

ハイレベルな快適性は“ハイソカー”代表

 もともとマークIIの大きな魅力だった豪華な装備群も進化していた。セラミック発熱体によりステアリングコラムの左右吹き出し口から温風を吹き出し、手元を温める世界初のクイック・ハンドウォーマーをオプション設定するとともに、オートエアコンを幅広いグレードに標準装備化。パワーウィンドー、集中ドアロック、高音質カーオーディオなど高級車に相応しい快適装備群もほとんどのグレードで標準装備となっていた。さらに上級グレードが採用した、ルーズクッションタイプのスーパーラグジュアリーシートは兄貴分のクラウンにもひけを取らない豪華さを感じさせた。

 5代目マークIIは、優れた走りと快適性、そして豪華な装備により幅広い年齢層から支持を集め、特別な人気モデルに成長する。なかでも若者からは“ハイソカー”の代表と認知され、マークIIに乗ることがひとつのステータスとなった。5代目マークIIは現在のBMW、メルセデス・ベンツ以上に周囲から羨望を集めるクルマだったのである。