ミニカ 【1984,1985,1986,1987,1988】

FFに大変身!すべてを一新したフレッシュミニカ

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FF化ですべてを一新した新型の登場

 1984年2月、三菱のロワーレンジを支える伝統のミニカが6年8ヵ月ぶりにフルモデルチェンジした。従来のオーソドックスなFRレイアウトからスペース効率に優れたFFレイアウトに一新、文字通りのフルチェンジを実施したのだ。ネーミングも5ドアで乗用車登録のミニカは従来のアミLのサブネームが廃止され本来のミニカに戻った。3ドアで4ナンバー登録のボンバン仕様はミニカ・エコノの名をそのまま継承する。

 スズキ・アルト&フロンテや、ダイハツ・ミラ&クオーレ、スバル・レックス・コンビなどライバルが続々とFF化し、リッターカーに匹敵する広い室内空間を獲得するなか、FRレイアウトを守る従来のミニカ・シリーズは室内の広さではっきりと見劣りした。前席の快適性はクラス平均になんとか到達していたものの、後席はあくまで補助席レベル。パワフルなターボや、自然な操縦フィールなど従来のミニカ・シリーズは数々の美点を持っていたが、旧態化した印象は否めなかった。新型はそのイメージを180度変革し、一挙にクラストップの新鮮なモデルに躍り出る。

斬新なスタイリングと広い室内空間の見事な融合

 まずスタイリングが斬新だった。伸びやかな直線を基調にしたスタイリングは、クリーンでしかもモダンな印象を訴求した。2260mmのロングホイールベースとボディ四隅に配置したタイヤが安定感を、そして1420mmの高めの全高と広いグラスエリアが開放感を巧みに表現した。しかも角型ヘッドランプを配置したフロントマスクはキリリと引き締まっており三菱車らしいスポーティな表情を持っていた。

 空力特性もハイレベルだった。メーカーでは公言していないが、デザインの高い完成度を考えると社外のデザイナーが手掛けた可能性が高い。
 新型の魅力は、斬新なスタイリングの内側にクラストップ級の広い室内空間を確保していたことだった。とくに乗用車登録のミニカの室内長は1715mmに達し、高めのシートポジションとも相まって開放感は満点。感覚的にはリッターカーを凌ぐほどのレベルに達していた。

 上面をトレイ状に仕上げたインスツルメントパネルも広々としたイメージを盛り上げるのに効果的だった。しかもミニカのボディ形式はリアゲートを備えた5ドア。通常は後席への乗降性に優れたセダンとして使え、後席を折り畳むとワゴン並みのユーティリティを発揮した。2ドア+ガラスハッチだったFR時代の先代ミニカとは比較できないほど進化していたのはもちろん、ライバルに対しても大きなアドバンテージを持っていた。

エンジンの改良で優れた静粛性も獲得

 メカニズムも意欲的だった。ステアリングはシャープな印象のラック&ピニオン式に一新し、リアサスペンションもトレーリングアームとパナールロッドを持つ3リンク式に進化していた。心臓部となるエンジンは、形式こそG23B型系と従来と共通だが、各部をリファインした「バルカンII」を名乗る新世代である。

 直列2気筒OHCの基本構造を持ち、546ccの排気量から標準のキャブレター仕様で33ps/6000rpm、4.4kg・m/3500rpm、パワフルなターボ仕様で42ps/6000rpm、5.8kg・m/3500rpmを発揮した。どちらも実用域のトルクを太くしたチューニングが施され、60km/h走行時で騒音を65dBに抑えるなど静粛性もハイレベルだった。トランスミッションは4速と5速マニュアルに加え、2速オートマチックを設定し、扱いやすさにも配慮していた。

 FFに大変身したミニカ&ミニカ・エコノはモデルチェンジがクルマの魅力を鮮明にすることを実証した。軽自動車は厳しい排気量制限&寸法枠のなかで、クルマとしての機能と魅力を磨いた日本の宝物だが、その歴史のなかでも記憶に残る逸材である。

燃費もクラストップ! 満タンで1000km以上走る計算

 FFミニカは燃費もクラストップだった。エンジンノックコントロール機構を搭載したELグレードの60km/h定地燃費は33.6km/L。32L入りの燃料タンクを満タンにすると計算上1075.2kmも走れた。1075.2kmという距離は東京を起点に北に向かうと北海道の倶知安に到達。西なら山口県の下関に相当した。さすがに加減速のある日常走行では、これほどの燃費は望めなかったが、それでも燃費がよかったのは確か。FFミニカはお財布に優しいクルマの筆頭と言えた。

 当時のカタログには税金や任意保険などの3年間の維持費をリッターカーと比較した数値が記載されていたが、それによるとFFミニカの維持費は16万8050円、リッターカーは38万3560円で、なんとFFミニカのほうが22万510円もランニングコストが安いと説明されていた。