ロードスター 【2015,2016,2017,2018】

“原点回帰”。SKYACTIV技術と魂動デザインを採用した第4世代

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マツダは2015年5月にロードスターの全面改良を
実施して第4世代となるND型系を市場に放つ。
軽量スポーツカーへの原点回帰を果たした新型は、
エンジンやミッション、シャシー、ボディなどに
FR用に新設計した先進のSKYACTIV技術を導入。
独自の魂動(こどう)デザインを取り入れて、
誰もが一瞬で心ときめく新世代スポーツカーの
スタイリングを創出したことも訴求点だった。
原点回帰で次期型ロードスターを企画

 マツダ・ロードスター(海外名MX-5)は1989年のデビュー以来、小型オープンスポーツカーの代表として世界中で高い人気を博してきた。一方でクルマとしては、年々高まる安全と環境の対策、さらには快適性への要求などで、本来有する“ライトウェイト”が徐々にスポイルされていた。

この状況に対して4代目ロードスターの開発チームは、初代のNA型の特長である軽量スポーツの特性の復活を計画。いわゆる原点回帰の路線を実施したうえで、最新技術と創意工夫によって先進のライトウェイトオープンスポーツに仕立てる旨を目標に掲げた。

 技術面に関しては、後に「SKYACTIV」と称する次世代テクノロジー群でまとめられる。具体的には、高効率を成し遂げた直噴ガソリンエンジンの「SKYACTIV-G」、本体の軽量・コンパクト化と同時に節度感のあるシフトフィールを実現した新世代MTの「SKYACTIV-MT」、基本骨格のストレート化および連続化やマルチロードパス構造などを採用して高剛性と軽量化を両立した「SKYACTIV-BODY」、そして新設計の前ダブルウィッシュボーン/後マルチリンクのサスペンションに電動パワーステアリングなどを組み込んで操縦性と乗り心地を引き上げた「SKYACTIV-CHASSIS」などを、FR用に改良して採用した。

車両デザインについては、マツダの新しいデザインテーマである“魂動(こどう)〜Soul of Motion”を基本に、誰もが一瞬で心ときめき、しかも時を経ても古くならないスタイリングの創出を目指す。インテリアデザインはクルマの内と外の境界を感じさせない、一体感のある造形に仕上げることとした。

ニューヨーク・ショーで「SKYACTIV-CHASSIS」を公開

 当初は2012年ごろに発表する予定だった4代目ロードスター。しかし、外的要因がそれを拒んだ。2008年9月にアメリカの投資銀行のリーマン・ブラザーズが経営破綻したことに端を発する大規模な金融危機、いわゆるリーマン・ショックが勃発したのだ。

この余波を受けてロードスターの主要市場であるアメリカの新車販売台数は急速に落ち込み、マツダも大きな影響を受ける。また、同社と資本提携するフォードの経営状態も逼迫した。最終的にマツダは社内の開発順序の変更を決断。ロードスターは3代目(NC型系)のマイナーチェンジによって延命させる方針を打ち出し、4代目については「2020年を超えても生産されるモデル」として徹底した見直しを図った。

 リーマン・ショックへの対応に一区切りがつき、アメリカの自動車市場も持ち直し始めた2014年、マツダは4月開催のニューヨーク国際自動車ショーの舞台でロードスター(MX-5)の誕生25周年を記念したNC型の「MX-5 Miata 25th Anniversary Edition」を発表する。

この時、次期型ロードスター/MX-5の骨格となる新開発の「SKYACTIV-CHASSIS」を、エンジン付きで初公開した。パワーユニットとファイナルドライブユニットをリジッドに結合する伝統のパワープラントフレーム(PPF)は、アルミ製で仕立てたうえでコの字断面の採用や開口部の拡大などを実施して軽量化と高剛性化を実現。サスペンションはフロントにキャスター角の拡大やキングピンオフセットのネガティブ化、フロントナックルのアルミ化などを行ったダブルウィッシュボーン/コイルを、リアにジオメトリーの最適化などを図った新設計のマルチリンク/コイルをセットしていた。

ファン参加型イベントでの初公開を経て2015年5月に発売

 2014年9月になると、マツダは日本、アメリカ、スペインの3カ国でファン参加型のイベントを催し、新型ロードスター(MX-5)のデザインを初公開する。11月開催のロサンゼルス・ショーではMX-5の車両展示とともに、新世代ガソリンエンジンのSKYACTIV-G1.5および2.0を市場に応じて展開することを発表。2015年1月開催の東京オートサロンには、日本仕様のロードスターを参考出品した。

 小出しで全貌を明らかにしていった新型ロードスターは、2015年3月になるといよいよ先行商談の予約受付が始まる。また同月、宇品第1(U1)工場において生産がスタート。そして5月になって、NDの型式をつけた4代目ロードスターがついに発売を開始した。グレード展開はS/S Special Package/S Leather Packageの3モデルで構成する。

4代目は旧型比100kg軽量化。走りが大幅進化

 ロードスターに搭載するエンジンは、FR用にリファインした直噴ガソリンユニットの「SKYACTIV-G 1.5」P5-VP[RS]型1496cc直列4気筒DOHC16Vユニットで、専用設計のアルミダイキャスト製ヘッドカバーやフルカウンターウェイトのスチール製鍛造クランクシャフト、キャビティ付ピストン、マルチホールインジェクター、軽量フライホイール(MT車)などを組み込む。搭載位置は従来比で15mmの後方化と13mmの下方化を実施。また、4-2-1のエグゾーストマニホールドは脈動効果を重視した等長ストレートタイプとした。

