日産デザイン4 【1963,1964,1965】

欧州デザインの採用で話題を博した3モデル



ピニンファリーナ・デザインを纏った“青い鳥”

 初代ブルーバードやセドリックなど、造形部が辣腕をふるって描き出した日産自動車の乗用車群。独自デザインは高い人気を博したが、今後の海外市場でのシェア拡大を考えると大幅なデザインのレベルアップが要求された。日本はもちろん、海外でも評価される国際車を生み出すためには−−。最終的に首脳陣は、新型車の車両デザインに欧州デザイナーの起用を決定した。
 まず日産が白羽の矢を立てたのは、イタリアの名カロッツェリアであるピニンファリーナだった。フェラーリやアルファロメオといった数々のブランドの名車を生み出した匠のデザインスタジオに、日産随一の国際商品であるブルーバードの次期型の基本造形を依頼したのである。

 次期型ブルーバードを設計するに当たり、開発陣はまずボディ構造の刷新に着手する。従来のフレーム式から新設計のモノコック式(当時の日産はユニットコントラクションと呼称)に一新したのだ。これによりボディ全体の強度が向上すると同時に、曲げ剛性とねじり剛性のアップや車両重量の軽量化を成し遂げた。新ボディに組み合わされるスタイリングは、既存の国産車とは一線を画したヨーロッパ調(当時は“西欧風”と表現)の滑らかな造形を採用する。ホリゾンタルカットライン(横に切れる線)の重なりで構成したスポーティなスタイリングは、スクエア基調の造形が主流だった当時の国産大衆車のなかにあって異彩を放った。また、高級感あふれるグリルに丸型4灯式のヘッドランプ、グラッシーなガラスエリア、テール下がりのシルエットなども見る者にインパクトを与えた。

 2代目となるブルーバードは、410の型式を冠して1963年9月に発売される。日産が大きな期待を込めて市場に送り出した2代目の青い鳥。しかし、ユーザーの評判は芳しくなかった。最大の要因は皮肉にも大きなコストを費やしたスタイリングで、テール下がりのシルエットが不評だったのである。市場での評判を回復させようと、開発陣は2代目ブルーバードに様々な改良を試みる。1966年4月には内外装を中心にしたマイナーチェンジを実施し、評判の悪かったテール下がりの造形も改めた。

“小公子”もピニンファリーナ・デザインに刷新

 日産とピニンファリーナのコラボレーションは、1台だけでは終わらなかった。高級車のセドリックの次期型についても、ピニンファリーナが基本造形を手がけることになったのである。
 2代目となる新しいセドリックは、1965年10月に130の型式を付けて市場デビューを果たす。スタイリングに関しては、当時の発表資料によると「“流動感”と全体の“融合感”が近年のカーデザインの中心テーマであるが、これを造形化することに主眼に置いた」という。完成した造形は、“フローリングライン”と呼ぶ空力に優れたフォルム。また4680mmのボディ長は当時の中型乗用車クラスのなかで最も長く、一方のボディ高は1455mmと最も低かった。

 中型乗用車市場のシェア復活を目指して、意気揚々と登場した130型系セドリック。しかし、販売成績は思うように伸びなかった。その主要因として挙げられたのが、ブルーバードと同様ピニンファリーナが基本デザインを手がけたスタイリングである。当時の販売スタッフによると「1960年代は押し出しが強くてメッキパーツを多く用いたアメリカ的なルックスがユーザーの好みだった。2代目セドリックの欧州調デザインは上品すぎて、あまり支持されなかった」そうだ。セドリックの造型は、残念ながらユーザーの心を射ることに失敗した。

ゲルツの助言を得ながら完成させた“クリスプカット”

 日産は新たなカテゴリー、具体的には高級クーペの開発を画策する。デザインを手がけるに当たっては、BMW507などを担当して名を馳せていたドイツ人デザイナーのアルブレヒト・フォン・ゲルツに協力を仰いだ。
 ゲルツの助言のもとに、日産の造形部で仕上げられた高級クーペは、当時の先端の流体力学が存分に取り入れられる。空力特性を踏まえ、ボディパネルの継ぎ目を極力廃した上でガラス類には曲面タイプを採用。さらに、鋭角的に削ぎ落とした“クリスプカット”と称するボディラインは、流麗な美しさを醸し出した。また、立体的な横バータイプのグリルや楕円形のリアコンビネーションランプ、2分割されたメッキタイプのリアバンパーなどのディテールにも、デザイナーの高級クーペに対する主張が目一杯に表現された。

 日産のイメージリーダーとなる高級クーペは、まず1964年開催の東京モーターショーの舞台で「ダットサン・クーペ1500」として初披露され、1965年3月になって市販版の「ニッサン・シルビア」が市場に送り出された。また、シルビアは米国ニューヨーク・ショーにも出展され、予想以上の高い評価を受ける。自動車専門誌では、「今年のベター・ルッキングカーのひとつ」と賞賛された。