マークIIワゴン 【1984~1997】

ハイオーナーカーの快適性を持つ上質ワゴン

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アメリカではワゴンはセダンより格上の存在!

 本来の意味でのワゴンは、サルーンの快適性と走りをそのまま継承した上で、広いラゲッジ空間を確保した上質な乗り物である。アメリカでは古くからワゴンはセダンよりも上位に位置するモデルとして認知されていた。しかし日本ではセダン派生の商用カーゴモデルであるライトバンがいち早く人気を獲得したこともあり、ワゴンはライトバンの一種、セダンより格下と見なされていた。

 ワゴンが独自のプレゼンスを得るのは1990年代以降のことだ。とはいえ、ユーティリティの側面から判断すると、サルーンの快適性と走り、さらに広いラゲッジ空間を実現したワゴンは理想的な存在である。クルマをステータスの表現としてではなく、ライフスタイルを広げるツールと考える先進的なユーザーにとって、ベストと言える存在なのだ。日本でも少数ではあるがワゴンの価値を認め、積極的にプライベートカーとしてワゴンを選ぶ層が古くから存在した。そんなユーザーに高い評価を得たのが、今回の主役であるマークIIワゴンである。

国際車のマークIIが必要とした本格派のワゴン

 ハイオーナーカーとして1968年にデビューしたマークII(当初はコロナ・マークII)には初代からワゴンが存在した。マークIIは、日本国内だけでなくアメリカにも輸出されるワールドカーだったため、ワゴンの作りは本格的だった。伸びやかなルーフラインを持つスタイリングをはじめ、セダンと同等の充実した装備、パワフルなエンジンがもたらす余裕の走りなど、ハイオーナーカーであるマークIIの美点をすべて継承していた。1984年11月に、セダン&ハードトップから3ヵ月遅れて登場した5代目のモデルも同様だった。

 5代目のワゴンはLGグレードの1車種で、エンジンは電子制御インジェクションを組み合わせた1988ccの直列6気筒OHC(130ps/17.5kg・m)を搭載。トランスミッションは5速マニュアルと、OD付き4速ATが選べた。足回りはセダンと共通のフロントがストラット式、リアが4リンク式で、前後ともにコイルばねを採用する。

 ワゴンと同時にラインアップに加わったライトバンは、足回りこそ共通仕様だったものの、パワーユニットは1812ccの直列4気筒OHC(95ps/15.5kg・m)と2446ccの直列4気筒ディーゼル(83ps/17kg・m)のみで、滑らかな6気筒エンジンは選べなかった。しかもAT(それも3速仕様)が設定されていたのは、一部グレードだけだった。ライトバンの走りも悪いものではなかったが、ワゴンは別格。マークIIの美点である静粛性、ソフトな乗り心地などが存分に楽しめた。まさにハイオーナーカーの世界を実現していたのだ。

クラウンと同等のプレステージ

 ワゴンのスタイリングは、フロントドア部までがセダンと共通で、ルーフラインをリアまでストレートに延長したスマートな造型。ピラーを細く仕上げ窓面積を広くしたことにより開放的な印象を見る者に与えた。ちなみにボディサイズは全長4680mm×全幅1690mm×全高1475mmで、セダンと比較すると50mm長く、25mm背が高かった。全長の50mm拡大はラゲッジスペース確保のためリアのオーバーハングを延長したため、全高はルーフライン変更の影響である。スタイリングはライトバンと見分けがつかなかったが、それは、ワゴンがライトバン的だったというよりも、ライトバンもワゴンのイメージを持っていた、と表現すべきだろう。マークIIワゴンにはビジネスライクな雰囲気は微塵もなく、クラウンと同等のプレステージを感じさせた。

 装備も充実していた。シート、ドアトリムにはソフトな手触りの高級ファブリックが採用され、時間調節式間欠ワイパー、タコメーター、オートアンテナ、電磁式ドアロック、パワーウィンドーなどを標準装備。リアワイパーも払拭面積の広いツインタイプとしていた。もちろんワゴンとしてのユーティリティも磨きが掛かっており、後席を倒すと1700mmを超えるフラットな空間が出現した。セダンでは積み込むことが不可能な、嵩張るアウトドアグッズや家具なども楽々と収納可能だった。

先進の防音・制振対策を採用

 マークIIはワゴンでも卓越の静粛性を追求する。とくに高速走行時の静粛性を確保するために、定評のサンドイッチ制振パネルや遮音材を各所に採用。エンジンからの透過音や、ダッシュボードから伝わる騒音・振動の侵入を効果的にシャットアウトした。さらにウィンドーとピラーのフラッシュサーフェス処理を徹底することで風切り音も大幅に低減。室内空間が広いワゴンは、静粛性の点でセダンよりも不利なのだが、マークIIはセダンと遜色のない圧倒的な静かさを実現していた。4輪にコイルばねを採用した足回りのソフトなセッティングと相まって、快適性もハイレベル。日本での速度上限となる100km/hまでは、世界で最も静かで快適なクルマの1台に仕上がっていた。

 5代目のマークIIワゴンは、完成度の高い正統派だった。それだけにセダン&ハードトップがモデルチェンジした後も、そのままのカタチでライトバンとともに生産を続行。1997年に生産を終了するまで13年間に渡って愛された。マークIIワゴンは、地味ながら日本にワゴンを根付かせた価値ある存在である。