コルト 【2002〜2013】

日独の“まじめ”が結実したコンパクトカー

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ダイムラー・クライスラーとのアライアンス第1弾

 自動車メーカーの世界的なグループ再編が吹き荒れるなか、三菱自動車は2000年7月にダイムラー・クライスラーと包括的な提携基本契約を締結する。このアライアンスの一環として、通称“Zカー”と称するコンパクトカーの企画が推し進められ、基本骨格となるプラットフォームについては日独共同で開発が行われた。一方、内外装のデザインなどは各メーカーが独自にアレンジ。これを機に、三菱自動車は2000年代向けた新しいデザインアイデンティティの具現化を目指した。

 新しいプラットフォームは衝撃を真っ直ぐ受け止めるストレートフレームを基本とし、ここにエネルギー吸収効率の高い8角断面フロントサイドメンバーなどを加えて高い安全性能を実現する。一方、組み合わせるシャシーも新規に開発。サスペンションはフロントに優れた操縦安定性と路面追従性を成し遂げたマクファーソンストラットを、リアに乗り心地と安定感を重視したコンパクト設計のトーションビームを採用し、前後ともにスタビライザーを装備した。

クリーンなスタイルと高効率エンジンが合体

 スタイリングについては、コンパクトカーの理想を体現したというワンモーションフォルムを創出する。各部の造形にも徹底してこだわり、フロントビューはスリーダイヤモンドマークを中心としたグリルやクリスタル調の立体的なヘッドランプ造形などで個性と先進感を、サイドビューは流れるようなラインで新鮮味と空力性能のよさを、リアビューは縦長のリアコンビネーションランプや厚みのあるバンパーなどで安定感と存在感を表現した。ボディカラーは新色6色を含めた全10タイプを設定。衝突安全強化ボディのRISE(Realized Impact Safety Evolution)も採用した。

 インテリアは、質感と心地よさにこだわって造形を手がける。インパネは伸びやかな面構成と包み込むようなラウンド感をもたせてデザイン。広々とした足下スペースを確保するために、コラム式スマートシフトと足踏み式パーキングブレーキを導入した。面圧分布に重きを置いたシートは、フロントにセパレートタイプとベンチタイプを、リアに左右独立スライドタイプと一体スライドタイプを設定する。仕様としては、明るくクリーンなウォーム内装(ブラウン/ベージュのツートン)とスポーティな雰囲気のクール内装(グレーのモノトーン)をラインアップした。

 肝心の動力源についても、新たに開発する。搭載エンジンはMIVEC(可変バルブタイミング機構)を組み込んだ4G19型1343cc直4DOHC16V(90ps/12.3kg・m)と4G15型1468cc直4DOHC16V(98ps/13.5kg・m)の2機種を用意し、トランスミッションにはCVTを組み合わせる。10.15モード走行燃費は1.3リッター仕様で18.4〜20.0km/L、1.5リッター仕様で18.0km/Lの低燃費を達成。同時に、平成12年基準排出ガス75%低減レベルの超−低排出ガス認定を取得した。安全装備の面でも抜かりはなく、6エアバッグや頭部衝撃保護トリム、ブレーキペダル&足踏み式パーキングブレーキペダル後退抑制機構などを設定した。

キャッチフレーズは「まじめ まじめ まじめ COLT」

 三菱自動車の新世代コンパクトカーは、まず2002年6月に車名の「コルト(COLT)」が発表され、5カ月後の11月に市場デビューを果たす。キャッチフレーズは「まじめ まじめ まじめ COLT」。グレード展開は1.3リッターモデルにスタンダード/カジュアルバージョン/エレガンスバージョンを、1.5リッター モデルにスタンダード/スポーツバージョン/スポーツ-Xバージョンをラインアップする。また、18日ほど遅れてVCU式フルタイム4WD車を発表した(発売は翌2003年1月)。

 新型コルトは、販売方式も新しかった。三菱自動車としては初めてフリーチョイスシステムを採用したのだ。「カスタマー・フリーチョイス」と名づけられた新方式では、外装から内装色、シート形状、装備アイテム類にいたるまで、ユーザーが自由に選択できた。さらに、カスタマイズブランドの「RALLIART」や「ROAR」のアイテムも設定されていた。

改良を施しながら10年以上に渡って販売

 市場に放たれた新型コルトは、発売1カ月で月販目標台数(7000台)の2倍以上となる1万5000台オーバーを販売し、好調なスタートを切る。また、2002-2003年グッドデザイン賞の商品デザイン部門も受賞した。

 この勢いを維持しようと、三菱自動車は矢継ぎ早にコルトのラインアップの拡充と緻密な改良を図っていく。まず2003年8月には、同社の女性スタッフで作るFM-Seedsからの提案を活かした特別仕様車のブルームエディションを発売。同年10月には装備を充実させるなどの一部改良を行い、翌11月には発売1周年を記念した特別限定車の1stアニバーサリーエディションをリリースする。2004年になると欧州市場でのコルト(CZ5/CZ3)の販売が始まり、また日本では10月にダイムラー・クライスラーと共同開発したエンジン(4A90型1332cc直4DOHC16V・MIVEC/4A91型1499cc直4DOHC16V・MIVEC)への換装、RALLIARTへのインタークーラーターボ付き4G15型エンジンの搭載、外装デザインの刷新などをメインメニューとするマイナーチェンジを実施した。

 2005年11月にはダイムラー・クライスラーとの資本提携が解消されるものの、三菱自動車は独自でコルトの熟成を図っていく。そして、発売から10年以上が経過した2013年1月まで販売を続けたのである。