カリーナ 【1996,1997,1998,1999,2000,2001】

走りの気持ちよさにこだわった、最後のカリーナ

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伝統のGTを復活させた7代目

 1998年8月に登場した7代目のカリーナは、走りの気持ちよさにこだわったスポーティセダンだった。基本メカニズムは同年1月にデビューしたコロナ・プレミオとオーバーラップするが、かつての“足のいいヤツ”というキャッチコピーを彷彿させるアクティブな魅力を携えていたのである。
 7代目は、先代で一端途絶えたGTグレードが復活した。カリーナは数あるトヨタ車のラインアップのなかでも走りのイメージが鮮明なクルマだった。なかでもパワフルなスポーツツインカム・エンジンを搭載したGTは、実用的なセダンボディと、鮮烈なパフォーマンスが融合した、いわば“羊の皮を被った狼”として独自のポジショニングを構築する。レビン&トレノやセリカで青春時代を謳歌したスポーツ派が選ぶ、こだわりのセダンというキャラクターだったのである。
 とはいえ、1985年に4ドアスペシャルティのカリーナEDがラインアップに加わると、スポーティな色彩はEDに集約され、セダンはしだいに実用的なラインアップに再編された。そしてついに1992年登場の6代目ではセダンからGTグレードが消滅してしまったのだ。しかしカリーナにGTグレードを望む声は根強かった。ドレッシーなカリーナED(EDの場合GTに相当するのはGグレード)だけではなく、ボクシーで実用的なセダンのGTをマニアは望んだのである。

20Vユニットを積むGTはエアロパーツを装着

 待望の復活を遂げたGTのパワーユニットは1気筒当たり吸気3/排気2の5バルブ構成を持つ1587ccの4A-GE型DOHC20Vである。165ps/7800rpm、16.5kg・m/5600rpmのスペックが物語るように高回転域で奔放なパワーを発揮し、VVT(可変バルブタイミング)機構の採用で実用トルクを太らせた新世代のスポーツ心臓である。トランスミッションは5速マニュアルと、電子制御タイプの4速オートマチックの2種から選べた。駆動方式は前2輪駆動のFFである。

 GTは4輪ストラット式の足回りも専用チューンとされ、前後スタビライザーに加え、フロントには剛性を高めるパフォーマンスロッドを追加。リアサスペンションアームのピロボールジョイントも採用していた。専用エアロパーツやスポーツシートなど内外装の演出も巧みに行われ、腕に覚えのスポーツ派にとって格好のモデルに仕上がっていた。

フレッシュで小気味いい走りが7代目の魅力

 7代目カリーナが登場した1998年は、すでにファミリーカーの中心はミニバンに移行していた。トラディショナルな4ドアセダンが存在感を示すには、固有の個性を主張することが求められた。カリーナが選択したのは“スポーティな走り”、その個性はGTに見事に集約されていた。販売の主力モデルは、燃費に優れたリーンバーン方式の1762ccの7A-FE型ユニット(115ps/15.8kg・m)や、ベーシックな1498ccの5A-FE型(100ps/14.0kg・m)ユニットを搭載したSiやTiといったモデルだったが、GTの存在によって、7代目カリーナは走りの印象を鮮明にしたのだ。
 実際にドライブしても7代目カリーナは軽快で気持ちのいいクルマだった。とくにGTの速さは一級品。エンジンを回すほどに高まる快音でもドライバーを刺激し、ライトウェイトスポーツを操るようなワクワク感が楽しめた。ジェントルなエンジンを搭載したグレードも、適度に固めの足回りとしっかりとしたボディの組み合わせにより小気味いい走りを披露した。兄弟車のコロナ・プレミオとは明らかに性格の違う、アクティブなセダンだったのである。しかし販売は苦戦する。当初6000台に設定された月販目標は、1998年8月のマイナーチェンジで4500台に減らされ、ついには2001年12月に、その座を後継のアリオンに譲り、カリーナとしての生涯を閉じたのである。カリーナの終焉は、時代が求めるセダン像の変化を象徴するものだった。