シボレー・コルベット・スティングレイ 【1963,1964,1965,1966,1967】

“赤エイ”のサブネームを授かった第2世代

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アメリカ初の本格スポーツカーの登場

 「Nation on wheels(車輪の上に造られた国家)」とは、自動車王国であったアメリカを言い表した言葉である。フォードが1908年に売り出したT型以来、アメリカはクルマ抜きには語れない国となった。しかし、世界で最大の生産量を誇っていたアメリカがクルマに求めたのは、実用性と豪華さだった。スポーツカーに対しての理解は浅く、第二次世界大戦後になってさえも、自国製のスポーツカーを持つことはなかった。

 そんなアメリカに、本格スポーツカーを標榜して登場したクルマがあった。シボレー・コルベットである。最初のモデルはC1と呼ばれ、1954年から1962年までに6万9015台が生産されている。決して多くはないが、アメリカ初のスペシャルなモデルとしては成功したといえる。C1コルベットは、日本でも人気が高かったTVドラマ『ルート66』に使われたことでも知られる。

 1950年代半ばまで、アメリカはヨーロッパ製のスポーツカーを輸入することで間に合わせていた。この時期、とくに英国製のスポーツカーが大挙してアメリカに流れ込む。ジャガー、MG、オースチン・ヒーレー、AC、トライアンフなどなど、大小様々なスポーツカーがアメリカへ渡り、スポーツカーは一大ムーブメントとなった。こうなると、アメリカ側でもオリジナルのアメリカ製スポーツカーを欲しくなるのは、アメリカの国民性からすれば至極当然のことだった。コルベットが生まれるバックグラウンドは、出来上がっていた。

アメリカ人のためのスポーツカー、コルベットの誕生

 1953年のニューヨーク・オートショーに、GMは新しいコンセプトモデルを展示した。コルベットと名づけられたそのモデルは、強化プラスチック(FRP)製ボディを持ったオープン2シーターという進歩的なものだった。企画したのは、自らもル・マン24時間レースに出場した経験をもつゾラ・A・ダントフで、このコンセプトモデルこそコルベットのプロトタイプだった。

 1954年から本格生産に移されたコルベットは、「自国製のスポーツカーを!」という熱狂的なファンに後押しされ、1955年末までに4640台が販売された。全くの新型車、それもあまり実用性の無いスポーツカーとしては好調な滑り出しであった。このコルベットに刺激される形で、フォードは急遽サンダーバードという、やはりオープン2シーターのモデルを発表する。

スポーツカー路線を貫いた2代目

 コルベットはライバルであったサンダーバードが1957年以降、4シーターのパーソナルカーへと転身したにも関わらず、スポーツカー路線を堅持する。そして、1962年にC2型“スティングレイ(Sting Ray=赤エイ)”へと進化した。C2はエアコンディショナーも装備できる2シータークーペを用意しており、ロードスターともども速く、快適なアメリカンスポーツに成長していた。

 スタイリングは、当時GMのチーフデザイナーであったビル・ミッチェルによるもの。ミッチェルは個人的なプロジェクトのひとつとして、1950年代末ごろにはスティングレイ・レーサーと呼ぶマシンを開発しており、量産型スティングレイのスタイリングは、このスティングレイ・レーサーが直接的なベースとなった。また、細部のデザインには、日系人デザイナーのラリー・シノダも深く関わっていた。

 ボディ構成は閉断面のスチール製ラダーフレームに強化プラスチック(FRP)製ボディを組み合わせるコルベット伝統手法。ほとんどコンセプトモデルそのままといえるスタイリングは、当時のアメリカ人の多くが抱いていたスポーツカーのイメージを具体化したもの。また、4灯式ヘッドライトは電気モーターで2個一組のユニットを90度回転し、使わないときは存在を隠していた。フロントのバンパーはクロムメッキされたスチール製で、左右2分割。ボンネット中央部のパワーバルジやエンジンルームの熱気抜きルーバーが、レーシーな雰囲気を盛り上げた。

パワーユニットはV8標準装備

 ダッシュボードは左右対称のアーチ型で、運転席側には速度計やエンジン回転計、水温計、油圧計、油温計、燃料残量計を配置。センターコンソールには時計と縦型配置のラジオがあり、シフトレバーは運転席に近い場所に置かれていた。

 C2から、エンジンはようやくV型8気筒が標準となった。1963年のデビュー当時では、排気量5359cc(327cu.in)・V 8 OHV(最高出力250hp/4400rpm)が基本とされ、オプションで300hp/5000rpm仕様などが用意された。トランスミッションは3速/4速マニュアルおよび2速オートマチックがあった。サスペンションは前が不等長ダブルウィッシュボーン/コイルスプリング、後がトレーリングアーム/横置きリーフスプリングで、この方式はコルベットの伝統的なサスペンション形式として、最近まで改良を加えながら使われていた。

 ブレーキは4輪ドラムだが、1965年モデル以降は4輪ディスクブレーキとなる。最高速度はエンジン仕様により異なり、172〜250km/hを発揮した。
 コルベット・スティングレイは、1963年度で2万1513台の販売を記録した。アメリカ車では記念碑的なモデルのひとつである。