インサイト 【2009,2010,2011,2012,2013,2014】

優れた環境性能を誇った高効率ハイブリッド5ドア

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プリウスの牙城を切り崩す刺客

 2009年2月、ホンダはハイブリッドシステムを搭載した第2世代となるインサイトを発売した。市場でのハイブリッドモデルとしては、トヨタ プリウスが1997年10月に初代モデルをデビューさせて先行していた。その対抗馬として、ホンダは1999年11月に初代のインサイトを売り出している。アルミを多用した2人乗りのクーペボディ、排気量995㏄の3気筒エンジン、徹底した空気抵抗の低減を図ったスタイリングなど、低燃費達成のためのあらゆる手段を講じた革新的なモデルであった。ホンダとトヨタ両社の将来をかけたハイブリッドシステムをめぐる熾烈な販売合戦が始まったのだ。

 初代のインサイトは、スタイリングや性能的には確かに革新的なクルマではあったが、乗員は2名だけ、荷物も多くは積めないとあって、実用性の面ではあまり一般的なものとはならなかった。さらに、生産コストは通常の小型車の数倍から数十倍にもなり、ホンダは生産を中止せざるを得なかった。それでも、1999年から2006年7月の生産終了までに1万7000台が生産され、多くは海外へ輸出された。日本国内では2300台が販売されたと言う。そして、インサイトの名は、2009年2月に発売された第2世代に受け継がれることになる。

2代目は5ドアボディを採用

 第2世代のインサイトのスタイルは、ひと言で言えば初代のインサイトを5ドアへとストレッチし、より強力なシステムを組み合わせたものと言うことができる。シャープなラインで構成されたスタイリングやリアハッチゲートに付けられた「エクストラウィンドウ」などは初代のイメージを受け継いでいる。空気抵抗は見るからに少なそうで、実測された空気抵抗係数はCd=0.28。奇しくも、そのプロポーションがライバルであるトヨタのプリウスと極めて近いのは面白い。極限まで空気抵抗を減らすと、そのスタイルは似たようなものになってしまうのかもしれない。

 後部座席の空間は決して広くなく、大人が座るにはミニマムとなってしまっている。ボディサイズがライバルのプリウスに比べ、小型であることも影響しているのは間違いない。ホイールベース2550㎜、全長4390㎜、全幅1695㎜、全高1425㎜となっており、プリウスが2003年9月発売の2世代目から3ナンバーサイズであるのに対して、インサイトは5ナンバーサイズに収まっていた。
 駆動方式はフロント横置きのパワーユニットによる前2輪駆動で4輪駆動仕様の設定はない。ボディバリエーションは5ドアハッチバックのみだ。

2種のハイブリッドユニットを設定

 搭載されるエンジンは2種。デビュー当初から設定する排気量1339㏄の直列4気筒SOHC(LDA型、出力88ps/6600rpm)と、2011年に追加となった上級版の排気量1496㏄の直列4気筒SOHC(LEA型、出力111ps/6000rpm)がある。組み合わせる電気モーターは、ホンダの独自開発による薄型DCブラシレスモーター(MF6型、10kw〈14ps相当〉)である。ホンダは、このシステムをIMA(Integrated Motor Assist)と呼んでいる。

 トランスミッションは動力の伝達効率に優れた、ホンダマルチマチックSと名付けられたCVTのみの設定。サスペンションは前がマクファーソンストラット/コイルスプリング、後がリジッドアクスル/コイルスプリング。ブレーキは前ディスク、後ろドラムの組み合わせとなる。

 ハイブリッドシステムの内容は、バッテリーはニッケル水素バッテリーで、一本当たり14.4ボルトのものを7本搭載している。電圧は100.8ボルトと言うことになる。初代のインサイトが1本当たり7.2ボルトのバッテリーを20本搭載していた(144ボルト)ことから比べて、かなりの軽量化である。第ニ世代のインサイトの車両重量は1210㎏となっている。ボディーがスチール製であることを考えれば、軽量化に成功していると言える。

 2012年モデルのグレードは1.3リッターエンジン仕様がGおよびLがあり、1.5リッターエンジン仕様がエクスクルーシブXG、豪華仕様のエクスクルーシブXL、さらにエクスクルーシブXLインターナビセレクト仕様の3つと、都合5つのグレードがあった。

先進の機構を積極的に搭載

 ハイブリッドモデルの特徴のひとつである停車時にエンジンを自動的に停止するオートアイドルストップ機構や走行パターンを変えることのできるエコアシスト(エコロジカル ドライブ アシスト)システムを採用。インスツルメンツに生涯燃費や瞬間燃費をリアルタイムで表示するのはもちろん、エコドライブのレベルをグリーンの木をシンボライズしたパターンで表示させることもでき、ゲーム感覚で他のクルマとホンダ本社にあるコンピューターとのデータ通信を通じて競合することも可能だった(インターナビ セレクト仕様)。このシステムが、東北大震災の時に、通行可能な道路の情報をリアルタイムで表示し、避難誘導に力を発揮した。

 自動車技術と電子技術の極めて高い次元での融合。それがハイブリッドシステムを搭載したクルマだ。それは、ともすると、TVゲームのひとつのようになってしまいかねないのだが、そこは魅力的なクルマづくりに長けたホンダが造るクルマだけに、第2世代のインサイトはクルマとしての魅力を失っていない。ハイブリッドがクルマの主流となると実感させた実力車だった。