組み合わせるトランスミッションには小型・軽量化を図った「SKYACTIV-MT」の6速MTとドライブセレクションを備えたアクティブマチックの6速ATを用意。ユニットロスを低減したトルクセンシング式スーパーLSDも設定する。

「SKYACTIV-BODY」初となる新設計のオープンボディは、基本骨格を可能な限り直線で構成するストレート化や各部の骨格を協調して機能させる連続フレームワークをベースに、高張力・超高張力鋼板やアルミ材を多用して重量の軽減と剛性のアップを達成した。

操舵機構にはマツダ初のデュアルピニオン式電動パワーステアリングをセットする。パッケージングは従来比で全長を105mm、前オーバーハングを45mm、後オーバーハングを40mm、ホイールベースを20mm短縮し、また全高を10mm、ボンネット高を28mm低減する一方、全幅を15mm、前後トレッドを5mm拡大。車両重量は従来比で100kgあまりも軽くなり、前後重量配分は理想的な50:50に仕立てていた。

 魂動デザインを採用したスタイリングは、低く短いフロントオーバーハングと人を中心に配置したコンパクトなキャビンとで形作る美しいプロポーションや安定感と敏捷さをイメージさせる低くてワイドな台形フォルム、ボディパネルがドアトリム上部まで回り込んでクルマの外と内の境界を感じさせないインテリア造形などが訴求点となる。

専用デザインのパーツも豊富に盛り込み、個性的なマスクを創出するLEDヘッドランプやアルミ製ヘッダーパネルを組み込んでクローズド時のバタつきやフレームの浮き出しを抑えたソフトトップ、走行情報と快適・利便情報を明確に分けたヘッズアップコクピット、ネット素材とウレタンパッドを組み合わせたS-fit構造のシートなどを採用していた。

モータースポーツベース車両の「NR-A」と旗艦グレードの「RS」を追加

 発売1カ月で5000台超えの好調な受注を記録した4代目ロードスターは、デビュー後も積極的に市場への話題を提供していく。まず2015年9月には、パーティレース(ナンバー付車両を使用したワンメイクレース)への参加などサーキット走行を想定し、車高調整機能付ビルシュタイン製ダンパーや大容量ラジエター、大径ブレーキなどを採用したモータースポーツベース車両の「NR-A」を発表(発売は10月)。

翌10月には、ビルシュタイン製ダンパーや大径ブレーキ、フロントサスタワーバーなどで足回り強化し、同時にレカロ社と共同開発したバケットシートやエンジンの吸気脈動を躍動的な音に増幅するインダクションサウンドエンハンサーといったスポーツアイテムを組み込んだ「RS」をリリースした。

 2016年1月開催の東京オートサロンでは、ロードスターの海外仕様であるMX-5を使ったワンメイクレースの「GLOBAL MX-5 CUP」で走らせるCUPカーを参考出品した。

リトラクタブルハードトップを進化させた「RF」の登場

 2016年3月になると、ニューヨーク国際自動車ショーの舞台でリトラクタブルハードトップ(RHT)の実質的な後継モデルとなる「MX-5 RF」を発表する。車名のRはリトラクタブル、Fはファストバックを意味。その名の通り、ルーフからリアエンドまでなだらかに傾斜したルーフラインを特長とするファストバックスタイル、そして独自のリアルーフ形状と開閉できるバックウィンドウによる新しいオープンエア感覚を実現した。電動ルーフ自体は、10km/h以下での走行中開閉を可能とするフル電動式へと刷新。

また、限られたスペースにコンパクトかつ効率的に収納できる構造とし、ソフトトップモデルと同じ荷室容量を確保する。搭載エンジンはソフトトップ仕様と同様、ガソリンエンジンのSKYACTIV-G 1.5とSKYACTIV-G 2.0を市場ごとにラインアップした。

 ライトウェイトスポーツへと原点回帰し、しかも最新の安全性能と環境性能を満たしながら走る歓びを創出した4代目ロードスター。未来の名車になる素質を存分に備えた世界屈指のスポーツカーは、進化の歩みをさらに続けていったのである。

COLUMN
ロードスターの基本コンポーネントを使ってフィアットが124スパイダーを復活!
 マツダは2012年5月にフィアットグループオートモービルズとの協業プログラムを発表する。その内容は、次期型のマツダ・ロードスター(MX-5)のFRアーキテクチャをベースに、マツダおよびフィアット傘下のアルファロメオ向けのオープン2シータースポーツカーの開発・生産に向けた協議を開始するということだった。 翌2013年1月には、事業契約を締結。アルファロメオ向けオープン2シータースポーツカーの生産を2015年よりマツダの本社工場で行い、また内外装やエンジンに関しては各ブランドのオリジナルで仕立てる計画を打ち出した。その後、フィアットグループはアルファロメオのブランド再構築を画策し、よりプレミアム性を強調する方針に転換。マツダと協業するオープン2シータースポーツカーはフィアットおよびアバルトのブランドに引き継がれ、2015年になって往年のオープンスポーツの車名を冠した「フィアット124スパイダー」としてワールドプレミアを飾ったのである。 ちなみに124スパイダーは、本国トリノのデザインセンターで手がけた内外装にオリジナルの1.4L マルチエア4気筒ターボエンジンを採用していた。