ミニカ 【1989,1990,1001,1992,1993】
ラウンディッシュなボディに身を包んだ都会派ミニ
三菱自動車初の軽乗用車として、1962年10月に発売されたのがミニカ(Minica)である。車名のミニカは、英語で超小型車を意味している「Mini Car」あるいは「Miniature Car」を短縮した造語だった。初代のミニカは、1961年に発売された軽ボンネット・バンの三菱360をベースに4人乗り乗用車としたモデルだ。直線基調のスタイルと当時の軽自動車では最大容量の独立したトランクを持ち、フロントエンジン、リアドライブ方式を採用するなどした本格的な作りで人気を博し、月販台数800台を記録する大ヒットとなった。
ミニカはその後代を重ね、リッター当たりの比出力で100psを超える最高出力38psの水冷2ストローク2気筒エンジンを搭載したGSSやクーペモデル(スキッパーなど)を生み出して行く。さらに、排気ガス浄化規制の強化に伴うエンジン排気量の拡大への対応は素早く、550cc枠となった1976年1月から4か月後には排気量を471ccとしたミニカ5を登場させている。
日本独特のジャンルとなった軽自動車の歴史は、安全性の向上と装備の充実に伴う車両重量の増加とエンジン性能向上への戦いの歴史であったと言って良い。時代とともにクルマに求められる要素は増え続けるが、一方でエンジンの排気量は制限されており、さらに排気ガス浄化規制の強化などで性能的にはきわめて苦しい状況に至ることになる。そこで、性能向上の切り札として登場したのが排気ガスを利用して、ハイパワーを得るターボチャージャーである。ミニカは、1983年3月に軽自動車としては初めてとなるターボチャージャーを導入、リッターカー並みの出力を実現。その後、軽自動車メーカー間のハイパワー化競争が激化した。
1989年1月にデビューした第6世代のミニカは、角の取れた丸味を生かしたスタイリングとなり、見た目もスマートになった。ボディバリエーションは5ドアハッチバックセダン、右側一枚、左側2枚の変則的なドア配置とした4ドアハッチバック仕様、オーソドックスな3ドアハッチバック仕様の3種があった。この他、全車種で選択可能なフルタイム4輪駆動システム(当初はパートタイム式4輪駆動)を持ったモデルや「ダンガン」と名付けられた高性能仕様車も揃えられていた。
主力エンジンは標準型では排気量548ccの水冷直列3気筒(SOHC、出力32ps/6500rpm)だったが、高性能仕様の「ダンガン」に装備されるものではシリンダーヘッドをDOHCの15バルブとし、インタークーラー付きターボチャージャーを装備して、出力は64ps/7500rpmを発揮した。これで車重が620kgだったのだから、単純なパワー/ウェイトレシオでは、9.7kg/psとなり、通常のリッターカーなどよりも優れた値となった。価格はアルミホイールやエアロパーツなどを標準装備しながら115万円前後と安価(軽自動車としては決して安価ではないが)だったから、高い人気を獲得した。1990年に軽自動車の排気量の上限が660cc拡大されるが、元々ハイスペックの「ダンガン」だけは548ccのままで数ヶ月間売られていた。
ミニカの標準シリーズは女性ユーザーを意識した快適装備の数々を標準装備していた。電動パワーステアリング、ワンタッチ式パワーウィンドー、エアコン、電子チューナー式オーディオなどはもちろん、上級グレードにはクラス初のパワーシートまで装備する。パワーシートはスイッチひとつでシートが最後端までスライドし、スマートな乗り降りを助けるとともに、メモリー機能の設定でもとの位置に戻すのも自在だった。毎日の生活を気持ちよくサポートするミニカの快適装備群は、確かに気が利いていた。
商用車であるバンをベースにしたモデルから始まった三菱製軽乗用車は、先進技術の採用や時代の要求を巧みに現実化することなどの地道な開発で確実にシェアを拡げることに成功していた。ミニカは、日本の軽自動車を代表する1台なのである。